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梅干し作り~後編~
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手洗いで体力の半分以上を消費したリタとレオだが、人手が増えたこともあり、診療時間前には十壺分の梅干しを干し終わることができた。おそらく『豪華な昼食』を用意する約束が効果的だったに違いない。
「明日も来たらいい?」
具だくさんのサンドイッチを頬張りながら、レオは嬉しそうにそう聞くが私は首を横に振る。
「二日後にお願いできるかしら?」
「え?なんで?俺、この昼飯が食えるなら毎日でも来てもいいよ?」
レオは残念そうに食い下がる。一日一食ということも多いという彼らにバランスのとれた食事は何よりの魅力なのかもしれない。
「二日目と三日目は夕方には取り込まず、そのまま夜も干したままにするから作業らしい作業がないの。夜露にあてるのがコツなの。四日目に…つまり明後日ね。その夜には完成して壺に戻すから、その時にまた来てくれるかしら?今度は夕飯をごちそうするわ」
「やった~~!」
二人は嬉しそうに頷く。
「保存する時は梅酢に戻すのか?」
メモを片手にそう聞くキースさんに私は首を横に振った。
「保存する時は別の密閉できる容器などに入れます」
「どんな味がするのか楽しみだな。梅酒みたいな味なんだろ?」
梅干しを食べたことがない人間からすると、ごく自然な予想に私は思わずニヤリと微笑む。
「できてからのお楽しみですわ」
不思議なもので転生後は一度も梅干しを食べていないが、今でも梅干しのことを考えると、ジワリと口の中に唾液が溢れ出す。あの味をキースさんが食べたら……と思うと、やはり意地の悪い笑みが浮かんでしまう。
「ねぇ、グレイスさんって、キース先生のお嫁さんなのよね?」
二日後の夜、市場で買ってきた壺に梅干しを詰めながら、リタがそう聞いた。
「正式にはまだ結婚していないけどね」
「ってことは、キース先生の『心に決めた人』なの?」
思わぬ質問に私は、小さく首を傾げる。そんな話、初耳だ。
「キース先生ってね、みんなを助けてくれるでしょ?だからみんなが先生のこと大好きなの。うちのお姉ちゃんだけじゃなくて、レオのお姉ちゃんや隣の隣のお姉ちゃん達もキース先生のお嫁さんになりたいって言ってたの」
決してリッチではないが、多くの女性にとってイケメンで医者のキースさんは憧れの存在に違いない。
「キース先生が、この診療所に来てくれた時、レオのお姉ちゃん……すっごい美人なんだけどね、そのお姉ちゃんがキース先生に『結婚して』ってお願いしたの。でもキース先生が『心に決めた人がいるから』って、お断りしたってうちのお姉ちゃんが言っていた」
私は平静を装いながら「へぇ~」と感心してみせるが、深い池に投げ込まれた石のように静かに絶望に飲み込まれていた。
『心に決めた人』がいるから、キースさんは私と結婚しようとしないのだ。
近所に住む女性にならばハッキリとそう言えたのだろうが、父がキースさんに援助している都合上、私に対してはハッキリとそう言えなかったに違いない。
「なるほどね……」
思わず心の声が漏れて、リタとレオは不思議そうな表情を浮かべる。
「でも、キース先生が嫌になったら、俺がグレイスさんを嫁にもらってやるぜ!」
励まそうと必死でそう言ったレオをリタが手に持っていた壺で殴りつける。
「あんたとなんか、グレイスさんが結婚するわけないでしょ!」
少し半泣きになりそうなリタを見て、私は思わず微笑んだ。先ほどまで絶望に沈みそうになっていたが、彼らの初恋が私の気持ちを軽くする。
「大丈夫よ。今、忙しいだけなの。落ち着いたら私、キース先生と絶対結婚するから」
私は二人を安心させるための小さな嘘をついた。
「明日も来たらいい?」
具だくさんのサンドイッチを頬張りながら、レオは嬉しそうにそう聞くが私は首を横に振る。
「二日後にお願いできるかしら?」
「え?なんで?俺、この昼飯が食えるなら毎日でも来てもいいよ?」
レオは残念そうに食い下がる。一日一食ということも多いという彼らにバランスのとれた食事は何よりの魅力なのかもしれない。
「二日目と三日目は夕方には取り込まず、そのまま夜も干したままにするから作業らしい作業がないの。夜露にあてるのがコツなの。四日目に…つまり明後日ね。その夜には完成して壺に戻すから、その時にまた来てくれるかしら?今度は夕飯をごちそうするわ」
「やった~~!」
二人は嬉しそうに頷く。
「保存する時は梅酢に戻すのか?」
メモを片手にそう聞くキースさんに私は首を横に振った。
「保存する時は別の密閉できる容器などに入れます」
「どんな味がするのか楽しみだな。梅酒みたいな味なんだろ?」
梅干しを食べたことがない人間からすると、ごく自然な予想に私は思わずニヤリと微笑む。
「できてからのお楽しみですわ」
不思議なもので転生後は一度も梅干しを食べていないが、今でも梅干しのことを考えると、ジワリと口の中に唾液が溢れ出す。あの味をキースさんが食べたら……と思うと、やはり意地の悪い笑みが浮かんでしまう。
「ねぇ、グレイスさんって、キース先生のお嫁さんなのよね?」
二日後の夜、市場で買ってきた壺に梅干しを詰めながら、リタがそう聞いた。
「正式にはまだ結婚していないけどね」
「ってことは、キース先生の『心に決めた人』なの?」
思わぬ質問に私は、小さく首を傾げる。そんな話、初耳だ。
「キース先生ってね、みんなを助けてくれるでしょ?だからみんなが先生のこと大好きなの。うちのお姉ちゃんだけじゃなくて、レオのお姉ちゃんや隣の隣のお姉ちゃん達もキース先生のお嫁さんになりたいって言ってたの」
決してリッチではないが、多くの女性にとってイケメンで医者のキースさんは憧れの存在に違いない。
「キース先生が、この診療所に来てくれた時、レオのお姉ちゃん……すっごい美人なんだけどね、そのお姉ちゃんがキース先生に『結婚して』ってお願いしたの。でもキース先生が『心に決めた人がいるから』って、お断りしたってうちのお姉ちゃんが言っていた」
私は平静を装いながら「へぇ~」と感心してみせるが、深い池に投げ込まれた石のように静かに絶望に飲み込まれていた。
『心に決めた人』がいるから、キースさんは私と結婚しようとしないのだ。
近所に住む女性にならばハッキリとそう言えたのだろうが、父がキースさんに援助している都合上、私に対してはハッキリとそう言えなかったに違いない。
「なるほどね……」
思わず心の声が漏れて、リタとレオは不思議そうな表情を浮かべる。
「でも、キース先生が嫌になったら、俺がグレイスさんを嫁にもらってやるぜ!」
励まそうと必死でそう言ったレオをリタが手に持っていた壺で殴りつける。
「あんたとなんか、グレイスさんが結婚するわけないでしょ!」
少し半泣きになりそうなリタを見て、私は思わず微笑んだ。先ほどまで絶望に沈みそうになっていたが、彼らの初恋が私の気持ちを軽くする。
「大丈夫よ。今、忙しいだけなの。落ち着いたら私、キース先生と絶対結婚するから」
私は二人を安心させるための小さな嘘をついた。
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