《完結》天使ちゃん

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 「大天使ガブリエル!」

 「なんだ、貴様は。──悪魔か!」

 何やらすでに戦闘態勢に入った模様。

 「悪魔は全て排除する!」

 ガブリエルが問答無用で腰に佩いた剣を抜きざま、イーサンに向けて一閃させた。

 「イーサン!!」

 閃光が収まり、炭化したイーサンが!!と思ったら、イーサンは普通にひょうひょうとその場に立っていた。
 ガブリエルに向けた手には、羽根ペンが握られている。
 悪魔仕様なのか黒い羽根ペンだ。そこから結界が放たれ、盾のようにイーサンを守っていた。と同時に後ろにいる僕も守られ無事だった。ふう。
 しかしガブリエルの攻撃を躱すとは、すごい武器だな羽根ペン。
 ん?なぜに羽根ペン?

 「全く。天使というのはいつでも攻撃的なんだな」

 イーサンの表情は穏やかだが、長くたなびく漆黒の髪と、大きく広げられた漆黒の6枚羽根がイーサンをまるで魔王のように見せている。

 魔王対魔王。

 「私の攻撃を避けたか。──その6枚羽根、貴様、もしや高位の悪魔か?」

 「いいや。ただの平民だ。大天使ガブリエル、私は不要な争いをするつもりはない。
 お前が虐げていた魔獣を手放すというならこの場は引こう。そして、欲と野望の渦巻くこの城は私の気に入りの狩り場であったが、望むならここにももう来ないと約束しよう」

 「私が虐げていた魔獣・・?」

 それって僕のこと?
 あ、もしかして今が出て行くタイミングかも。
 僕は一生懸命素早く羽根を動かした。
 なんとかこの場を平和的に収めなければ。

 「なんのことだ?」

 「お前が”天使ちゃん”と呼んでいる者のことだ」

 ピシリ、とその場の空気が凍り、ガブリエルが再び戦闘態勢に!
 待って待って~。
 ふよふよふよ。

 「なぜ貴様が天使ちゃんを知っている?もしや天使ちゃんを拐ったのか?
 だとしたら万死に値する!!」

 「ガブリエル!・・さまぁ」

 おっと、何も思い出していない頃の自分の言動はどうだったっけ。
 とにかく、大声でガブリエルの名を呼んだ。
 距離的にはようやくイーサンの辺りまでたどり着いたところだ。

 「天使ちゃん!!」

 気付いたガブリエルが両手を広げる。その胸に飛び込もうとふよふよ進んでいたら、がしりと捕まった。

 「・・・イーサン」

 「テン、待っていろと言っただろう?」
 
 「あ、僕、ガブリエル、様にただいまを言おうと・・」

 「そんな必要はないよ。もうテンはうちの子なんだから」

 にっこり微笑むイーサン。
 背筋が凍えるほど怖い。

 「貴様、何をふざけたことを言ってる。天使ちゃんを離せ!さもなくば死だ!」

 再び剣を構えるガブリエル。
 ちなみに、抱っこされてた子豚ちゃんはイーサンと対峙した時点で床に降ろされ、今は兵士に抱えられ部屋の隅に避難している。ピスピスと鼻を鳴らし怯えてる姿はとても可愛い。

 「どうやら話し合いは決裂したようだ。ならばこちらも命を取りに行く!」

 イーサンは僕を左腕で立て抱っこしたまま羽根ペンを構えた。
 やっぱり武器は羽根ペンなのか。

 「ま、待って、待って!えーと、僕の意見は聞かないの?」

 はた、と二人の動きが止まる。

 「「・・意見?」」

 どうやら二人には僕が思考する生き物だという認識がないらしい。
 ふよー、とイーサンの腕から抜け出すとイーサンが慌てた。

 「もちろんテンの意見もちゃんと聞くつもりだったよ?なのにあいつが短気で」

 「な!何を言うか!天使ちゃん!私は、いつだって天使ちゃんを尊重している!」

 二人の真ん中あたりをふよふよと漂い交互に二人に視線を送る。

 「ここで二人が戦えば無関係の人々が傷ついてしまう。僕は、そんなことも考えられない自分勝手な奴は嫌いだ!」

 「「ぐ!」」

 二人ともダメージを耐えるように胸を押さえた。
 僕はふよふよとガブリエルの元へ行き、ミスリルの鎧を纏った胸元に抱きついた。

 「ガブリエル、様。昨夜は帰れなくて、いっぱい心配かけて、ごめんなさい」

 「天使ちゃん!本当に、本当に心配したよ!神に、天使ちゃんを捜すように嘆願したら一晩待てと言われたのだ!信じられるか!?一晩だと!その時私は、いつか策を練り、私に吐いたその言葉を後悔させてやるとこの胸に誓ったのだ!」

 怖っ!!執念深っ!!
 大天使が神にそんなこと誓うな!

 「ぼ、僕、ちゃんと神様が言ったとおりに一晩で戻ってきたよ?わ、わあ、神様すごいね!神様になにかしちゃヤダよ?」

 「そうだな。しかし天使ちゃんを拐ったあいつは許せん。二度とそんなことのできないように塵にする」

 「っガブリエル!、様、怖い!いやっ!!」

 秘技、駄々っ子だ。

 「僕はいつもの優しいガブリエル様が大好きなの」

 胸元から見上げると、ガブリエルの顔面がでろんと崩れた。
 
 「わかったよ、天使ちゃん。あの悪魔は捨て置こう。さ、一緒に天界に帰ろう」

 「うん」

 こっちはこれでオッケーだ。

 「待て、テン。騙されるな。そいつに付いていけばまた虐げられる日々が始まるんだぞ」
 
 「や、」

 次はイーサンに魔界へお引き取り頂こうと思っていたら、痺れを切らしたイーサンの口撃が始まってしまった。

 「誰が虐げているというんだ。人聞きの悪いことを言うのはやめてもらおうか」

 「テンにきのこ摘みを命じただろうが!」

 「きのこ摘みの何が虐げているというのだ。しかも天使ちゃんをテンなどと呼ぶのはやめろ!」

 ──くそう、私も呼びたい。
 ガブリエルの小さなうめき声が耳に届いた。
 いやいや、テンってダサいから!
 
 
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