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スピンオフ:【マルコの初恋】柔らかな感触と劣情(18R)
【最終話】至上の愛を手に入れた男
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「リズデ!」
マルコの呼び掛けに振り向いた美女は小さく手を振って答えた。
薄いスモーキーグリーンのドレスを身に付けてベージュのショールを羽織った彼女は、その美しさで周りの視線を釘付けにしている。
それを知ってか知らずか、本人は飄々と古本屋の店先で書籍を物色している。
「馬車の中で待つように言っただろう」
「すいません。欲しかった古書を見掛けたのでつい…」
そう言ってハンカチーフを取り出すと、マルコの額に手を伸ばして汗を拭った。
その手を掴んで口付けると細い腰を抱き寄せた。
「他の男に見られるだけで嫉妬する。わかってるだろ?」
「私はもう、貴方の妻なのに?」
「そう、俺だけの可愛い妻だ」
衆人の前で妻の可愛らしい唇に口付けを落とす。
「一ヶ月の休暇が取れた」
リズデは驚いてマルコを見上げた。
「本当に陛下に申請したんですか!?…冗談だと思ってた」
「酷いな。君と蜜月を過ごしたいばかりに、結構たいへんな手間を掛けて根回ししたんだぜ?」
リズデはフフと可愛らしく笑うとマルコの胸にすり寄った。
「ずっと一緒にいられるのは私も嬉しいけど」
マルコはリズデの額に口付けして、ため息をついた。
「なあ、観劇を止めて俺の部屋に行かない?」
「何言ってるんです?ポール補佐官に無理を言ってチケットを取ってもらったのに」
「だって、ここ最近はずっと結婚の準備でほとんど一緒に過ごして無いだろう?」
「昨晩は一緒でしたよ」
「昨晩だって、一回しかしてない…」
リズデはマルコの口を手で塞いだ。
「声が大きい…だって、今日は観劇の予定だったから」
マルコは大概リズデを抱き潰す。
時間を掛けて何回もリズデを絶頂に導くので、翌日はくたくたになってしまい、出掛けることも叶わないのだ。
「わかったよ。でも、観劇の後は屋敷には帰らずに部屋で泊まろう。我慢出来そうにない」
耳元で囁かれてリズデは頬染めて頷いた。
初々しい反応を見てマルコは愛しさが募る。
常に飢餓感に襲われ続け、かといって誰も信用出来ずに過ごしていた少し前の自分を思い返す。
愛だの恋だのに振り回される人々を冷めた目で見下していた。
しかし、今はわかる。
誰よりも自分は愛を求めていたのだと。
激しい嫉妬の感情も、抑えきれない欲望も、沸き上がる愛しさも、理屈を飛び越えてやってくる感情の波が、自分を本当の人間にしてくれた気がするのだ。
傍らの愛しい存在を見下ろすと、視線に気付いたリズデが見上げて微笑んだ。
心を寄せ合える相手と巡り合えたことの幸せを噛み締める。
マルコは、リズデの手を取り頬擦りした。
ああ、今夜もこの柔らかい肌の感触を存分に味合わせてくれ。
沸き上がる劣情で一緒に天国へ昇りつめよう。
永遠に。
マルコの呼び掛けに振り向いた美女は小さく手を振って答えた。
薄いスモーキーグリーンのドレスを身に付けてベージュのショールを羽織った彼女は、その美しさで周りの視線を釘付けにしている。
それを知ってか知らずか、本人は飄々と古本屋の店先で書籍を物色している。
「馬車の中で待つように言っただろう」
「すいません。欲しかった古書を見掛けたのでつい…」
そう言ってハンカチーフを取り出すと、マルコの額に手を伸ばして汗を拭った。
その手を掴んで口付けると細い腰を抱き寄せた。
「他の男に見られるだけで嫉妬する。わかってるだろ?」
「私はもう、貴方の妻なのに?」
「そう、俺だけの可愛い妻だ」
衆人の前で妻の可愛らしい唇に口付けを落とす。
「一ヶ月の休暇が取れた」
リズデは驚いてマルコを見上げた。
「本当に陛下に申請したんですか!?…冗談だと思ってた」
「酷いな。君と蜜月を過ごしたいばかりに、結構たいへんな手間を掛けて根回ししたんだぜ?」
リズデはフフと可愛らしく笑うとマルコの胸にすり寄った。
「ずっと一緒にいられるのは私も嬉しいけど」
マルコはリズデの額に口付けして、ため息をついた。
「なあ、観劇を止めて俺の部屋に行かない?」
「何言ってるんです?ポール補佐官に無理を言ってチケットを取ってもらったのに」
「だって、ここ最近はずっと結婚の準備でほとんど一緒に過ごして無いだろう?」
「昨晩は一緒でしたよ」
「昨晩だって、一回しかしてない…」
リズデはマルコの口を手で塞いだ。
「声が大きい…だって、今日は観劇の予定だったから」
マルコは大概リズデを抱き潰す。
時間を掛けて何回もリズデを絶頂に導くので、翌日はくたくたになってしまい、出掛けることも叶わないのだ。
「わかったよ。でも、観劇の後は屋敷には帰らずに部屋で泊まろう。我慢出来そうにない」
耳元で囁かれてリズデは頬染めて頷いた。
初々しい反応を見てマルコは愛しさが募る。
常に飢餓感に襲われ続け、かといって誰も信用出来ずに過ごしていた少し前の自分を思い返す。
愛だの恋だのに振り回される人々を冷めた目で見下していた。
しかし、今はわかる。
誰よりも自分は愛を求めていたのだと。
激しい嫉妬の感情も、抑えきれない欲望も、沸き上がる愛しさも、理屈を飛び越えてやってくる感情の波が、自分を本当の人間にしてくれた気がするのだ。
傍らの愛しい存在を見下ろすと、視線に気付いたリズデが見上げて微笑んだ。
心を寄せ合える相手と巡り合えたことの幸せを噛み締める。
マルコは、リズデの手を取り頬擦りした。
ああ、今夜もこの柔らかい肌の感触を存分に味合わせてくれ。
沸き上がる劣情で一緒に天国へ昇りつめよう。
永遠に。
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すなぎ先生😭😭
完結おめでとうございます🎉
溺愛も、マルコも!本当に良かったー!
アルファポリスまで、追いかけて来て良かったです!
感無量( ᵕ̩̩ㅅᵕ̩̩ )
素敵な、お話をありがとうございます✨
ずっと、一生ファンです!
りんさん、ありがとうございます!
このシリーズは私の原点で
大切な作品たちです。
初心を忘れず、今後もお話を紡いでいきたいと思います。
公開出来て良かったです!
いつも応援ありがとうね~(∩´∀`∩)♡
くぅ〜w
私、すなぎワールドの虜ッ
本編も、大好きだし、R18も丁寧で、大好き(*'▽'*)♪
たくさんの人に、読んで欲しいです🍀✨
りんさん、いつもありがとうございます~!
マルコ編は本編と全然雰囲気違うんですけど、これも18R初投稿作品なんですよね。
転載するに当たりちょっと訂正を加えてます。
すなぎの初期作品、離れ離れだった三作品を纏めることが今回の目的でもありまして叶えることが出来て嬉しいです~
本編完結おめでとうございます。
このお話はいつも静かなところで情景を思い描きながらいつも読んでいたんですが、GWになりなかなか家が静かではなくて💦「果たされる約束」から後ろがなかなか読めなくて😭、深夜に布団の中で誰にも邪魔されずに最後まで読むことができました!
『星詠み』の話も結婚式のお話も、本当に本当にきれいな情景が見えるようでした💫✨
最初から最後まで景色にこだわられたと仰られていたとおりで、ステキでした💕連休が終わったらもう一度初めから読んでみようと思っています。
スピンオフ(番外編?)も数話あげてくださるとのことで、そちらもとても楽しみにしています🥰
それから、先日は21-2のお話の件ありがとうございました😊
最後まで読んで頂きありがとうございます!
GWはお休みだけど気が休まらない…
(^ω^)わかります。
手を取りあった二人に流星群を見せる、それを書きたい一心で
お話を書き進めました。
無事に約束を果たすことができて良かった!
この作品にかけた熱量をこの先も忘れずに創作していきたいと思っています。
抜けのご連絡、こちらこそありがとうございます!気づいて頂けて助かりました!
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お気をつけ下さい…