座敷童子様って成長するんでしたっけ?

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 感謝を伝えると、ようやく美緒ちゃんは顔を上げてくれた。

 「ホントだよ。美緒ちゃんありがとう~!僕一人で行っても良かったんだけどさ、見えない人だったら何を言っても無駄になっちゃうからさ」

 「・・・え?」

 キッチンでお茶の仕度をしてる櫂を見やる。

 「困るんだよねえ、見えたり見えなかったりって。美緒ちゃんが見える人で本当に助かったよ~」
 
 「え?櫂を見えない人がいるってこと?」

 「何を今さら。咲希さんは見えてなかったって言ったでしょ。何故かはわからないけど、僕達のこと、見える人と見えない人がいるんだよね。でも美緒ちゃんのおかげで毎日助かってるんだ。買い物とか」

 まるでなんてことのない世間話でもするように話しながら、ポットとお茶道具を持ってこちらに来る櫂。

 「・・・は?」

 「いえ、私なんてレジでお金を払う位しかお役に立てなくて」

 「一番重要なとこだよ。毎日ありがとね~」

 ・・・毎日。見える人と見えない人・・・。頭の中がぐるぐるする。

 「櫂、って本物の座敷童子なの?」

 ポツリ、と漏れた私の声に、櫂と美緒ちゃんがきょとん、とこちらを向いた。

 「──ずっと言ってたよね、そうだって」

 「──今さら過ぎませんか?はっ!すいませんすいません」

 「・・・・・」

 まるで私が常識から外れているような気になった。え、違うよね?普通、信じないよね?

 「繭、この箱、何が入っているの?」

 「あ・・」

 ケーキの箱を櫂がくんくんして、“いい匂い~”とうっとりしてる。

 「ケーキなの。でも、さっき2回も落としちゃったからぐちゃぐちゃかも」

 テーブルに乗せてそっと箱を開けてみた。
 予想通り、生クリーム多めでスポンジが極薄のケーキはぺちゃんとしている。がんばって立ったままのいちごが悲しくも美しい。

 「うわーい!いちご~!繭、ありがとう!大好き!3人で食べよう!」

 さらりとヒモトークをかます櫂。あ、違ったヒモ志望じゃなくて本物の座敷童子だったっけ。綺麗な顔してるから、ついそっちかと思ってしまうんだよね。なんて、ちょっと責任転嫁。

 「美緒ちゃんは櫂が座敷童子だってこと、全然疑わなかったの?」

 いそいそと小皿やフォークをキッチンに取りに行く櫂を横目で見ながら聞いてみる。

 「は、はい。実は私、見えるんです」

 「え・・・」

 ざわざわと体中に鳥肌が立つ感覚がする。
 正座で俯いたまま話す美緒ちゃんを凝視してしまう。
 なぜか揃っていないおかっぱ頭が、今はおどろおどろしい。

 「見える、ってそれは、つまり、あの」

 「おまたせー」

 「んギャーー!!」

 「「ぎゃー!!」」

 「ぎゃー!!」

 びびっていたところに声を掛けられ叫んてしまった。そして私の叫びに驚いて櫂と美緒ちゃんが叫び、また私がびびって叫ぶという、叫びの山びこ状態に陥ってしまった。

 「ハァハァハァ、落ち着いて。ハァハァ、まずは落ち着こう」

 荒い息で言うと、

 「まずは繭が落ち着いてよ。あー、びっくりした」

 櫂にのん気に返された。

 「・・・だって怖いこと言うから」

 「「怖いこと?」」

 「美緒ちゃんが見えるって・・・。私、ダメなの。幽霊とか、おばけとか」

 口にするのも怖くて、言いながら、ヒイィィィって背筋が震えた。

 「そうだったんですか。怖がらせてすいません。あ、でも私が見えるのは怖いものではなくて、オーラなんです」

 「オーラ・・・」

 また不思議なこと言い出した。

 「へえー、そうなんだー。僕のことをオーラで判断してたんだ」

 「はい、すいません。人とは違った光り方なので、座敷童子様と言われて納得しました」

 不思議な会話だ。
 しかも、櫂はいたって普通に、紅茶を入れ、茶葉を蒸らしながらもお皿を並べ、フォークでちょいちょいと器用に崩れたケーキを3等分にしながら会話をしている。
 長く生きている分、動じなくなるのだろうか。

 「そっか、オーラかぁ。うんうん、そういうこともあるよね。うん」

 櫂のそういうところ、見習いたいな、なんて思う。
 まだ半信半疑だけど、とりあえず、櫂が本物の座敷童子だと受け入れるところから始めてみようか。
 2個のショートケーキを買ったから上に乗ったいちごの数は2個。当たり前のように私と美緒ちゃんにいちごの乗ったお皿を配る櫂。
 これはヒモスキルではなくて櫂本来の優しさなのね。ふむふむ。

 「櫂、いちご好きでしょ」

 私と櫂の皿を交換すると、

 「繭が大好きっ!」

 とヒモトークが返ってくる。
 「もうそれいいから」と返すと「?」の顔をする。

 「はっ、すいませんすいません。私がお邪魔してしまったばかりに数が合わなくて。私はいいのでどうぞお二人で食べて下さい」

 美緒ちゃんがまた謝り倒してくる。

 「そんなこと言わないで一緒に食べましょ。いちご、嫌いじゃなかったらぜひ食べてちょうだい。潰れてなければもっと良かったんだけどねえ、ニコルのケーキなのよ?」

 「あ、知ってます!有名なお店ですよね」

 重要なとこ、わかってもらえて嬉しい。

 「繭」

 呼ばれて顔を向けると、櫂がフォークに刺したいちごを顔に近付けてきた。

 「あーん」

 やっぱりあーん、か!


 
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