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第4部 数百年後に生まれ変わっても
本編外1 勇者たちのその後 ――名を残した者、名を捨てた者――
■ 空の勇者 ラベンダー
魔王討伐の報は、中央平原を瞬く間に駆け巡った。
勇者ラベンダーは英雄として迎えられ、讃えられ、崇められた。
だが――
彼女自身は、その歓声を一切、喜ばなかった。
魔王カーマインが最後に見せた、幼子のような表情。
語られた真実。
聖教会と教皇の欺瞞。
それらは、勇者という肩書を、深く蝕んでいた。
戦後処理の場で、戦死者の名簿が読み上げられたとき。
ラベンダーは、その中に――
最も見たくなかった名前を見つけてしまう。
ホワイト。
その瞬間、世界から音が消えた。
涙は止まらず、声も出なかった。
誰にも告げることなく、彼女はその場を去り――
数日後、ゴールド王国から姿を消した。
以後、彼女が表舞台に立つことはなかった。
報酬も、称号も、栄誉も、すべて拒み、辺境の地で人知れず暮らしたという。
胸元には、いつも一つのペンダントがあった。
それが何を意味するのか、彼女は誰にも語らなかった。
やがて――
ラベンダーは、新しい命を宿していることに気づく。
それを知った夜、彼女は初めて声を上げて泣き、そして、創造神に感謝した。
その子は、父の名を知らずに育った。
だが、確かに――
母の愛と父の志を受け継いだ。
ラベンダーは、最後まで勇者であり続けた。
愛する人との子を育てるという最も勇気ある行為によって。
■ 英太子 クラレット
クラレットは、魔王討伐後も、冷静に戦後処理を指揮した。
復興。
兵站。
政治的調整。
どれも完璧だった。
だが、彼の中では――
すでに一つの役割が、終わっていた。
戦死者名簿に記された、幼なじみの名。
それが、決定打だった。
さらに、自身が女性であるという事実を完全に受け入れた今、「王太子」という仮面を被り続ける理由はなかった。
クラレットは、王太子の地位を辞し、表舞台から姿を消した。
混乱は起きなかった。
すでに政務の多くは、宰相ホーネントが担っていたからだ。
人々は言った。
「英太子は、役目を終えたのだ」と。
クラレット自身は、最後まで語らなかった。
誰を愛していたのか。
何を失ったのか。
ただ一度だけ、別れ際にこう言ったという。
「愛した人を、ちゃんと愛せた。それだけで・・・・」
その表情は、穏やかだったという。
■ 大地の勇者 パウダー(補記)
パウダーは、すでにこの世にいなかった。
だが、その名は、確かに歴史に刻まれた。
そして後に――
彼が「ご主人様候補」の一人であったことを知る者は、誰もいない。
それでよかったのだ。
彼は、彼自身の人生を生き切ったのだから。
魔王討伐の報は、中央平原を瞬く間に駆け巡った。
勇者ラベンダーは英雄として迎えられ、讃えられ、崇められた。
だが――
彼女自身は、その歓声を一切、喜ばなかった。
魔王カーマインが最後に見せた、幼子のような表情。
語られた真実。
聖教会と教皇の欺瞞。
それらは、勇者という肩書を、深く蝕んでいた。
戦後処理の場で、戦死者の名簿が読み上げられたとき。
ラベンダーは、その中に――
最も見たくなかった名前を見つけてしまう。
ホワイト。
その瞬間、世界から音が消えた。
涙は止まらず、声も出なかった。
誰にも告げることなく、彼女はその場を去り――
数日後、ゴールド王国から姿を消した。
以後、彼女が表舞台に立つことはなかった。
報酬も、称号も、栄誉も、すべて拒み、辺境の地で人知れず暮らしたという。
胸元には、いつも一つのペンダントがあった。
それが何を意味するのか、彼女は誰にも語らなかった。
やがて――
ラベンダーは、新しい命を宿していることに気づく。
それを知った夜、彼女は初めて声を上げて泣き、そして、創造神に感謝した。
その子は、父の名を知らずに育った。
だが、確かに――
母の愛と父の志を受け継いだ。
ラベンダーは、最後まで勇者であり続けた。
愛する人との子を育てるという最も勇気ある行為によって。
■ 英太子 クラレット
クラレットは、魔王討伐後も、冷静に戦後処理を指揮した。
復興。
兵站。
政治的調整。
どれも完璧だった。
だが、彼の中では――
すでに一つの役割が、終わっていた。
戦死者名簿に記された、幼なじみの名。
それが、決定打だった。
さらに、自身が女性であるという事実を完全に受け入れた今、「王太子」という仮面を被り続ける理由はなかった。
クラレットは、王太子の地位を辞し、表舞台から姿を消した。
混乱は起きなかった。
すでに政務の多くは、宰相ホーネントが担っていたからだ。
人々は言った。
「英太子は、役目を終えたのだ」と。
クラレット自身は、最後まで語らなかった。
誰を愛していたのか。
何を失ったのか。
ただ一度だけ、別れ際にこう言ったという。
「愛した人を、ちゃんと愛せた。それだけで・・・・」
その表情は、穏やかだったという。
■ 大地の勇者 パウダー(補記)
パウダーは、すでにこの世にいなかった。
だが、その名は、確かに歴史に刻まれた。
そして後に――
彼が「ご主人様候補」の一人であったことを知る者は、誰もいない。
それでよかったのだ。
彼は、彼自身の人生を生き切ったのだから。
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