座敷童子様って成長するんでしたっけ?

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 いったい何十年単位で遊んでたらそうなるんだ。

 「あ、そうだ。僕と一緒に暮らして幸せになったら、それが証明にならないかな?僕が幸せを呼ぶ座敷童子だって」

 私が幸せになるのは私の心掛けが良いから。って話にはならないのか?
 
 「・・・まあ、いいけど」

 まあ、いいけどじゃないだろ、自分!とは思うけど。なんかもう一緒に暮らすことが決められていたかのように受け入れた。
 さっき、お米とお味噌を明日彼自身が返すように言い渡したのも考えてみたらおかしな話だった。
 は!もしやこれが座敷童子効果?

 「ご飯作りは任せておいて。あ、お金はちゃんと頂きますから」

 「えーと、働かないの?」

 「僕、座敷童子ですから」

 どどん、と効果音が付きそうな圧で言い切られた。

 夕飯も終わり、食器を流しに持っていくと、なんと、食事作りだけじゃなく、食器も洗ってくれた。やはり、ヒモ志望説が濃厚なのか。
 そして、私より背が高いくせになぜか上目遣いでおねだりしてきた。 

 「ね、繭、冷たいの食べたい。ほら、さっきの」

 「え?・・ああ、アイスね」

 「そう、アイス!」

 夕飯代わりに買ったアイスだったけど、食後のデザートにも良さそうだ。
 2種類のアイスをテーブルに置くと櫂が目をキラキラさせた。

 「バニラとイチゴ、どっちがいい?」

 「うわー!イチゴ!?食べてみたい!
 僕、今の時代好き!美味しいのがいっぱいあるもの。咲希さんは色々手作りしていたけど、甘いものはあまり作ってなかった」

 「そっか」

 なんとなく、明日も何か甘いものを買って帰る自分の姿が想像できた。
 私はバニラ、自称座敷童子はイチゴのアイス。のんびり食べながら、ふと思い立って聞いてみた。

 「ところで貴方をなんて呼べばいいの?座敷童子?」

 「それは人間に人間って呼ぶようなもんだよ」

 「そっか、子どもの頃はなんて呼んでいたっけ、うーん、思い出せないな」

 「・・・貴文って呼んでもいいよ」

 自称座敷童子が口にしたのは、まさかの元カレの名前だった。

 「どういうこと?貴文が貴方の名前なの?」

 だとしたら、すごく嫌だ。

 「違うけど、その名前を呼びたいかと思って」

 「んなわけあるか!!」

 怒ったら、自称座敷童子はしゅんとした。
 酔っ払った時、あいつの名前を呼んでしまったのだろうか。その上、まさかまさか、泣き言を言ってしまったとか?

 「じゃあ、・・・じゃあ、名前、付ける?付けてみる?」

 ゴクリ、と生唾を飲み込み、座りながらもじりじりと私の方に寄ってきた。
 これ、なんの圧なの?

 「いえ、あるでしょ、名前。普通に名前で呼ぶから」

 「基本、僕たちあやかしに名前はない。人間のように親から生まれないものもいるし。だから、自分で付けたり他人に付けてもらったりする」

 「・・・凝った設定だね」

 「なんで設定?僕、本物だから。ちなみに子供の繭は僕のことを“ジロー”って呼んでた。名付けてもらえて嬉しかったけど、後になって、その名前は家に置いてきてしまったくまのぬいぐるみの名前だと知ってショックだったよ。
 だから、呼ばれるなら他の名前がいい!付けて!名前!」

 そうだった、くまのジロー。急に母に連れてこられて、いつも一緒だったのに離れ離れになってしまったのが悲しくて、悲しくて。だからといってそこの家の子をジローと呼ぶのはどうかと思うけど。
 そもそも、ぬいぐるみにジローという名付けもどうかと思う。もっと可愛い名前を付けてよ、子どもの私。うーん、名付けって難しいんだよね。
 
 「・・・プーさん、とか」

 「プー??」

 「ううん、なんでもない。ん、と・・・ヒモ、とか」

 「ヒモ??」

 「や、なんでもない」

 自称座敷童子はヒモの意味を知らない模様。そして私は壊滅的にネーミングセンスがない。
 やれやれ。自分で付けてくれたらいいのに。
 少しめんどくさいと思いながら部屋を見回し、雑誌の表紙の写真に目が止まった。これだ!イケメンのアイドル。

 「櫂(かい)」

 「かい?」

 「櫂。舟を漕ぐオールの意味があるの。人生という海を自分の力で思うように進んで行けますように、と願いを込めて」

 と、そんな感じのことがプロフィールに書いてあった気がする。

 「うわー、すごい!気に入ったよ!櫂(かい)!ありがとう、繭!」

 すごく喜んでくれた。私は少しの罪悪感を感じつつ、なかなか似合った名前をつけられたのでは、とホッとした。

 「繭、安心して俺の船に乗りな!なーんて、アハハ」

 船乗りトーク、いや、ヒモトーク?
 “よーそろー”とうるさい。
 家に帰って来たばかりの時はデスマス調で話していた気もするけど、それはもう崩れていた。まあ、こだわらないけどさ、昔馴染みだったわけだし。
 なんだか自称座敷童子、いや、櫂と過ごすのは心地良かった。
 失恋の痛手で判断力が低下しているのかも、と思わないでもないが。

 そんなこんなで、時折りふっ、と自分の警戒心の無さに不思議になりながらも、私と自称座敷童子の同居生活がスタートした。
 ちなみに男と女がひとつ屋根の下、とかそんなピンクな雰囲気は少しもなかった。もし、櫂がヒモ志望であるならこれはかなり由々しき問題だと思う。
 なぜだろう櫂はアイドルにも負けないほど美形なのに。私も普通にイケメンは好きなのだけど。
 ご飯を作ってもらったからかな。私の中で恋愛対象の男の人の枠から大きく外れてしまっている感じだった。

 
 
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