戦巫女様、タヌキ様?

小鳥遊 スズメ/スバル

文字の大きさ
3 / 3

しおりを挟む
ローエンという国ができる前、長のいない村々の集まりだった。

人々は、国を成すために戦った。
何故、そのようなことがはじまったのか、わからない。
だが、我が村が一番と争う中、戦で命を失った人々の怨念の塊ができた。
それに引き金を引くように、流行り病で無念とこの世に残った亡霊と怨念の塊が合わさり、怨霊となって悪さをしはじめた。
流行り病で死んだ人々が、別の人格で腐った身体で起きだしたのだ。

そんな混乱を収拾しはじめたのは、戦に介入していなかった村の実質、長のような存在の巫女が治める村の人々だった。
術で怨霊達を生身から引っ張り出し、弓や刀で薙ぎ倒す姿に、巫女は戦巫女という名で呼ばれるようになった。
その厳めしい名とは反対に、人々に親しまれた戦巫女は、怨霊の掌握しょうあくにより、村々を統治してローエン国とし、女王となったのだ。

初代戦巫女の世は、ローエン国は先の諸々に気を遣られ、鎖国状態に近い状態だった。
というのも、戦巫女の国と隣国では文化が異なっていた。
戦巫女の国は、着物という民族衣装を纏い、床に直に座り、そのため机の脚は短い。
隣国の全ては、洋服――ズボンやブラウス、ドレスという服を着、イスというものを使い座り(近いものはあったが)、それに伴い机の脚は長い。
顔立ちは戦巫女の国は大体のっぺりが多く、黒目黒髪で平均的に背が低いのに対し、あちらは金や赤、緑や青など虹のようで顔立ちもなかなか濃かった。
それに、村々の集まりを一つにするので手一杯だと初代戦巫女は言っていた。

だが、それは名目上で、実は、怨霊達は隣国まで手を伸ばしていたため、国境にはローエン国を忌み嫌う者達が多くいた。
黒髪黒目で出がローエン国と聞けば、怨念達の存在が色濃く、連想してしまう者も多かった。
そのため、初代戦巫女が拒んでいるということは本当はなく、国民のためだったことは暗黙の了解だった。

少しずつ慣らす。ということで国民が過去から未来へ心を決め、そろそろ開国をと声が上がり始めたのは、実は最近だ。

半鎖国状態から国が開かれた時、事件が起きた。
前戦巫女とその夫が、暗殺されてしまったのだ。
十歳の娘は、難を逃れた――といって良いのか、突如としてローエン国から消えた。
しかも、皆が見ている前で忽然と。

《神隠し》。
戦巫女の国ではそう言われるもがある。
姫といえる娘が、行方不明となったそれもその部類に入っていた。

「帰りを待とう」

そう声が上がり、誰も異論も疑問もなかった。
《神隠し》された子供は、時々、どこからともなく帰ってくるときがある。
反対に、《神隠し》ならば人の人智では到底、どうしようもない。

なので、姫ももしかすると……というのが皆の意見だ。
幸いか、戦巫女の座に就こうとする野心家は居らず、優秀な臣下達が当分、政を受けおった。
不穏因子はあったものの、もともと村々で機能していたこの国は順調に事を進めていった。

そして数年後、帰ってきた姫は、品の良い深窓の令嬢ではなくなっていた。
なにか、化け物じみ、神懸かりな術を使い、国民の度肝を抜く事になったのであった。

それが、ローエン国、現戦巫女のツバキである。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

処理中です...