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「あったり~!」
そんな、おめでとうみたいに言われても。
「え、どゆこと?なんで?」
聞きたいことが色々ありすぎて頭が回らない。
「──あの時の子っておかっぱ頭だったよ?」
「髪型が子供の頃のままな人っている?」
逆に問い返された。
「そうだけど、真っ黒の髪だったよ?」
「染めたっておかしくないでしょ?でも僕は染めてないけどね。成人する頃にはこんな色になった」
それはそれでおかしい!
「と、とにかく、最初から説明して!こっちで私と会ったの偶然なのか、──ハッ!もしかしておばあちゃんに何かあった!?」
社会人になってからはほとんど会えていない。とにかく遠いのだ、おばあちゃんちは。
「咲季さん、元気にしてるよ。心配しなくても大丈夫。でも、繭に会いたがってるけどね」
繭、と名前を呼ばれてドキッと胸が締め付けられた。まるであの幼い夏に戻ったような気がした。あの子は確かに私を繭、と呼んだ。
私はあの子のことを、──なんて呼んでいただろう。
「・・・ところでそもそも、あなたって何者なの?なんでおばあちゃんと住んでたの?」
「うーん、・・あ、そうだ!お米と味噌はお隣から借りたんだった。後で返しておいて」
「なんですって!?」
「だって、千円じゃそんなに買えなくて。言わせてもらうけど、お米と味噌のないおウチなんて初めてだよ?」
「だからって人から借りるなんて!ここはね、おばあちゃんと住んでた田舎じゃないの。貸し借りし合うなんてここらじゃやらないのよ!
・・・ちなみに、お隣さんはどんな方だったの?ああ、もう!関わりたくないから引っ越してきた時も御挨拶に行ってないのに!」
「へえー、こっちの生活はめんどくさいんだねえ。普通の女の子だったよ。学生っぽかった」
「そう。・・・お米とお味噌ね。明日買ってくるからあなたが返してよね」
「ほーい」
「で、なんの話だったかな。うーんと、なんではるばる出てきたの?私に会うため?・・・いや住所知ってるっけ?あ、おばあちゃんに聞けばわかるか。それより、そうよ!あなたはおばあちゃんのなんなの?」
「なんなの、と言われても、特に。あ、この大根のお漬物美味しいでしょ、咲季さん直伝」
「特にって何よ。うん、ちょっとお酢が入っているのよね、甘みもあって美味しい~」
お互いパクパクと食べながらの会話だ。特に私は箸が止まらない。普段、外食とサプリで生きているからだろうか?
「美味しいのは僕の愛情がたっぷり入っているからだよ」
えへへ~。
自称座敷童子が自分の言葉に照れてる。
そういうのいいから、と突っ込むのもめんどくさいが、確かに味の再現度は高い。
甘くて酸っぱい、大根のお漬物も、豆腐とワカメの味噌汁も。ミックスベジタブルとキャベツを煮たのか炒めたのか、味の薄い名も無いおかずも。
おばあちゃんが私のために最初に作ってくれたもの。
自分の殻に閉じこもっていた私に、安心感を与えたもの。
あの時も、初めて水を与えられた苗のようにパクパクご飯を食べたっけ。
「咲季さんに、僕は見えていなかったと思うよ」
「ぐっ、」
ちょうどしみじみと味噌汁を飲んでいた時だった。
ごほごほ、と咳込んで、向かいで普通に食事をする自称座敷童子を見た。
「は?何言ってんの。おばあちゃん、話しかけてたし、ご飯だって一緒に食べてたじゃない」
「話しかけてたのは僕にじゃないよ。ご飯を出していたのは無意識だと思う。言ったでしょ、僕、座敷童子だって」
「・・・・・。」
バカバカしい話だ。
「あの夏、ずっと3人で暮らしてたと思っていたけど、実はおばあちゃんと私の2人暮らしだったってわけ?」
「咲季さんにとってみたら、そうだね」
あの夏のことはよーく憶えている。忘れられない大事な夏だ。
思い出に、もちろんあの子は欠かせない存在だ。いつもいつも一緒にいたのだ。
いっぱい一緒に遊んだし、一緒に畑でおばあちゃんの手伝いもした。迎えに来ない母を想い泣きべそをかいてしまった時は、頭を撫でてくれて“僕がずっと一緒にいるから”と慰めてくれた。
「ちゃんと実体があったよ?」
「いや~、僕幽霊じゃないんで」
「・・・じゃあ、何か、自分が座敷童子だと証明ってできる?」
「僕たちって基本そこに在るあやかしだからねえ。証明って言われても難しいけど。でも、お手伝いとかけっこうマメにするよ?」
お手伝いか・・。やった覚えはないけど靴が出来上がっていたり?それは小人か。昔読んだ童話を思い出した。
「よく言われるのは座敷童子を見ると幸せになる、とかあるけど」
「確かにおばあちゃんは幸せそうだったけど」
子供心にも明るいおばあちゃんだったなあ。っていうかおばあちゃんには見えていないんだったよね。
「ああ、咲希さんはうちに来たときからあんな感じだった」
「座敷童子関係ないね」
「・・・そうだね」
「というか、あなたがあの家の先住者だったの?」
「そうだよ。あの家はねぇ、僕のおかげで村一番の長者だったんだよ。でもちょっと仲間に誘われて、遊びに行って帰ってきたら誰もいなくなっていて、家もあんなふうにボロ家になってしまっていたんだ。人間ってあっという間に死んじゃうんだね」
ははは、と自称座敷童子は人の一生を軽く笑った。
そんな、おめでとうみたいに言われても。
「え、どゆこと?なんで?」
聞きたいことが色々ありすぎて頭が回らない。
「──あの時の子っておかっぱ頭だったよ?」
「髪型が子供の頃のままな人っている?」
逆に問い返された。
「そうだけど、真っ黒の髪だったよ?」
「染めたっておかしくないでしょ?でも僕は染めてないけどね。成人する頃にはこんな色になった」
それはそれでおかしい!
「と、とにかく、最初から説明して!こっちで私と会ったの偶然なのか、──ハッ!もしかしておばあちゃんに何かあった!?」
社会人になってからはほとんど会えていない。とにかく遠いのだ、おばあちゃんちは。
「咲季さん、元気にしてるよ。心配しなくても大丈夫。でも、繭に会いたがってるけどね」
繭、と名前を呼ばれてドキッと胸が締め付けられた。まるであの幼い夏に戻ったような気がした。あの子は確かに私を繭、と呼んだ。
私はあの子のことを、──なんて呼んでいただろう。
「・・・ところでそもそも、あなたって何者なの?なんでおばあちゃんと住んでたの?」
「うーん、・・あ、そうだ!お米と味噌はお隣から借りたんだった。後で返しておいて」
「なんですって!?」
「だって、千円じゃそんなに買えなくて。言わせてもらうけど、お米と味噌のないおウチなんて初めてだよ?」
「だからって人から借りるなんて!ここはね、おばあちゃんと住んでた田舎じゃないの。貸し借りし合うなんてここらじゃやらないのよ!
・・・ちなみに、お隣さんはどんな方だったの?ああ、もう!関わりたくないから引っ越してきた時も御挨拶に行ってないのに!」
「へえー、こっちの生活はめんどくさいんだねえ。普通の女の子だったよ。学生っぽかった」
「そう。・・・お米とお味噌ね。明日買ってくるからあなたが返してよね」
「ほーい」
「で、なんの話だったかな。うーんと、なんではるばる出てきたの?私に会うため?・・・いや住所知ってるっけ?あ、おばあちゃんに聞けばわかるか。それより、そうよ!あなたはおばあちゃんのなんなの?」
「なんなの、と言われても、特に。あ、この大根のお漬物美味しいでしょ、咲季さん直伝」
「特にって何よ。うん、ちょっとお酢が入っているのよね、甘みもあって美味しい~」
お互いパクパクと食べながらの会話だ。特に私は箸が止まらない。普段、外食とサプリで生きているからだろうか?
「美味しいのは僕の愛情がたっぷり入っているからだよ」
えへへ~。
自称座敷童子が自分の言葉に照れてる。
そういうのいいから、と突っ込むのもめんどくさいが、確かに味の再現度は高い。
甘くて酸っぱい、大根のお漬物も、豆腐とワカメの味噌汁も。ミックスベジタブルとキャベツを煮たのか炒めたのか、味の薄い名も無いおかずも。
おばあちゃんが私のために最初に作ってくれたもの。
自分の殻に閉じこもっていた私に、安心感を与えたもの。
あの時も、初めて水を与えられた苗のようにパクパクご飯を食べたっけ。
「咲季さんに、僕は見えていなかったと思うよ」
「ぐっ、」
ちょうどしみじみと味噌汁を飲んでいた時だった。
ごほごほ、と咳込んで、向かいで普通に食事をする自称座敷童子を見た。
「は?何言ってんの。おばあちゃん、話しかけてたし、ご飯だって一緒に食べてたじゃない」
「話しかけてたのは僕にじゃないよ。ご飯を出していたのは無意識だと思う。言ったでしょ、僕、座敷童子だって」
「・・・・・。」
バカバカしい話だ。
「あの夏、ずっと3人で暮らしてたと思っていたけど、実はおばあちゃんと私の2人暮らしだったってわけ?」
「咲季さんにとってみたら、そうだね」
あの夏のことはよーく憶えている。忘れられない大事な夏だ。
思い出に、もちろんあの子は欠かせない存在だ。いつもいつも一緒にいたのだ。
いっぱい一緒に遊んだし、一緒に畑でおばあちゃんの手伝いもした。迎えに来ない母を想い泣きべそをかいてしまった時は、頭を撫でてくれて“僕がずっと一緒にいるから”と慰めてくれた。
「ちゃんと実体があったよ?」
「いや~、僕幽霊じゃないんで」
「・・・じゃあ、何か、自分が座敷童子だと証明ってできる?」
「僕たちって基本そこに在るあやかしだからねえ。証明って言われても難しいけど。でも、お手伝いとかけっこうマメにするよ?」
お手伝いか・・。やった覚えはないけど靴が出来上がっていたり?それは小人か。昔読んだ童話を思い出した。
「よく言われるのは座敷童子を見ると幸せになる、とかあるけど」
「確かにおばあちゃんは幸せそうだったけど」
子供心にも明るいおばあちゃんだったなあ。っていうかおばあちゃんには見えていないんだったよね。
「ああ、咲希さんはうちに来たときからあんな感じだった」
「座敷童子関係ないね」
「・・・そうだね」
「というか、あなたがあの家の先住者だったの?」
「そうだよ。あの家はねぇ、僕のおかげで村一番の長者だったんだよ。でもちょっと仲間に誘われて、遊びに行って帰ってきたら誰もいなくなっていて、家もあんなふうにボロ家になってしまっていたんだ。人間ってあっという間に死んじゃうんだね」
ははは、と自称座敷童子は人の一生を軽く笑った。
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