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4.伝説
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「…ここから東に行ってはいけないよ。
恐ろしい魔王の領地だ。
足を踏み入れればたちまち殺されてしまう」
今年も子どもたちに教える時期が来た。
アルシアの東は魔の国境。
そう呼ばれて久しい。
かつてこの国境線の向こうには強大なシの国があった。
今となっては彼の国がどうなったか知るものはいない。
勇者に滅ぼされたとも、魔王が力を蓄えているとも伝えられているが真偽はさだかではない。
あの戦火を共に闘った仲間も今では数少なくなった。
伝説となって伝えられている戦記は事実と大きく乖離していたが、みな口を閉ざし続けた。
ワシもそのひとりだ。
口伝の物語は時の流れとともにその姿を変えつつ語り継がれていく。
伝説は歌う。
かつて恐ろしい死の国があった。
平和なフィオン王国の地方都市アルシアは突如として死の国に襲われ壊滅した。
たった独りの生き残りは神の力を得て死の国へ立ち向かった。
死の軍勢を討ち滅し、激戦の末にアルシアを奪還。
この活躍は国に希望を取り戻し、彼は勇者と讃えられた。
勇敢な若者は真の平和を取り戻すべく死の国へと赴いた。
恐ろしい魔物がはびこる呪われた地に、彼は勇気を持って挑んだのだ。
しかし死の国の魔王は恐るべき使い手だった。
勇者を奥深くまでおびき寄せ、手薄になったフィオン王国を智謀で混乱に落としいれた。
言葉巧みに国王を懐柔し、まんまと契約を結ばせたのだ。
魔王と契約を結んだ哀れな国王。
その姿は恐ろしい魔物へと変化し王都は火の海となった。
勇者は魔王の罠に気づき、フィオンへ踵を返した。
激闘の末、死の国の尖兵へとなった国王たちは勇者に討ち滅ぼされた。
死の間際に国王は人の心を取り戻し、泣いて勇者に懺悔し国と民の行く末を案じた。
そして伝説の宝剣「フィオンの瞳」を託したという。
宝剣を託された勇者は、魔王に惑わされ魔物と化した人々を涙ながらに討ち王都の平和を取り戻した。
フィオン王都の激戦を制した勇者だったが、彼もまた深い傷を負った。
しかし彼は人々が止める声も聞かず、手当もそこそこに死の国へと出立したのだ。
真の平和を求めて…
残された者たちはフィオン王国を再建し勇者の帰還を心待ちにした。
それこそが勇者への最大の敬意であると信じ、彼が誇りに思える国をつくりあげた。
…だが死の国は違う。
魔王が支配する呪われた地だ。
ある者は目が合い斬殺されたという。
音を立てたものは食い殺されたという。
踏み入ったものは射殺されたという。
興味を持ってはいけない。
怒りに触れてはいけない。
近づいてはならない。
この平和を乱さないため。
<おわり>
恐ろしい魔王の領地だ。
足を踏み入れればたちまち殺されてしまう」
今年も子どもたちに教える時期が来た。
アルシアの東は魔の国境。
そう呼ばれて久しい。
かつてこの国境線の向こうには強大なシの国があった。
今となっては彼の国がどうなったか知るものはいない。
勇者に滅ぼされたとも、魔王が力を蓄えているとも伝えられているが真偽はさだかではない。
あの戦火を共に闘った仲間も今では数少なくなった。
伝説となって伝えられている戦記は事実と大きく乖離していたが、みな口を閉ざし続けた。
ワシもそのひとりだ。
口伝の物語は時の流れとともにその姿を変えつつ語り継がれていく。
伝説は歌う。
かつて恐ろしい死の国があった。
平和なフィオン王国の地方都市アルシアは突如として死の国に襲われ壊滅した。
たった独りの生き残りは神の力を得て死の国へ立ち向かった。
死の軍勢を討ち滅し、激戦の末にアルシアを奪還。
この活躍は国に希望を取り戻し、彼は勇者と讃えられた。
勇敢な若者は真の平和を取り戻すべく死の国へと赴いた。
恐ろしい魔物がはびこる呪われた地に、彼は勇気を持って挑んだのだ。
しかし死の国の魔王は恐るべき使い手だった。
勇者を奥深くまでおびき寄せ、手薄になったフィオン王国を智謀で混乱に落としいれた。
言葉巧みに国王を懐柔し、まんまと契約を結ばせたのだ。
魔王と契約を結んだ哀れな国王。
その姿は恐ろしい魔物へと変化し王都は火の海となった。
勇者は魔王の罠に気づき、フィオンへ踵を返した。
激闘の末、死の国の尖兵へとなった国王たちは勇者に討ち滅ぼされた。
死の間際に国王は人の心を取り戻し、泣いて勇者に懺悔し国と民の行く末を案じた。
そして伝説の宝剣「フィオンの瞳」を託したという。
宝剣を託された勇者は、魔王に惑わされ魔物と化した人々を涙ながらに討ち王都の平和を取り戻した。
フィオン王都の激戦を制した勇者だったが、彼もまた深い傷を負った。
しかし彼は人々が止める声も聞かず、手当もそこそこに死の国へと出立したのだ。
真の平和を求めて…
残された者たちはフィオン王国を再建し勇者の帰還を心待ちにした。
それこそが勇者への最大の敬意であると信じ、彼が誇りに思える国をつくりあげた。
…だが死の国は違う。
魔王が支配する呪われた地だ。
ある者は目が合い斬殺されたという。
音を立てたものは食い殺されたという。
踏み入ったものは射殺されたという。
興味を持ってはいけない。
怒りに触れてはいけない。
近づいてはならない。
この平和を乱さないため。
<おわり>
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