おっさんは異世界で焼肉屋する?ー焼肉GOD

ちょせ

文字の大きさ
85 / 171

飲食店主人の帰還願望

しおりを挟む
ほんとうにしばらくの間、ショウヘイは焼肉ゴッドに通い詰めていた

目的はミナリだと、周囲どころか本人も勘違いしていたが、そのショウヘイは恋心というよりも、望郷の念を募らせていただけに過ぎなかったのだ


この世界にショウヘイが来て4年目になる

その当時24歳だった彼ももう28歳になっている


焼肉ゴッドでの何気ない会話が、その念を募らせる

「ミナリさんは教師をされていたんですね」

「そーよ。でも田舎の体育教師だけどね。ショウヘイさんは何をしていたの?」

「僕はただのサラリーマンですよ。地方の三流、いや四流企業の小さな会社でサラリーマンしてました」

「へーショウヘイさんサラリーマンだったんですか。」

「あ、ユキちゃん。そうさ、サラリーマンしてたんだ。この世界に来るまではね」

そんな何でもない日本の会話がショウヘイの心にユキやミナリとの会話からどんどんと



望郷の念が募っていった





そしてショウヘイが焼肉ゴッドから足が遠のいていったある日のこと


「なぁナート、俺・・・日本に帰りたいんだって言ったらどうする?」

それはなんの気ない会話だった

「え?ショウヘイさんどこです?にほん?」

「ああ、実は俺・・この世界の人間じゃないんだ。別の世界、そう地球という惑星の日本と言う国から来たんだ」

ショウヘイは打ち明けるー
今まで誰にも、そう、誰一人として話したことのない秘密を

「え!?そうなんですかー。どんなとこだったんですか?」

ナートは思わず、そう切り返した
自身は元の世界で勇者をしていたから、ショウヘイはどうだったのか気になったのだ

「ナート、信じるのか?」

「いや、だってまぁ・・・」

私も異世界から来ているのだから・・・とはまだ言ってない

「まぁいいか。それでだ、最近俺は日本に帰りたいと思うようになってきた。だけれども、帰る方法が分からない・・・やはり帰るための手がかりはダンジョンにあるのだろうかと思ってね」

答えはそこにある・・

だが正解は一つではないとショウヘイは考える

「でも・・・無理だよなぁ・・・120層到達までの冒険者の話ではそんな異世界に行ける方法なんてないし」

机の上に置かれたコップには、最近流行り始めたコーヒーがある

ある冒険者がダンジョン内でみつけ、そして飲み始めたらしいということはショウヘイは知っている

そして

そんな豆を、ちゃんと飲めるように挽いたり焙煎などをしているという点からこの世界にない知識の持ち主であるとおおよその予想も出来ていた

つまり、冒険者の中には異世界(日本)から来たものが多数いると言うことだ

そういえばダイダロスにはプリンやケーキもあったしな

およそこの世界に似つかわしくないスイーツは彼に少なくない動揺を与えた
思えばそのころから帰ることを、無意識に考えていたのかもしれない

でもー

帰ってどうするんだ?

確かに・・・・向こうにいる家族は気にならないといえば嘘になる

ただ・・・仕事はどうする?

あれから4年だ、もしも時間の流れが違うとしても少なくない時間は経っているだろうし
ショウヘイ自身も年を重ねている

今現状、こちらでの立場は責任のあるものだ
飲食店だけではない。商人ギルドの長でもある居なくなればそれこそ混乱を招くだろう

「ショウヘイさん、考えても仕方ないよー。帰る方法なんて、それこそ大魔法とかの類か、奇跡ーしかないんじゃないかなぁ」

ナートは、ショウヘイが今にも居なくなりそうな気がして思わず、帰れない理由の念押しの様な事を言ってしまう

「・・・ッ!」

ショウヘイは、考えてはいたが現実的でないその言葉を言われてほんの少し、イラっとしてしまう
その表情を見て慌ててナートはさらに言葉を重ねる

「ええっと、いやダンジョン120層の冒険者にも聞いたんでしょ?でも、可能性がその先にないとは限らないし・・・」


「いや、いいよナート。すまないが一人にしてくれないか」


ナートにくるりと背を向け、ショウヘイはそう言った
後味の悪い、空気がそこに残ったままナートは事務所から出ていった









はぁ、とため息をついてからソシアは言った

「ばかね、あんた・・・そんな事言ったの?」


「だってソシア・・・ショウヘイさんが苦しそうだったから・・・」


はぁ、とまたため息をついてソシアは考える

確かに、ここ数日のショウヘイの様子はおかしい
気づいてはいた。その理由まではわからなかったのだけれど今のナートの話でわかった

帰りたいと・・強く願い始めている

ナートとソシアの封印をもう一度解けば、送り返せるだけの力はあるだろう。
これでも神に縁のある二人だ間違いなく世界を渡れる


だけどそれは下手をすれば永遠の別れになってしまう

でも、それでももしショウヘイに懇願されればソシアはきっと願いを聞き入れてしまうだろう

ナートには申し訳ないけど、それこそが彼の願いであれば・・・


「あのね、ソシア・・・私、ショウヘイを送り返してあげたいんだ。私たちの力ならそれができると思うし」

「ナート!あんた!!」


「ご、ごめんソシア。でもショウヘイさんがソレを望むなら私はー」

涙を流しながらナートは・・ソシアに訴える

ナートを、そっと・・ソシアは抱きしめて

「そうね、私もそう思ってた。ふふ・・・やっぱり私たちは似ているのよね。同じこと考えているなんて」

「ソシア・・・じゃあ・・」

「ええ、でもまだ駄目よ。彼が、本当に帰りたいと願ったなら・・でしょう?まだショウヘイさんは悩んでいるのだから、結論はでていないわ。出たのは、私たちは彼の願いを叶える力があるし想いも同じってことだけ」

「そうだよね、いきなり帰れますって言われてももっと悩んじゃうだけだよね」

「そう言うことね」

二人はギュっとお互いを抱きしめながら、お互いの想いをそっと胸にしまい込んだ


そして事件は起こる

二人の想いとは裏腹に


翌朝、ナートとソシアがいつもの様に事務所に入っていく
いつもなら先にショウヘイがいて、二人におはようと投げかけてくれるのだが

「おっはよぉございまーす」
「おはようございます」

いつものように、二人は挨拶をするがそこに帰ってくる言葉はない

「あれ?ショウヘイさんいない?トイレかなー」

そういってナートはトイレに探しに向かう
トイレにまで押しかける気だ

だが落ち着いていつソシアはゆっくりとショウヘイの事務机に向かうとそこに一枚の書置きがあった



「国に帰りたい」



そう書いてあった



ショウヘイはいずこともなく、ナートとソシアにも一言もなく


消えた




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安
ファンタジー
ごく普通のフリーター・岩倉運命は謎の少年に刺され、命を落としてしまう。そんな岩倉運命だったが、サダメ・レールステンとして転生を果たす…

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

処理中です...