43 / 62
手作りスポーツドリンク~熱中症予防にはコレ!~
しおりを挟む
一年を通して大きな気候の変化がないこの世界だが、工場の中に入ると熱気が肺の奥まで入り込んだかのように錯覚する。梅肉エキスだけでなく、フローラルウォーターの製造も本格化しているため仕方ないのかもしれない。心なしか工場で働く人々の顔には疲れと必死さが滲んで見えた。
そんな異様な雰囲気に二人の小さな獣人の女子達は脅えたような表情を浮かべ、私の後ろに隠れる。
「大丈夫よ。ちょっと納期が迫っていて忙しいけど、みんな優しいから」
ディランの営業効果か王城外でも、『梅肉エキス』を求める人が増えている。ただ王城外に出すためには商会の荷馬車に商品を載せなければいけないため、必然的に納期が発生するのだ。これまでは『作った分だけ稼げる』とのんびりした雰囲気の中で作業していたことを比べると、だいぶストレスになるに違いない。
軽く殺気立っている作業場を横切り、教室スペースに彼女達を案内した。
「ここが教室。もう少ししたら昼休みになるから、授業も始まるわ。明日からは同じぐらいの時間に工場に来てちょうだいね」
「グレイスさん、その子達、誰?」
既に席に座っていたリタが不思議そうに首を傾げる。人と動物の中間点に存在する獣人が存在しないわけではなかったが、この国では少数派の存在だ。
「新しいお友達よ。お姉ちゃんの方がパウラで、妹がモニカ」
「ふーーん。フワフワで可愛いね。よろしくね!」
獣人の生徒が増えることで問題が起きないか心配したが、さすが子供だ。すんなりと受け入れている。
「リタ、今日はみんなにジュースを持ってきたから、注ぐのを手伝ってくれる?」
私はそう言って抱えてきた大瓶を机の上に置く。
「何のジュース?元気でるの?」
「そう。これだけ熱いと汗かいちゃうでしょ」
「それなら水でよくない?」
半透明の液体が入った瓶をリタは不思議そうに見つめる。
「汗って、ちょっとしょっぱいでしょ?体内から塩分も出ちゃうから、このジュースで塩分と糖分を補給するの」
「美味しいの?」
「ちょっと味見してみる?」
私はリタ、パウラ、モニカに少しだけ手作りスポーツドリンクを飲ませた。
「美味しい!」
三人は笑顔でスポーツドリンクを絶賛しつつ、もっと飲みたいというような表情を浮かべている。夏になるとおばあちゃんがよく作ってくれていたが、いつも「もう一杯飲みたいな……」という不思議な気持ちにさせられる味だった。
「でしょ?作り方は簡単なの。水に塩、レモン汁、砂糖を加えて混ぜるだけ」
・水:1リットル
・食塩:小さじ1/4
・レモン汁:大さじ2
・砂糖:大さじ7
と梅干し同様、材料が少なくて簡単に作れるのが魅力だ。日本では熱中症対策にスポーツドリンクを飲むと糖分を摂取しすぎるため、身体に良くない……という意見もあったが、ここで働く人の大半が一日を通してほぼ砂糖を摂取していないので、ちょうどいいぐらいだ。
「明日から材料は用意するから、ここに来たらパウラ達が作ってくれるかな?作り終わったらリタがしているみたいに、みんなのコップに注いでおいてくれると嬉しいな」
熱中症予防もあるが、必死で働く工場の人達を前に仕事がないのは逆に居心地が悪いだろうと思い用意しておいたのだ。案の定、簡単とはいえ仕事を与えられたことにパウラ達の表情はパッと明るくなった。
「ねぇ、グレイスさん、この酸っぱい感じって梅肉エキスでもいいんじゃない?」
指についたスポーツドリンクをなめながら、リタは思案顔になる。
「よく気付いたわね。梅肉エキスの場合は、お湯で一度溶かしてから蜂蜜を加えて冷やして飲むのがオススメよ。ちょっと面倒だけど、熱さで体が疲れている時にはピッタリの飲み物なの」
私は笑顔でリタの疑問に答える。ディランさんの授業は週に一回程度だが、それでも彼女達に大きな変化をもたらしているのかもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【参考文献】
月向農園の直売所:楽しみ方いろいろ(最終閲覧日:2019年05月22日)
https://minabe.net/ume/ekis_eat.html
そんな異様な雰囲気に二人の小さな獣人の女子達は脅えたような表情を浮かべ、私の後ろに隠れる。
「大丈夫よ。ちょっと納期が迫っていて忙しいけど、みんな優しいから」
ディランの営業効果か王城外でも、『梅肉エキス』を求める人が増えている。ただ王城外に出すためには商会の荷馬車に商品を載せなければいけないため、必然的に納期が発生するのだ。これまでは『作った分だけ稼げる』とのんびりした雰囲気の中で作業していたことを比べると、だいぶストレスになるに違いない。
軽く殺気立っている作業場を横切り、教室スペースに彼女達を案内した。
「ここが教室。もう少ししたら昼休みになるから、授業も始まるわ。明日からは同じぐらいの時間に工場に来てちょうだいね」
「グレイスさん、その子達、誰?」
既に席に座っていたリタが不思議そうに首を傾げる。人と動物の中間点に存在する獣人が存在しないわけではなかったが、この国では少数派の存在だ。
「新しいお友達よ。お姉ちゃんの方がパウラで、妹がモニカ」
「ふーーん。フワフワで可愛いね。よろしくね!」
獣人の生徒が増えることで問題が起きないか心配したが、さすが子供だ。すんなりと受け入れている。
「リタ、今日はみんなにジュースを持ってきたから、注ぐのを手伝ってくれる?」
私はそう言って抱えてきた大瓶を机の上に置く。
「何のジュース?元気でるの?」
「そう。これだけ熱いと汗かいちゃうでしょ」
「それなら水でよくない?」
半透明の液体が入った瓶をリタは不思議そうに見つめる。
「汗って、ちょっとしょっぱいでしょ?体内から塩分も出ちゃうから、このジュースで塩分と糖分を補給するの」
「美味しいの?」
「ちょっと味見してみる?」
私はリタ、パウラ、モニカに少しだけ手作りスポーツドリンクを飲ませた。
「美味しい!」
三人は笑顔でスポーツドリンクを絶賛しつつ、もっと飲みたいというような表情を浮かべている。夏になるとおばあちゃんがよく作ってくれていたが、いつも「もう一杯飲みたいな……」という不思議な気持ちにさせられる味だった。
「でしょ?作り方は簡単なの。水に塩、レモン汁、砂糖を加えて混ぜるだけ」
・水:1リットル
・食塩:小さじ1/4
・レモン汁:大さじ2
・砂糖:大さじ7
と梅干し同様、材料が少なくて簡単に作れるのが魅力だ。日本では熱中症対策にスポーツドリンクを飲むと糖分を摂取しすぎるため、身体に良くない……という意見もあったが、ここで働く人の大半が一日を通してほぼ砂糖を摂取していないので、ちょうどいいぐらいだ。
「明日から材料は用意するから、ここに来たらパウラ達が作ってくれるかな?作り終わったらリタがしているみたいに、みんなのコップに注いでおいてくれると嬉しいな」
熱中症予防もあるが、必死で働く工場の人達を前に仕事がないのは逆に居心地が悪いだろうと思い用意しておいたのだ。案の定、簡単とはいえ仕事を与えられたことにパウラ達の表情はパッと明るくなった。
「ねぇ、グレイスさん、この酸っぱい感じって梅肉エキスでもいいんじゃない?」
指についたスポーツドリンクをなめながら、リタは思案顔になる。
「よく気付いたわね。梅肉エキスの場合は、お湯で一度溶かしてから蜂蜜を加えて冷やして飲むのがオススメよ。ちょっと面倒だけど、熱さで体が疲れている時にはピッタリの飲み物なの」
私は笑顔でリタの疑問に答える。ディランさんの授業は週に一回程度だが、それでも彼女達に大きな変化をもたらしているのかもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【参考文献】
月向農園の直売所:楽しみ方いろいろ(最終閲覧日:2019年05月22日)
https://minabe.net/ume/ekis_eat.html
38
あなたにおすすめの小説
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
結婚した次の日に同盟国の人質にされました!
だるま
恋愛
公爵令嬢のジル・フォン・シュタウフェンベルクは自国の大公と結婚式を上げ、正妃として迎えられる。
しかしその結婚は罠で、式の次の日に同盟国に人質として差し出される事になってしまった。
ジルを追い払った後、女遊びを楽しむ大公の様子を伝え聞き、屈辱に耐える彼女の身にさらなる災厄が降りかかる。
同盟国ブラウベルクが、大公との離縁と、サイコパス気味のブラウベルク皇子との再婚を求めてきたのだ。
ジルは拒絶しつつも、彼がただの性格地雷ではないと気づき、交流を深めていく。
小説家になろう実績
2019/3/17 異世界恋愛 日間ランキング6位になりました。
2019/3/17 総合 日間ランキング26位になりました。皆様本当にありがとうございます。
本作の無断転載・加工は固く禁じております。
Reproduction is prohibited.
禁止私自轉載、加工
복제 금지.
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
捨てられた元聖女ですが、なぜか蘇生聖術【リザレクション】が使えます ~婚約破棄のち追放のち力を奪われ『愚醜王』に嫁がされましたが幸せです~
鏑木カヅキ
恋愛
十年ものあいだ人々を癒し続けていた聖女シリカは、ある日、婚約者のユリアン第一王子から婚約破棄を告げられる。さらには信頼していた枢機卿バルトルトに裏切られ、伯爵令嬢ドーリスに聖女の力と王子との婚約さえ奪われてしまう。
元聖女となったシリカは、バルトルトたちの謀略により、貧困国ロンダリアの『愚醜王ヴィルヘルム』のもとへと強制的に嫁ぐことになってしまう。無知蒙昧で不遜、それだけでなく容姿も醜いと噂の王である。
そんな不幸な境遇でありながらも彼女は前向きだった。
「陛下と国家に尽くします!」
シリカの行動により国民も国も、そして王ヴィルヘルムでさえも変わっていく。
そしてある事件を機に、シリカは奪われたはずの聖女の力に再び目覚める。失われたはずの蘇生聖術『リザレクション』を使ったことで、国情は一変。ロンダリアでは新たな聖女体制が敷かれ、国家再興の兆しを見せていた。
一方、聖女ドーリスの力がシリカに遠く及ばないことが判明する中、シリカの噂を聞きつけた枢機卿バルトルトは、シリカに帰還を要請してくる。しかし、すでに何もかもが手遅れだった。
偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~
咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】
あらすじ
「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」
聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。
彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。
しかし、エリーナはめげなかった。
実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ!
北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。
すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。
「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」
とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。
以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。
最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?
悪役令嬢は伝説だったようです
バイオベース
恋愛
「彼女こそが聖女様の生まれ変わり」
王太子ヴァレールはそう高らかに宣言し、侯爵令嬢ティアーヌに婚約破棄を言い渡した。
聖女の生まれ変わりという、伝説の治癒魔術を使う平民の少女を抱きながら。
しかしそれを見るティアーヌの目は冷ややかだった。
(それ、私なんですけど……)
200年前に国を救い、伝説となった『聖女さま』。
ティアーヌこそがその転生者だったのだが。
捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています
h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。
自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。
しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━?
「おかえりなさいませ、皇太子殿下」
「は? 皇太子? 誰が?」
「俺と婚約してほしいんだが」
「はい?」
なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる