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異世界の中心で婚約を叫ぶ
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短時間に連続して怒りをぶちまけ続けた父親は遂に血圧が上がりすぎたのか、その場に卒倒してしまった。
「お医者様を呼んできて頂戴!」
私がメイドにそう言いつけると直ぐに一人の医師が現れた。定期的に往診を頼んでいる医師が邸宅内にいたという。なるほど……それで『医者の嫁』という言葉が出たわけね、などと一人で納得しているうちに、医師はテキパキと診察し素早く治癒魔法をかける。おそらく相当、腕がいいのだろう。
しかしそんなことはどうでも良かった。赤茶色の髪にブラウンの瞳。整った目鼻立ち。少し身なりはくたびれているが、かなりイケメンで私のドストライクのビジュアルをしている。
そう……彼を見た瞬間、私は恋に落ちていた。
「治癒魔法をおかけいたしましたので、安静にしていただければ、直ぐにご快復されるかと」
「ご結婚って、されてます?」
彼の説明が終わるか終わらないかのうちに堪らず私は、質問した。
「いえ、しておりませんが、それが何か?」
「私を嫁にして下さいませんか?」
突然の逆プロポーズに医師は変な生き物を見るような目で私を見る。
「何を突然……」
「父が貴方様と結婚するようにと」
「グレイスお嬢様は、第二王子とご婚約中と伺っておりますが」
ジワジワと彼は私から逃げようと後退するが、私は彼の手をパッと取り、その場に引き止める。
「あら、私の名前をご存知でしたのね。宜しければ貴方様のお名前も聞かせていただけませんか?」
「キースと申しますが、御父上が倒れられた時に、このようなお戯れはおやめ下さい」
「いえ、実は先ほど、第二王子に婚約破棄されましたの。それで父からキース様と結婚するように――と命じられたところでして……」
少し事情は異なるがあながち間違いではない。私の説明を聞いたキースさんは飽きれたように大きくため息をつく。
「私が二十一にもなって独り身なのは『結婚していない』のではなく、職業柄『結婚できない』からなんですよ。おそらく公爵様はそんな医者と結婚することになるぞ……という訓戒として私のことを挙げられたのでしょう。もう一度話し合われては?」
確かに『医者の嫁』は決して理想的な結婚というニュアンスで父が使っていなかったような気もする。でも日本では『医者の嫁』と言ったら、主婦のヒエラルキーでもトップに位置する存在だ。
一方、国王を除いた貴族社会ではトップに位置する『公爵』である父。かの有名な「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」的なニュアンスで「王子の嫁になれないならば医者の嫁になればいいじゃない」と言ったのだろう。おそらく前世の貧乏女子大生の感覚なら、十分幸せになれるに違いない。
「婚約破棄された私なぞ、嫁にしたくありませんよね……」
押してダメならば引く作戦だ。そう言って情熱的な瞳で見つめると、キースさんは「くそっ」と短く悪態をついて頭をかいた。
「分かった。じゃあ、このまま俺の診療所についてこい。忙しいし金もないから、貴族が挙げるような結婚式もできないがいいんだな?」
私を試すかのように、見据えながらそう言うキースさんの眼差しは酷くセクシーだった。おそらく結婚式に憧れている少女の夢を打ち壊し諦めさせる寸法だろう。ただ見た目は十七歳の小娘だが、前世の年齢も合わせると三十九歳の私。そんな小手先のやり方では諦めませんことよ。
「お医者様を呼んできて頂戴!」
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しかしそんなことはどうでも良かった。赤茶色の髪にブラウンの瞳。整った目鼻立ち。少し身なりはくたびれているが、かなりイケメンで私のドストライクのビジュアルをしている。
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「私を嫁にして下さいませんか?」
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「何を突然……」
「父が貴方様と結婚するようにと」
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「あら、私の名前をご存知でしたのね。宜しければ貴方様のお名前も聞かせていただけませんか?」
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「いえ、実は先ほど、第二王子に婚約破棄されましたの。それで父からキース様と結婚するように――と命じられたところでして……」
少し事情は異なるがあながち間違いではない。私の説明を聞いたキースさんは飽きれたように大きくため息をつく。
「私が二十一にもなって独り身なのは『結婚していない』のではなく、職業柄『結婚できない』からなんですよ。おそらく公爵様はそんな医者と結婚することになるぞ……という訓戒として私のことを挙げられたのでしょう。もう一度話し合われては?」
確かに『医者の嫁』は決して理想的な結婚というニュアンスで父が使っていなかったような気もする。でも日本では『医者の嫁』と言ったら、主婦のヒエラルキーでもトップに位置する存在だ。
一方、国王を除いた貴族社会ではトップに位置する『公爵』である父。かの有名な「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」的なニュアンスで「王子の嫁になれないならば医者の嫁になればいいじゃない」と言ったのだろう。おそらく前世の貧乏女子大生の感覚なら、十分幸せになれるに違いない。
「婚約破棄された私なぞ、嫁にしたくありませんよね……」
押してダメならば引く作戦だ。そう言って情熱的な瞳で見つめると、キースさんは「くそっ」と短く悪態をついて頭をかいた。
「分かった。じゃあ、このまま俺の診療所についてこい。忙しいし金もないから、貴族が挙げるような結婚式もできないがいいんだな?」
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