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ポッコチーヌ様のお世話係
覚悟②
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部屋を出て直ぐ、ニコライは声を潜めてゲルダに訊ねる。
「ゲルダ、本当のところ、マクシミリアンの事をどう思ってるんだ?」
「お慕い申し上げておりますが?」
「それは、どういう意味でだ?男としてか?」
「団長はお綺麗ですが男性です」
「あーっもう!」
ニコライは痺れを切らしたようにゲルダの腕を叩く。ゲルダは眉を寄せて睨んだ。
「痛い、何ですかもう」
「同情なら止めろって!俺も煽るような事は言ったが、せめて一線は越えるな。憐れみから始まる関係は長続きしねぇ。あいつもお前も結果的に傷付く」
「それでなくとも、私と団長の間には問題が山積みですものねぇ。団長がそれに耐えきれるか……」
「なんだ、よくわかってるじゃねぇか」
顎を引き、再び腕をポンポンと叩くニコライのその手首を掴み、ゲルダは思い切り引き剥がす。
「わかってますよ。副団長はすべて終わったら、私に身を引けと仰るんでしょう?」
「お前の為でもある」
「別に良いですけどね。雛鳥が飛び立てると判断したら、その時は姿を消しましょう」
「俺も手を貸す」
「次の就職先、それと団長のフォロー。この二つを確保することが条件です」
「任せとけ」
ニコライは懲りもせず、今度はゲルダの頭に手を乗せる。再びポンポンと叩かれたが、ゲルダは退けることはしなかった。
「すまない。辛い想いをさせてしまうな。俺がゲルダとマクシミリアンを引き合わせたというのに。……俺が引き裂くんだ」
廊下の先を見る男の、珍しくも憂いを帯びたその横顔を、ゲルダはじっと見つめる。
「……だけどな、マクシミリアンはここから放り出されたらどこにも行くところがねぇ。それに、白騎士団にはあいつが必要なんだ」
親が罪に問われればマクシミリアンは無事で済まないだろう。騎士団長の任を解かれる事は確実だ。それに部下とのスキャンダルが加われば、騎士を続けることも危うくなる。しかも、相手はシャンピニだ。
「お前も必ず誹謗中傷を受ける。マクシミリアンを唆しただの、誑かしただの。貴族連中のやっかみは執拗で意地が悪い。それは、ガルシア家に限らねぇ。むしろ美学が無いだけに、いっそう下品で限度を知らねぇ。くだらない嫌がらせのために並々ならぬ労力を注ぐ、そんな連中ばっかなんだよ」
そうなれば、マクシミリアンは身を呈してゲルダを守ろうとするだろう。ゲルダの為に心身をすり減らし、漸く取り戻しつつある自由を奪われていく姿など、見たくない。
ゲルダは、ガシガシと頭を惜く上司の横顔を見ながら、口元を緩めた。適当そうに見せてはいるが、その実、心配性で面倒見が良い。
さぞ、言いづらかったことだろう。
それでも、恨まれる覚悟で正直に告げたニコライは、やはり良い人間なのだとゲルダは思う。そう、ニコライがマクシミリアンの傍に居てくれるというなら、安心して良い。ゲルダが消えても……
「団長をお願いします。不幸にしたらバスターソードを副団長の鼻にツッコみます」
「鼻なくなっちゃうじゃん!こぇぇ女だな」
ゲルダは笑った。
……本当は、手を離したくなどない。
マクシミリアンが空へ飛び立つなら、自分も一緒に飛びたかった。
見たことの無い景色を二人で見たかった。
けれど、所詮ゲルダはヴードゥの鳥なのだ。
この国にいる限りは、羽根はもがれたまま。
そして、ゲルダはこの時初めて考えた。
国を出ることを。
「ゲルダ、本当のところ、マクシミリアンの事をどう思ってるんだ?」
「お慕い申し上げておりますが?」
「それは、どういう意味でだ?男としてか?」
「団長はお綺麗ですが男性です」
「あーっもう!」
ニコライは痺れを切らしたようにゲルダの腕を叩く。ゲルダは眉を寄せて睨んだ。
「痛い、何ですかもう」
「同情なら止めろって!俺も煽るような事は言ったが、せめて一線は越えるな。憐れみから始まる関係は長続きしねぇ。あいつもお前も結果的に傷付く」
「それでなくとも、私と団長の間には問題が山積みですものねぇ。団長がそれに耐えきれるか……」
「なんだ、よくわかってるじゃねぇか」
顎を引き、再び腕をポンポンと叩くニコライのその手首を掴み、ゲルダは思い切り引き剥がす。
「わかってますよ。副団長はすべて終わったら、私に身を引けと仰るんでしょう?」
「お前の為でもある」
「別に良いですけどね。雛鳥が飛び立てると判断したら、その時は姿を消しましょう」
「俺も手を貸す」
「次の就職先、それと団長のフォロー。この二つを確保することが条件です」
「任せとけ」
ニコライは懲りもせず、今度はゲルダの頭に手を乗せる。再びポンポンと叩かれたが、ゲルダは退けることはしなかった。
「すまない。辛い想いをさせてしまうな。俺がゲルダとマクシミリアンを引き合わせたというのに。……俺が引き裂くんだ」
廊下の先を見る男の、珍しくも憂いを帯びたその横顔を、ゲルダはじっと見つめる。
「……だけどな、マクシミリアンはここから放り出されたらどこにも行くところがねぇ。それに、白騎士団にはあいつが必要なんだ」
親が罪に問われればマクシミリアンは無事で済まないだろう。騎士団長の任を解かれる事は確実だ。それに部下とのスキャンダルが加われば、騎士を続けることも危うくなる。しかも、相手はシャンピニだ。
「お前も必ず誹謗中傷を受ける。マクシミリアンを唆しただの、誑かしただの。貴族連中のやっかみは執拗で意地が悪い。それは、ガルシア家に限らねぇ。むしろ美学が無いだけに、いっそう下品で限度を知らねぇ。くだらない嫌がらせのために並々ならぬ労力を注ぐ、そんな連中ばっかなんだよ」
そうなれば、マクシミリアンは身を呈してゲルダを守ろうとするだろう。ゲルダの為に心身をすり減らし、漸く取り戻しつつある自由を奪われていく姿など、見たくない。
ゲルダは、ガシガシと頭を惜く上司の横顔を見ながら、口元を緩めた。適当そうに見せてはいるが、その実、心配性で面倒見が良い。
さぞ、言いづらかったことだろう。
それでも、恨まれる覚悟で正直に告げたニコライは、やはり良い人間なのだとゲルダは思う。そう、ニコライがマクシミリアンの傍に居てくれるというなら、安心して良い。ゲルダが消えても……
「団長をお願いします。不幸にしたらバスターソードを副団長の鼻にツッコみます」
「鼻なくなっちゃうじゃん!こぇぇ女だな」
ゲルダは笑った。
……本当は、手を離したくなどない。
マクシミリアンが空へ飛び立つなら、自分も一緒に飛びたかった。
見たことの無い景色を二人で見たかった。
けれど、所詮ゲルダはヴードゥの鳥なのだ。
この国にいる限りは、羽根はもがれたまま。
そして、ゲルダはこの時初めて考えた。
国を出ることを。
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