この世界が終わるまで 勇者の僕は恋をする

すなぎ もりこ

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勇者

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 僕は王都に連れていかれ、教会堂の一角で修業を積むことになった。
 外がまだ暗い内に起きて水汲みと長い廊下の拭き掃除。与えられた小さな部屋で食事をとり、その後はお昼まで勉強だ。分厚い歴史書と経典を与えられ、講義を受ける。
 教師役を務める神父は、僕が質問に答えられないと容赦なく差し棒で手を打った。
 文字も満足に読めなかった僕の手の甲は、みるみる赤く腫れあがった。
 午後からの剣技指導で剣も持てないほどに腫れた僕の手を見て、指導役の聖騎士が神父に抗議をしてくれた。神父は聖騎士に謝罪しながらも、憎々し気に僕を睨んでいた。
 けれど、それで神父の制裁が止んだわけではなく。痛めつける場所が外から見えない場所に変わっただけだった。
 神父は僕の背中を打ち、爪を立ててふとももをつねり、髪を引っ張った。
「お前ような山出しの獣は、痛めつけることでしか学ばない。まともな人間に躾けてやろうというのだから感謝しろ」
 せせら笑う神父は、とても神様に仕える人間には見えなかった。
 
 思い返せば、その頃から僕は、徐々に信仰心を失っていったのだと思う。
 神様の対極にいるという魔王。
 だったら神様が直接魔王と戦えばいい話だ。
 膨大な魔力の持ち主で悪意の権化だという怪物の退治を、なぜひとりの人間に負わせるのか。自分の身はいっさい傷つけず姿も見せず、危険な仕事を弱弱しい人間に押し付けるなんて、ただの卑怯者じゃないか。
 国ために命を尽くす名誉を得たことを喜べと言うが、僕にはどうしたって思えない。
 僕の名を奪い、重い枷を負わせた存在が疎ましい。
 立派でお綺麗な言葉で人間を縛る、神様なんて嘘つきのペテン師だ。
 僕はそんな奴の言うことを信じない。
 間違っても崇めるような馬鹿じゃない。
 
 かといって、逃げることは叶わない。
 それだけは、はっきりと理解していた。
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