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「そもそも僕たちあやかしは人間に追い払われるほど弱くないよ?」
「は、はい。この結界は悪霊に向けた結界でした。すいませんすいません」
すごい会話だ。お夕飯を食べながらの会話とは思えない。
といっても、普通の家でお夕飯時にどんな会話がされているのか想像がつかない。いつも食事は一人だったから。食べながら、よくおばあちゃんちでの食事を思い出していたな。
あの夏、ご飯時の話題は、大体がおばあちゃんの作るご飯のことだった。
当時、スーパーのお惣菜がメインだった私には、おばあちゃんちの食卓に並ぶ料理のどれもがキラキラと輝いて見えたものだった。具だくさんの味噌汁とか、洗っただけのきゅうりと味噌、とかね。櫂と一緒に(当時はジローと呼んでいた)いっぱい食べたなあ。
櫂と結婚したら、あんな毎日を送るのかしら。
──あらでも、待って?今、まさに結婚生活に突入してない?これ。目の前の食卓には、キラキラ輝く手料理の数々があるのだ。あら?私、ここ最近、なんだかすごく幸せなのだけど。
──それはつまり、私は櫂を好・・・。かどうかは置いておいて、私の幸せが食卓の豊かさに直結している、ということなのかもしれない。
うーむ、残念だけど、貴文くんと結婚しても幸せにはなれなかった、ということに気付いてしまった。振られた時はショックだったけど、今ではそれで良かったのかもしれないな。貴文くんにとっても。だって私、料理できないもの。危険だから。
ほう、良かった良かった。
万事塞翁が馬、とはこのことだわ。
私が人生の大いなる謎を解き、その答えに納得しながらお夕飯を食べ進めている間、二人は結界の話で盛り上がっていた。というか、櫂が美緒ちゃんに講義をしていた。もちろん、私は怖い話はスルーだ。ホラーもスリラーもオカルトも苦手だ。なんなら、ここでそんな話をするな、と言いたい。
「──つまり、結界は、戦う意志があると見做されることもある、非常に危険な技でもあるんだよ。あと、YouTubeを信用しすぎるのは危険です」
「はい!座敷童子様!以後気を付けます!・・・でも、引きこもりの私にとって、YouTubeは先生のようなものなのです・・・」
わかる、それ。
「・・・繭、僕も携帯電話、欲しい~!YouTube見たり、目覚ましかけたり、繭とラインしたい~」
契約して~、といきなり櫂がおねだりしてきた。あやかしは携帯が高価いと知らないのか。
「確か商店街の福引き、一等がアイフォンだったから!そろそろ一回引けそうだから明日当ててくる!」
あ、あ、あやかし~!!
お金を稼ぐ苦労を知らない奴め!と瞬間、憤ってしまったが、福引きで当ててもらわないと自分の懐が痛む、という事実に気付き、一気に鎮火した。
「ま、いいんじゃない?」
「わ、私も一緒に行ってもいいですか?すいませんすいません、お二人の邪魔は決してしません!座敷童子様の御力を目の当たりにしたいのです~!」
「うむ~。許可」
すっかり櫂に傾倒している美緒ちゃんだ。
翌日の午前中、買い出しも兼ねて近くの商店街に3人で赴いた。
櫂と外出は初めてだ。話しながら道を歩くが、確かに、櫂が見えてない人がほとんどでは?と思った。人通りなんてそんなでもないのに、結構な確率で櫂にぶつかろうとしてくる。櫂はふざけながらよっ、ほっ、と華麗にターンを決めながら避けているが。
「あ、あそこだよ。繭」
通りの真ん中の特設会場で福引きがやっていた。
千円で1枚、5枚で一回ガラポンくじが引けるらしい。ちゃんと毎日券を取っておいたんだな、と、櫂をいい子いい子と撫で回したくなった。
そして結果は、
「おめでとうございます!一等賞が出ました!」
デキレースなので、ちゃんと一等賞の金の玉が出た。ちなみにガラポンを回したのは、私と櫂の二人だ。見えていないと困るので。
「きゃあ!すごいです~!」
美緒ちゃんが大喜びしてくれた。
無事、携帯の契約が済み、私は自分名義の携帯がもう一つ増える事になった。
「では、私はこれで失礼します。櫂さん、流石でした!」
「うむ~」
偉そうにしてる櫂と、どこまで本気なのか、ははーっ、とへりくだる美緒ちゃんが可笑しい。だが、美緒ちゃんにいつもお夕飯をどうしているのかと尋ねると、しれっと「カップ麺です」と返ってきた。どうやら櫂が来る前の私とどっこいの食生活らしい。
今夜も一緒にお夕飯を食べようと誘った。
櫂と二人でのんびりとお夕飯の相談をしながら商店街を歩く。途中の公園の入口にクレープのキッチンカーが停まっていて、買い物の前に、早めのお昼にしようとなった。チョコバナナの甘いクレープと、ツナのおかずクレープを買う。飲み物は公園の自販機で紅茶を2本買い、二人でベンチに座った。
「それは、お昼ご飯になるの?」
「もちろん、なるよ。櫂が初めてお夕飯を作ってくれた日、あの日はアイスにしようと思っていたぐらいなのよ?」
「・・・アイスがお夕飯」
チョコバナナのクレープを食べる私に、甘いものがご飯の代わりになるのかと、櫂は不思議そうだった。
「は、はい。この結界は悪霊に向けた結界でした。すいませんすいません」
すごい会話だ。お夕飯を食べながらの会話とは思えない。
といっても、普通の家でお夕飯時にどんな会話がされているのか想像がつかない。いつも食事は一人だったから。食べながら、よくおばあちゃんちでの食事を思い出していたな。
あの夏、ご飯時の話題は、大体がおばあちゃんの作るご飯のことだった。
当時、スーパーのお惣菜がメインだった私には、おばあちゃんちの食卓に並ぶ料理のどれもがキラキラと輝いて見えたものだった。具だくさんの味噌汁とか、洗っただけのきゅうりと味噌、とかね。櫂と一緒に(当時はジローと呼んでいた)いっぱい食べたなあ。
櫂と結婚したら、あんな毎日を送るのかしら。
──あらでも、待って?今、まさに結婚生活に突入してない?これ。目の前の食卓には、キラキラ輝く手料理の数々があるのだ。あら?私、ここ最近、なんだかすごく幸せなのだけど。
──それはつまり、私は櫂を好・・・。かどうかは置いておいて、私の幸せが食卓の豊かさに直結している、ということなのかもしれない。
うーむ、残念だけど、貴文くんと結婚しても幸せにはなれなかった、ということに気付いてしまった。振られた時はショックだったけど、今ではそれで良かったのかもしれないな。貴文くんにとっても。だって私、料理できないもの。危険だから。
ほう、良かった良かった。
万事塞翁が馬、とはこのことだわ。
私が人生の大いなる謎を解き、その答えに納得しながらお夕飯を食べ進めている間、二人は結界の話で盛り上がっていた。というか、櫂が美緒ちゃんに講義をしていた。もちろん、私は怖い話はスルーだ。ホラーもスリラーもオカルトも苦手だ。なんなら、ここでそんな話をするな、と言いたい。
「──つまり、結界は、戦う意志があると見做されることもある、非常に危険な技でもあるんだよ。あと、YouTubeを信用しすぎるのは危険です」
「はい!座敷童子様!以後気を付けます!・・・でも、引きこもりの私にとって、YouTubeは先生のようなものなのです・・・」
わかる、それ。
「・・・繭、僕も携帯電話、欲しい~!YouTube見たり、目覚ましかけたり、繭とラインしたい~」
契約して~、といきなり櫂がおねだりしてきた。あやかしは携帯が高価いと知らないのか。
「確か商店街の福引き、一等がアイフォンだったから!そろそろ一回引けそうだから明日当ててくる!」
あ、あ、あやかし~!!
お金を稼ぐ苦労を知らない奴め!と瞬間、憤ってしまったが、福引きで当ててもらわないと自分の懐が痛む、という事実に気付き、一気に鎮火した。
「ま、いいんじゃない?」
「わ、私も一緒に行ってもいいですか?すいませんすいません、お二人の邪魔は決してしません!座敷童子様の御力を目の当たりにしたいのです~!」
「うむ~。許可」
すっかり櫂に傾倒している美緒ちゃんだ。
翌日の午前中、買い出しも兼ねて近くの商店街に3人で赴いた。
櫂と外出は初めてだ。話しながら道を歩くが、確かに、櫂が見えてない人がほとんどでは?と思った。人通りなんてそんなでもないのに、結構な確率で櫂にぶつかろうとしてくる。櫂はふざけながらよっ、ほっ、と華麗にターンを決めながら避けているが。
「あ、あそこだよ。繭」
通りの真ん中の特設会場で福引きがやっていた。
千円で1枚、5枚で一回ガラポンくじが引けるらしい。ちゃんと毎日券を取っておいたんだな、と、櫂をいい子いい子と撫で回したくなった。
そして結果は、
「おめでとうございます!一等賞が出ました!」
デキレースなので、ちゃんと一等賞の金の玉が出た。ちなみにガラポンを回したのは、私と櫂の二人だ。見えていないと困るので。
「きゃあ!すごいです~!」
美緒ちゃんが大喜びしてくれた。
無事、携帯の契約が済み、私は自分名義の携帯がもう一つ増える事になった。
「では、私はこれで失礼します。櫂さん、流石でした!」
「うむ~」
偉そうにしてる櫂と、どこまで本気なのか、ははーっ、とへりくだる美緒ちゃんが可笑しい。だが、美緒ちゃんにいつもお夕飯をどうしているのかと尋ねると、しれっと「カップ麺です」と返ってきた。どうやら櫂が来る前の私とどっこいの食生活らしい。
今夜も一緒にお夕飯を食べようと誘った。
櫂と二人でのんびりとお夕飯の相談をしながら商店街を歩く。途中の公園の入口にクレープのキッチンカーが停まっていて、買い物の前に、早めのお昼にしようとなった。チョコバナナの甘いクレープと、ツナのおかずクレープを買う。飲み物は公園の自販機で紅茶を2本買い、二人でベンチに座った。
「それは、お昼ご飯になるの?」
「もちろん、なるよ。櫂が初めてお夕飯を作ってくれた日、あの日はアイスにしようと思っていたぐらいなのよ?」
「・・・アイスがお夕飯」
チョコバナナのクレープを食べる私に、甘いものがご飯の代わりになるのかと、櫂は不思議そうだった。
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