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魔聖対戦のこと③教皇
①
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「魔国に入れば、魔王城までの道が開かれる。勇者殿は真っすぐ進めば良い」
人間国と魔国の間には向こう岸が見えないほどの大きな河川が流れている。普段は行き来できないその大河に、対戦の日に限り橋が架かるという。橋を渡り切り河原で《詠唱その1》を唱えれば、結界が解けて目の前に道が現れるらしい。
「橋は魔力によるものですか?」
僕の問いに、老人は動きを止め、探るように僕を見た。
僕は十年前のように泰然と、あの頃より更に落ち窪んだ青い瞳を見返した。
対戦の日が迫り、次第に周囲の空気がピリピリと張り詰めていたある日の午後、予定されていた実技演習を急遽変更し、対戦当日の詳細説明が行われることになった。
豪奢な神父服を身に着けた神父たちに付き添われて現れたのは、十年前、村で僕を勇者に抜擢した大司教だった。
彼は勇者を見つけた功績を認められ異例の出世を果たし、現在は教団のトップである教皇の座に就いている。
相変わらず思考は読めないが、その萎んだ体躯からは以前のような威圧感を感じない。
彼はかさついた瞼を震わし、濁った瞳を瞬いた。
「橋の具現化は神の力によるものです。魔の力は神には抗えませぬ。勇者殿は神の力をお疑いですかな?」
「魔力で構成された橋なら僕は渡れないのではないかと。それを確かめたかっただけです」
老人は小さく頷くと、その心配はないと返した。
「しかし、約束の日までワオキ川に近づくことは決してなさらぬように。周辺の村にも通達され、厳重な警備が敷かれます。神の御業を見ることは、私たち人間には禁じられておりますゆえ」
「なぜでしょう。偉大な力を目にして心に刻めば、人々はもっと信仰心を深くするでしょうに」
「神は真実を語り正しい行いをなさっているだけです。信仰を強要するおつもりはない。打算のない美しい慈愛の心で私たちを守ってくださっているのです」
「なるほど」
神の言葉を使って信仰を強要するのは人間だということだ。
なんて罪深い生物だろう。神をも利用するとは。いや、そもそも神ですら誰かが作り上げた虚像かもしれない。
しかし、たとえ人が考えた茶番でも、僕は演じるのみだ。僕のために用意された舞台で、シナリオ通りに踊ってみせる。少なくとも、彼らが見ている前では。
人間国と魔国の間には向こう岸が見えないほどの大きな河川が流れている。普段は行き来できないその大河に、対戦の日に限り橋が架かるという。橋を渡り切り河原で《詠唱その1》を唱えれば、結界が解けて目の前に道が現れるらしい。
「橋は魔力によるものですか?」
僕の問いに、老人は動きを止め、探るように僕を見た。
僕は十年前のように泰然と、あの頃より更に落ち窪んだ青い瞳を見返した。
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彼はかさついた瞼を震わし、濁った瞳を瞬いた。
「橋の具現化は神の力によるものです。魔の力は神には抗えませぬ。勇者殿は神の力をお疑いですかな?」
「魔力で構成された橋なら僕は渡れないのではないかと。それを確かめたかっただけです」
老人は小さく頷くと、その心配はないと返した。
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「なるほど」
神の言葉を使って信仰を強要するのは人間だということだ。
なんて罪深い生物だろう。神をも利用するとは。いや、そもそも神ですら誰かが作り上げた虚像かもしれない。
しかし、たとえ人が考えた茶番でも、僕は演じるのみだ。僕のために用意された舞台で、シナリオ通りに踊ってみせる。少なくとも、彼らが見ている前では。
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