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婚約破棄の代償は2つ目の『神肩書』?
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「受付番号、二十五番でございますわ」
私は『25』と書かれた木の札を目の前の患者に渡す。
「いつからだ……」
酷く青ざめた顔をする男に私は慣れた口調で、受付番号の説明を始めた。
「三日前から導入いたしましたの。現在十二番の患者様の診察中ですので」
そう言って、受付前に出された大きな番号を指差す。
「あと二時間後に再度来ていただければ、こちらでお待ちいただかなくても大丈夫ですわ。もちろん、目安ですのでそれよりも早くなったり遅くなったりしますけどね」
病院の中で待たなくていい事と、待ち状況が直ぐに分かるため多くの患者さんが、このシステムの説明をすると表情を明るくしていたが、何故かこの男の表情は晴れない。背が高く筋肉質な彼は明らかに健康体そのものだが素人目には分からないだけで、よほど体調が悪いのだろうか。
「いや、そうじゃない。お前は何時からココで働いている、と聞いているんだ」
「あら、そのことでしたの?数日前からですわ。私、キース様に嫁いで参りましたの」
「結婚?!!」
男は叫ぶようにして、そう聞き返す。
「お静かになさって下さいませね。体調の悪い方の身体に響きますから」
私が少し睨みながらそう注意していると、異変を察したのかキースさんが診察室から「どうした?」と顔を覗かせた。
「キース、貴様いつ抜け駆けしたんだ!」
受付の前の男はキースさんに掴みかからんばかりに、そう質問する。
「いや、結婚してないよ。人手が足りないから手伝ってもらっているんだ。グレイス……何人目だ。俺はここ数日、何回も同じ説明をして回っているぞ」
「半年後には結婚していただけるんですもの。皆様には混乱のないように説明しているだけですわ?」
突如現れた受付の私に、多くの患者さんは、当然のようにその素性を聞きたがった。だから『医者の嫁』(見習い)と自己紹介をしている。勿論、()内は声に出していないが。
「まだ結婚していないのか」
男は私達のやり取りを見て明らかに安堵した表情を浮かべる。
「オリバー、あと二時間もしたら、午後の診療は終わるから二階で待っていてくれ」
「あぁ……分かった」
そう言うとオリバーは慣れた足取りで二階の自宅へ上がっていった。仕事の合間に部屋に通す仲?! しかもあの様子では一度や二度ではなさそうだ。そして、あの狼狽ぶり。
「なるほどなるほど」
「何を感心しているのか分からないけど、次の患者さんを案内して」
はい、と慌てて返事をしながらも、私は内心喜んでいた。不思議だったのだ。これほど美少女で金持ちの私が「結婚したい」と言っているのに、キースさんがそれを了承しないことが。しかし、今日その疑問がついに解決した。
キースさんはゲイなのだ!
職業柄、結婚できないのではない。この国では同性婚を認めていないため、彼は『結婚することができなかった』のだ。
生前、腐女子ではなかったが、決して殿方同士の恋愛を扱った作品は嫌いではなかった。きっと神様は第二王子に婚約破棄された私に同情され、『医者の嫁』だけでなく『ゲイの嫁』というチート特性を与えて下さったに違いない。
私は『25』と書かれた木の札を目の前の患者に渡す。
「いつからだ……」
酷く青ざめた顔をする男に私は慣れた口調で、受付番号の説明を始めた。
「三日前から導入いたしましたの。現在十二番の患者様の診察中ですので」
そう言って、受付前に出された大きな番号を指差す。
「あと二時間後に再度来ていただければ、こちらでお待ちいただかなくても大丈夫ですわ。もちろん、目安ですのでそれよりも早くなったり遅くなったりしますけどね」
病院の中で待たなくていい事と、待ち状況が直ぐに分かるため多くの患者さんが、このシステムの説明をすると表情を明るくしていたが、何故かこの男の表情は晴れない。背が高く筋肉質な彼は明らかに健康体そのものだが素人目には分からないだけで、よほど体調が悪いのだろうか。
「いや、そうじゃない。お前は何時からココで働いている、と聞いているんだ」
「あら、そのことでしたの?数日前からですわ。私、キース様に嫁いで参りましたの」
「結婚?!!」
男は叫ぶようにして、そう聞き返す。
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私が少し睨みながらそう注意していると、異変を察したのかキースさんが診察室から「どうした?」と顔を覗かせた。
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受付の前の男はキースさんに掴みかからんばかりに、そう質問する。
「いや、結婚してないよ。人手が足りないから手伝ってもらっているんだ。グレイス……何人目だ。俺はここ数日、何回も同じ説明をして回っているぞ」
「半年後には結婚していただけるんですもの。皆様には混乱のないように説明しているだけですわ?」
突如現れた受付の私に、多くの患者さんは、当然のようにその素性を聞きたがった。だから『医者の嫁』(見習い)と自己紹介をしている。勿論、()内は声に出していないが。
「まだ結婚していないのか」
男は私達のやり取りを見て明らかに安堵した表情を浮かべる。
「オリバー、あと二時間もしたら、午後の診療は終わるから二階で待っていてくれ」
「あぁ……分かった」
そう言うとオリバーは慣れた足取りで二階の自宅へ上がっていった。仕事の合間に部屋に通す仲?! しかもあの様子では一度や二度ではなさそうだ。そして、あの狼狽ぶり。
「なるほどなるほど」
「何を感心しているのか分からないけど、次の患者さんを案内して」
はい、と慌てて返事をしながらも、私は内心喜んでいた。不思議だったのだ。これほど美少女で金持ちの私が「結婚したい」と言っているのに、キースさんがそれを了承しないことが。しかし、今日その疑問がついに解決した。
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