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⑥お手伝い
⑥-4
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「食欲はないのに、そういった欲は残っていたようなのだ。紛らわしてはいたのだが、そろそろ限界のようだ」
引き締まった鳩尾から少し離れた位置に聳え立つもの。
赤黒くつるりとしたそれを、一瞬別の生き物ではないかと疑った。しかし、薄い茂みに覆われているその先は、間違いなく胴体と繋がっている。
「軽蔑しないでくれ。これは男の生理現象なのだ。決して魔女殿に不埒な思いを抱いていたわけでは……まったくないとは言い切れないが」
ミランダにはアーネストの声が耳に入っていない。ただ、激しく混乱していた。
こ、これは、あれよね? つまり、男の性器。
男の精を糧にする淫乱な民族といわれ、実際、精を呪術に利用する魔女も一定数いるが、ミランダは違う。威嚇を込めて気の強そうな装いをしているが、その中身はおぼこい娘である。魔女の自分に普通の恋愛など無理だと半ば諦めていたし、人には必要以上関わらぬように生きてきた。
ゆえに、こういった場面の対処法がわからない。ミランダは数少ない知識を総動員しアーネストに訊ねた。
「こ、これは勃起してるのよね?」
「そのようにはっきり言葉にされると恥ずかしいが、その通りだ」
「このままにしておくと良くないのよね?」
「……まあ、悶々としてしまうな。そのうち下品なことばかり口走るようになるかもしれん。腕があれば自分で処理できるのだが、明日まで我慢できるか……」
精神と身体の安定は、術の成功を左右する。ミランダはごくりと唾を呑み込んだ。
「私が手伝うわ」
「えっ?! 魔女殿が?! そ、それはまたとない申し出……、いや、そんな、でも……」
「それともハンスさんか誰か騎士を呼ぶ?」
「絶対嫌だ! 握りつぶされる! 臭い!」
「じゃあ、私で我慢して。誰か意中のお姫様でも想像してよ」
手を伸ばし、陰茎に指先が触れた瞬間、アーネストは叫んだ。
「待てっ!」
「なによ、観念なさいよ。このままじゃつらいんでしょ?」
「我の首をそちらに向けてくれ」
「必要かしら」
「扱かれているのを見たいに決まっているだろう! その方が興奮するし、早く済むはずだ!」
「そんなもんなの?」
ミランダは腰を上げ、アーネストの首を持ち上げて自分に向ける。アーネストはターコイズの瞳を爛々と輝かせ、頬を上気させていた。
「魔女殿の名前を教えてくれ」
「なんでよ」
唾を飛ばさんばかりの意気込みで要求するアーネストに尻込みしながら訊ねれば、彼は恥ずかし気に目を伏せたあと、上目遣いでねだる。
「名前を呼びたい」
意表を突かれ言葉が出ないミランダに、アーネストは尚も囁く。
「魔女殿と愛し合っている想像をして果てたいのだ」
あまりに正直な望みに、抗う気持ちも湧かなかった。
ミランダは半分放心状態で告げた。
「ミランダよ」
引き締まった鳩尾から少し離れた位置に聳え立つもの。
赤黒くつるりとしたそれを、一瞬別の生き物ではないかと疑った。しかし、薄い茂みに覆われているその先は、間違いなく胴体と繋がっている。
「軽蔑しないでくれ。これは男の生理現象なのだ。決して魔女殿に不埒な思いを抱いていたわけでは……まったくないとは言い切れないが」
ミランダにはアーネストの声が耳に入っていない。ただ、激しく混乱していた。
こ、これは、あれよね? つまり、男の性器。
男の精を糧にする淫乱な民族といわれ、実際、精を呪術に利用する魔女も一定数いるが、ミランダは違う。威嚇を込めて気の強そうな装いをしているが、その中身はおぼこい娘である。魔女の自分に普通の恋愛など無理だと半ば諦めていたし、人には必要以上関わらぬように生きてきた。
ゆえに、こういった場面の対処法がわからない。ミランダは数少ない知識を総動員しアーネストに訊ねた。
「こ、これは勃起してるのよね?」
「そのようにはっきり言葉にされると恥ずかしいが、その通りだ」
「このままにしておくと良くないのよね?」
「……まあ、悶々としてしまうな。そのうち下品なことばかり口走るようになるかもしれん。腕があれば自分で処理できるのだが、明日まで我慢できるか……」
精神と身体の安定は、術の成功を左右する。ミランダはごくりと唾を呑み込んだ。
「私が手伝うわ」
「えっ?! 魔女殿が?! そ、それはまたとない申し出……、いや、そんな、でも……」
「それともハンスさんか誰か騎士を呼ぶ?」
「絶対嫌だ! 握りつぶされる! 臭い!」
「じゃあ、私で我慢して。誰か意中のお姫様でも想像してよ」
手を伸ばし、陰茎に指先が触れた瞬間、アーネストは叫んだ。
「待てっ!」
「なによ、観念なさいよ。このままじゃつらいんでしょ?」
「我の首をそちらに向けてくれ」
「必要かしら」
「扱かれているのを見たいに決まっているだろう! その方が興奮するし、早く済むはずだ!」
「そんなもんなの?」
ミランダは腰を上げ、アーネストの首を持ち上げて自分に向ける。アーネストはターコイズの瞳を爛々と輝かせ、頬を上気させていた。
「魔女殿の名前を教えてくれ」
「なんでよ」
唾を飛ばさんばかりの意気込みで要求するアーネストに尻込みしながら訊ねれば、彼は恥ずかし気に目を伏せたあと、上目遣いでねだる。
「名前を呼びたい」
意表を突かれ言葉が出ないミランダに、アーネストは尚も囁く。
「魔女殿と愛し合っている想像をして果てたいのだ」
あまりに正直な望みに、抗う気持ちも湧かなかった。
ミランダは半分放心状態で告げた。
「ミランダよ」
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