3 / 10
3
「あったり~!」
そんな、おめでとうみたいに言われても。
「え、どゆこと?なんで?」
聞きたいことが色々ありすぎて頭が回らない。
「──あの時の子っておかっぱ頭だったよ?」
「髪型が子供の頃のままな人っている?」
逆に問い返された。
「そうだけど、真っ黒の髪だったよ?」
「染めたっておかしくないでしょ?でも僕は染めてないけどね。成人する頃にはこんな色になった」
それはそれでおかしい!
「と、とにかく、最初から説明して!こっちで私と会ったの偶然なのか、──ハッ!もしかしておばあちゃんに何かあった!?」
社会人になってからはほとんど会えていない。とにかく遠いのだ、おばあちゃんちは。
「咲季さん、元気にしてるよ。心配しなくても大丈夫。でも、繭に会いたがってるけどね」
繭、と名前を呼ばれてドキッと胸が締め付けられた。まるであの幼い夏に戻ったような気がした。あの子は確かに私を繭、と呼んだ。
私はあの子のことを、──なんて呼んでいただろう。
「・・・ところでそもそも、あなたって何者なの?なんでおばあちゃんと住んでたの?」
「うーん、・・あ、そうだ!お米と味噌はお隣から借りたんだった。後で返しておいて」
「なんですって!?」
「だって、千円じゃそんなに買えなくて。言わせてもらうけど、お米と味噌のないおウチなんて初めてだよ?」
「だからって人から借りるなんて!ここはね、おばあちゃんと住んでた田舎じゃないの。貸し借りし合うなんてここらじゃやらないのよ!
・・・ちなみに、お隣さんはどんな方だったの?ああ、もう!関わりたくないから引っ越してきた時も御挨拶に行ってないのに!」
「へえー、こっちの生活はめんどくさいんだねえ。普通の女の子だったよ。学生っぽかった」
「そう。・・・お米とお味噌ね。明日買ってくるからあなたが返してよね」
「ほーい」
「で、なんの話だったかな。うーんと、なんではるばる出てきたの?私に会うため?・・・いや住所知ってるっけ?あ、おばあちゃんに聞けばわかるか。それより、そうよ!あなたはおばあちゃんのなんなの?」
「なんなの、と言われても、特に。あ、この大根のお漬物美味しいでしょ、咲季さん直伝」
「特にって何よ。うん、ちょっとお酢が入っているのよね、甘みもあって美味しい~」
お互いパクパクと食べながらの会話だ。特に私は箸が止まらない。普段、外食とサプリで生きているからだろうか?
「美味しいのは僕の愛情がたっぷり入っているからだよ」
えへへ~。
自称座敷童子が自分の言葉に照れてる。
そういうのいいから、と突っ込むのもめんどくさいが、確かに味の再現度は高い。
甘くて酸っぱい、大根のお漬物も、豆腐とワカメの味噌汁も。ミックスベジタブルとキャベツを煮たのか炒めたのか、味の薄い名も無いおかずも。
おばあちゃんが私のために最初に作ってくれたもの。
自分の殻に閉じこもっていた私に、安心感を与えたもの。
あの時も、初めて水を与えられた苗のようにパクパクご飯を食べたっけ。
「咲季さんに、僕は見えていなかったと思うよ」
「ぐっ、」
ちょうどしみじみと味噌汁を飲んでいた時だった。
ごほごほ、と咳込んで、向かいで普通に食事をする自称座敷童子を見た。
「は?何言ってんの。おばあちゃん、話しかけてたし、ご飯だって一緒に食べてたじゃない」
「話しかけてたのは僕にじゃないよ。ご飯を出していたのは無意識だと思う。言ったでしょ、僕、座敷童子だって」
「・・・・・。」
バカバカしい話だ。
「あの夏、ずっと3人で暮らしてたと思っていたけど、実はおばあちゃんと私の2人暮らしだったってわけ?」
「咲季さんにとってみたら、そうだね」
あの夏のことはよーく憶えている。忘れられない大事な夏だ。
思い出に、もちろんあの子は欠かせない存在だ。いつもいつも一緒にいたのだ。
いっぱい一緒に遊んだし、一緒に畑でおばあちゃんの手伝いもした。迎えに来ない母を想い泣きべそをかいてしまった時は、頭を撫でてくれて“僕がずっと一緒にいるから”と慰めてくれた。
「ちゃんと実体があったよ?」
「いや~、僕幽霊じゃないんで」
「・・・じゃあ、何か、自分が座敷童子だと証明ってできる?」
「僕たちって基本そこに在るあやかしだからねえ。証明って言われても難しいけど。でも、お手伝いとかけっこうマメにするよ?」
お手伝いか・・。やった覚えはないけど靴が出来上がっていたり?それは小人か。昔読んだ童話を思い出した。
「よく言われるのは座敷童子を見ると幸せになる、とかあるけど」
「確かにおばあちゃんは幸せそうだったけど」
子供心にも明るいおばあちゃんだったなあ。っていうかおばあちゃんには見えていないんだったよね。
「ああ、咲希さんはうちに来たときからあんな感じだった」
「座敷童子関係ないね」
「・・・そうだね」
「というか、あなたがあの家の先住者だったの?」
「そうだよ。あの家はねぇ、僕のおかげで村一番の長者だったんだよ。でもちょっと仲間に誘われて、遊びに行って帰ってきたら誰もいなくなっていて、家もあんなふうにボロ家になってしまっていたんだ。人間ってあっという間に死んじゃうんだね」
ははは、と自称座敷童子は人の一生を軽く笑った。
そんな、おめでとうみたいに言われても。
「え、どゆこと?なんで?」
聞きたいことが色々ありすぎて頭が回らない。
「──あの時の子っておかっぱ頭だったよ?」
「髪型が子供の頃のままな人っている?」
逆に問い返された。
「そうだけど、真っ黒の髪だったよ?」
「染めたっておかしくないでしょ?でも僕は染めてないけどね。成人する頃にはこんな色になった」
それはそれでおかしい!
「と、とにかく、最初から説明して!こっちで私と会ったの偶然なのか、──ハッ!もしかしておばあちゃんに何かあった!?」
社会人になってからはほとんど会えていない。とにかく遠いのだ、おばあちゃんちは。
「咲季さん、元気にしてるよ。心配しなくても大丈夫。でも、繭に会いたがってるけどね」
繭、と名前を呼ばれてドキッと胸が締め付けられた。まるであの幼い夏に戻ったような気がした。あの子は確かに私を繭、と呼んだ。
私はあの子のことを、──なんて呼んでいただろう。
「・・・ところでそもそも、あなたって何者なの?なんでおばあちゃんと住んでたの?」
「うーん、・・あ、そうだ!お米と味噌はお隣から借りたんだった。後で返しておいて」
「なんですって!?」
「だって、千円じゃそんなに買えなくて。言わせてもらうけど、お米と味噌のないおウチなんて初めてだよ?」
「だからって人から借りるなんて!ここはね、おばあちゃんと住んでた田舎じゃないの。貸し借りし合うなんてここらじゃやらないのよ!
・・・ちなみに、お隣さんはどんな方だったの?ああ、もう!関わりたくないから引っ越してきた時も御挨拶に行ってないのに!」
「へえー、こっちの生活はめんどくさいんだねえ。普通の女の子だったよ。学生っぽかった」
「そう。・・・お米とお味噌ね。明日買ってくるからあなたが返してよね」
「ほーい」
「で、なんの話だったかな。うーんと、なんではるばる出てきたの?私に会うため?・・・いや住所知ってるっけ?あ、おばあちゃんに聞けばわかるか。それより、そうよ!あなたはおばあちゃんのなんなの?」
「なんなの、と言われても、特に。あ、この大根のお漬物美味しいでしょ、咲季さん直伝」
「特にって何よ。うん、ちょっとお酢が入っているのよね、甘みもあって美味しい~」
お互いパクパクと食べながらの会話だ。特に私は箸が止まらない。普段、外食とサプリで生きているからだろうか?
「美味しいのは僕の愛情がたっぷり入っているからだよ」
えへへ~。
自称座敷童子が自分の言葉に照れてる。
そういうのいいから、と突っ込むのもめんどくさいが、確かに味の再現度は高い。
甘くて酸っぱい、大根のお漬物も、豆腐とワカメの味噌汁も。ミックスベジタブルとキャベツを煮たのか炒めたのか、味の薄い名も無いおかずも。
おばあちゃんが私のために最初に作ってくれたもの。
自分の殻に閉じこもっていた私に、安心感を与えたもの。
あの時も、初めて水を与えられた苗のようにパクパクご飯を食べたっけ。
「咲季さんに、僕は見えていなかったと思うよ」
「ぐっ、」
ちょうどしみじみと味噌汁を飲んでいた時だった。
ごほごほ、と咳込んで、向かいで普通に食事をする自称座敷童子を見た。
「は?何言ってんの。おばあちゃん、話しかけてたし、ご飯だって一緒に食べてたじゃない」
「話しかけてたのは僕にじゃないよ。ご飯を出していたのは無意識だと思う。言ったでしょ、僕、座敷童子だって」
「・・・・・。」
バカバカしい話だ。
「あの夏、ずっと3人で暮らしてたと思っていたけど、実はおばあちゃんと私の2人暮らしだったってわけ?」
「咲季さんにとってみたら、そうだね」
あの夏のことはよーく憶えている。忘れられない大事な夏だ。
思い出に、もちろんあの子は欠かせない存在だ。いつもいつも一緒にいたのだ。
いっぱい一緒に遊んだし、一緒に畑でおばあちゃんの手伝いもした。迎えに来ない母を想い泣きべそをかいてしまった時は、頭を撫でてくれて“僕がずっと一緒にいるから”と慰めてくれた。
「ちゃんと実体があったよ?」
「いや~、僕幽霊じゃないんで」
「・・・じゃあ、何か、自分が座敷童子だと証明ってできる?」
「僕たちって基本そこに在るあやかしだからねえ。証明って言われても難しいけど。でも、お手伝いとかけっこうマメにするよ?」
お手伝いか・・。やった覚えはないけど靴が出来上がっていたり?それは小人か。昔読んだ童話を思い出した。
「よく言われるのは座敷童子を見ると幸せになる、とかあるけど」
「確かにおばあちゃんは幸せそうだったけど」
子供心にも明るいおばあちゃんだったなあ。っていうかおばあちゃんには見えていないんだったよね。
「ああ、咲希さんはうちに来たときからあんな感じだった」
「座敷童子関係ないね」
「・・・そうだね」
「というか、あなたがあの家の先住者だったの?」
「そうだよ。あの家はねぇ、僕のおかげで村一番の長者だったんだよ。でもちょっと仲間に誘われて、遊びに行って帰ってきたら誰もいなくなっていて、家もあんなふうにボロ家になってしまっていたんだ。人間ってあっという間に死んじゃうんだね」
ははは、と自称座敷童子は人の一生を軽く笑った。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
おかしくなったのは、彼女が我が家にやってきてからでした。
ましゅぺちーの
恋愛
公爵家の令嬢であるリリスは家族と婚約者に愛されて幸せの中にいた。
そんな時、リリスの父の弟夫婦が不慮の事故で亡くなり、その娘を我が家で引き取ることになった。
娘の名前はシルビア。天使のように可愛らしく愛嬌のある彼女はすぐに一家に馴染んでいった。
それに対してリリスは次第に家で孤立していき、シルビアに嫌がらせをしているとの噂までたち始めた。
婚約者もシルビアに奪われ、父からは勘当を言い渡される。
リリスは平民として第二の人生を歩み始める。
全8話。完結まで執筆済みです。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
【完結】狡い人
ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。
レイラは、狡い。
レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。
双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。
口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。
そこには、人それぞれの『狡さ』があった。
そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。
恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。
2人の違いは、一体なんだったのか?
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした
暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。
役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。
だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。
倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。
やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。
一方、病の裏で糸を引いていたのは………。
“無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。