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偽りの国 4
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太古の昔からあるその島の名前は日本と言った
当然、カンザキの生まれ育った日本ではない。
だがそこは、確かに日本・・・だったのだろう
転送陣を使用すると、そこも洞窟のような所だった
カンザキとナートはぬるりと苔の生えた、湿った足場を転ばないよう注意しながらわずかな光のある方へ向かう
「ん?なんだこりゃ?木の板で蓋がしてあるのか?」
おそらくは出口なのだが、そこにはきれいに木の板がはめ込んである。
それをゆっくり、ずらすように開けてやると太陽の光がまぶしく差し込んだ
「うわっ。まぶしー!」
ナートが思わず悲鳴をあげる
「いきなり明るいところに出たからなー」
カンザキとナートはそのまま外に出てみるとそこは山の中腹あたりだった
そしてそこから見える景色に、カンザキは絶句する
そして考えるよりも早く走り出していた
「ちょー!カンザキさんどうしたのー!まってー」
あわててナートもついてくるが、カンザキは走るのを緩めない
だというのに邪魔になって来る木の枝一本すら折らずに駆け降りる
あっという間に、山から下ってその景色の場所を確かめた
「これ・・は・・・水田・・・だと・・稲作か・・・」
追いついてきたナートは木の枝や葉、蜘蛛の巣にまみれている
それを払いながら言った
嫌そうにそれを取り払いながら
「ああ、もうっ…はい?何言ってるんです?」
そこにはもうすでに頭を垂れさせた稲があった
まるで黄金の草原という言葉がふさわしいその景色はかつてカンザキが日本でみたそれそのものだった
「だが・・味は・・」
カンザキはその稲穂を、数本拝借する
そして簡単に、脱穀し、魔力で水分を軽く飛ばしてから鍋に入れて煮立ちさせてやる
「あ、いい匂い」
ヨダレを垂らしたナートが横にすわって一緒に鍋を見る
そしてー
軽く蒸し、その場で炊き上げた米をカンザキはひとすくい口に放り込んだ
もぐもぐ・・・
「美味い・・・な・・・」
率直な感想である
カンザキはダンジョン内で米は見つけている
だが、売るには少ないその米は味もさほど美味いといえるものではなかったのだ
しかしこれは
「旨すぎる」
まるで日本で食べていた味そのものだ
思わず、目がウルっとしてしまう
やはり故郷の味というのは忘れられないものだったんだなと改めて感じる
そして、それ以上にこの世界でまだまだ食べてない旨いものがあるんじゃないかと・・・思った
「おー!おいしいこれ、甘いねー」
見るとナートも一口、いや、今炊き上げた白米を全て平らげていたとこだった
「あー!俺ももうちょい食べたかったのに!!」
一口に時間をかけすぎたか!
ナートに残り全て食われてしまった
「ありゃ、こめんなさいカンザキさん・・・」
ナートは目をウルウルさせてカンザキに謝るのだが
「おまえ頬っぺたに米粒付けたままそれやってもなぁ」
カンザキはひょいと米粒を取ってぱくりと食べる
しかし、こりゃ、予想外に・・効くなぁこの味は・・。
涙が溢れる・・その時だった
ガラガラと二人の下へ馬車が向かってくる
大きな馬に引かれているのは車輪つきの荷台だ
そして馬の上には一人の青年が居た
「おお?お前ぇさんらどっからきたんだ?って、そっちのあんちゃんは日本人か?」
彼は、タバコを吹かしながらカンザキとナートを見る
馬車を止めると、彼はスタリと降り立つ
身長はカンザキよりやや低いくらい。顔はこれでもかというくらいの美形で、黒髪がサラサラと揺れている
顔だけ見れば女性と勘違いしそうだがその体は筋肉質で男とわかる
「ふー、あんちゃんはじめて見る顔だなー」
「ああ、すみません。こちらの稲はあなたが作っておられるのですか?」
カンザキは勝手に食べた事を謝罪しつつ、ぱっと見年下の相手に敬語を使う
それはきっと、生産者の彼を一目で尊敬してしまったからだろう
「ああ、そうだー。こっちのはソラノヒカリって名前の米だ。品種改良してる。日本米になるべく近づけようとがんばって15年ようやくココまでの味になったんさ」
にやりと、彼は笑って
「あんちゃん名前はなんていうんだ?オレの名前はキヨマサってんだ」
カンザキは思わず背筋を伸ばし、今までになくしゃきっとした態度で
「か、カンザキと言います!品種改良までされたのですか?それはすごいですね」
「あー最初はな、苦労したんさ。古代米っつーか、それがここには自生してたんだがあんまりいい味じゃなくてなぁ・・でもま、ここ数年で劇的に味は上がったんさ」
「へえ、それは品種改良が上手くいったので?」
「んや、スキルってやつさー」
スキル?・・・
カンザキはちょっとだけ拍子抜けした。
地道な掛け合わせで作られたものではないと言われたからかもしれない
だが、キヨマサの品種改良は確かにスキルでーだということだが、育てる行程はきちんと行われていた
無農薬農法のため、虫は害獣への対策も大変だったそうだ。
そして、そのスキルというものが何なのかを聞く前に、うちの村にこないかと誘われて連れてこられた
その道中も、
「これがもち米、そっちが麦だ。大豆と小豆はその山の辺だなぁー」
「おおおおおお!!!!豆腐に、餡子もいける!」
カンザキは驚愕しまくって、あっと言う間に村に着いてしまった
その間ナートは
「何がそんなにおもしろいのかなぁー」
と、呆れて空を眺めていた
そして一歩、その村に足を踏み入れると
そこはまるで弥生時代かというほどの・・木と藁で出来た住居があった
そしてそこから出てきたのは
「おかえりなさいそんちょー!!」
「そんちょーおかえりー!」
ちいさな、獣人達だった
そのなかでひときわ大きく美しい金色の毛並の獣人が、すっと前にでてきて
「お帰りなさい村長、そちらの方は?」
「ああ、ちょっと田んぼで拾ったんだ。うちまで案内してやってくれ。オレは片付けてからいくわー」
そう言うと
「はい、わかりました。それではお客様、こちらへ」
カンザキとナートは案内されるまま後ろを付いて行く
「獣人って、こんなにいたのねー」
ナートがつぶやく
「どういうことだ?どこにでもいるんじゃないのか?」
「ほら、ちょっと違うでしょー。ウルグインには獣の耳とか尻尾つけた亜人はいるけど、この人たちは獣人」
うーん。よくわからん。あれか?毛深いとかどーとか言う事か?
まぁうしろかみるとあの耳がピクピク動く仕草とか可愛く見えるけどな
そういえばキトラ最近見てないな
ダンジョンにシルメリアともぐったままだからなぁ・・
「どうぞ、こちらでお待ちください」
通されたそこは、他の藁の家と違い古い木造建築だった
まるで江戸時代くらいまで時代が進んだような錯覚を覚える
ふすまとか瓦とかもちゃんとあるのだ
そして囲炉裏の前にいくと・・一人の女性が寝転がっている
すーすーと寝息をたてているので、起こさないようそっと座ってキヨマサを待っていると、ばたーん!という音と共に帰ってきた
「いやーすまんすまん。またせたの」
あたまをぽりぽりと掻きながらキヨマサはどしりと座る
どうも見た目が10代にしか見えないためかれのおおざっぱな性格とあわさって変な違和感を覚える
「いえ、さほどまってませんよ」
「そか、それならええ。おーい!たのむわー!」
そうキヨマサが言うと、後ろのふすまがスッとあいて先ほどとは違うエプロンをした獣人がお膳を持ってくる
そのメニューは
白米、お味噌汁、お漬物・・あとは豆腐に芋の煮付けだった
ごくりとカンザキの喉が鳴る
「とりあえず、こんなものだが食べてやってくれ。おっと、醤油はその小瓶だ」
そういわれるなりカンザキは箸をにぎりしめて、プルプルと震える箸先をなんとか抑えて
ぱくり
と、大きな口を空けて食べる
この・・味だ・・・
かつて、日本で食べた白米そのものだ。
先ほど盗み食いしたものとは比べ物にならないほどそれは美味しかった
そして、味噌汁をずず・・と吸い、醤油を垂らした豆腐をすっと切って口へ運ぶ
ごくりと飲み込んで
「まるで、ここが日本じゃないかと・・そんな錯覚に陥ります」
カンザキはしんみりと、そう言った
「ああ、それもいいかもしれんよ。獣人だって付き合ってればその心根は人間とかわらんしさ、それにその米や大豆もあいつらとオレが一緒に作ってるんだ」
「なるほど・・・」
カンザキは関心する。彼は日本人であると、だがそれと同時にふとした疑問も沸いてくる
なぜ彼はそう、ここまで穏やかに異世界で暮らしていけているのか?
獣人の助けがあったからか?
なぜ彼は・・
異世界で冒険を拒否しているのか?
いや、そうとは限らないか。生き方はそれぞれだ。
カンザキだってウルグインで焼肉屋なんて始めてしまっていた
「で、おめぇさんらはどうするんだ?」
「どうするって?」
「あれだよ、ヒミコについて帰るのか?」
「ヒミコ?」
カンザキとナートは怪訝な顔をする
「なんだ、知らないのか?おかしいな・・この島の反対側にある街から来たんじゃないのか?」
キヨマサの話はこうだ
この島の反対側にはヒミコという女王が支配する街がある
そしてこの村、テサ村というらしいがここはそのヒミコの街の食料庫だと。
故にあの一面の田畑があるのだと
「この村にいる人数じゃ食いきれねぇだろあんなにいっぱい」
そうキヨマサは笑いながら言った
そして彼の言った帰るとはー
「ショウヘイってのがこの間から来てるんだが、ソイツのスキルが異世界転移なんだと」
はー?
カンザキとナートが顔を見合わせる
ショウヘイにそんなスキルなんてあったか?
そう、ショウヘイにもしもそんなスキルなんてわけのわからないものがあればきっともっと前に日本に帰っているはずだ
「オレもよ、日本に帰ろうって誘われたんだが・・この顔っつうか、この姿で帰るのはなぁ・・」
そう彼の言った意味はー後に分かることになる
そしてそれよりも
「ふにゃ!?ごはんのにおい!」
がばっと寝ていた女性が起き上がる
その頭には猫耳がついていてーあれ?見覚えがある耳だな・・・
「って!みにゅう!?」
「あれ?どしてカンザキこんなとこにいんの?」
それはこっちのセリフだ!
「あー、あれ?そっちの娘なんか見たことあるけどだれだったっけ・・よく覚えてないなぁ」
そしてナートがカンザキに問いかける
「この方はどなたなんですかー?なんか・・変な気配なんですけど」
キヨマサは眼をぱちくりとさせて
「なんじゃ、カンザキこの人と知り合いなんか?それだったらちょうどええ、連れて帰ってくれんか・・働きもせんのにもう1ヶ月もここにおるんだわ。飯だけは良く食う奴でのー」
なんだそのぐうたらぶりは・・さすがはみにゅうか・・
「えーだってご飯美味しいんだもん」
そういう理由で居座ってんの!?近くに探し人がいるとかじゃなくて?!
「ひどいやつだなお前・・・」
カンザキは呆れた目でみにゅうを見ていると、あたふたと慌てだして
「い、いやぁそういう理由だけじゃないんだよー。ちょっとルールやぶりそうな雰囲気があるから見張ってたんだよ」
そう取り繕うように、言った後で
あっという顔をして自分の手で口をふさいだ
あーなんか怪しいぞこれ。ルール、ね
「どういうことか、聞かせてもらおうかな」
カンザキはそろそろ、店に帰りたいと思っていた頃だった
多少の焦りがなかったとはうそになる
さっさとショウヘイを探し出して連れ帰るのが楽になるのであれば
女神だって利用してやろうと、つい思ってしまうのだった
当然、カンザキの生まれ育った日本ではない。
だがそこは、確かに日本・・・だったのだろう
転送陣を使用すると、そこも洞窟のような所だった
カンザキとナートはぬるりと苔の生えた、湿った足場を転ばないよう注意しながらわずかな光のある方へ向かう
「ん?なんだこりゃ?木の板で蓋がしてあるのか?」
おそらくは出口なのだが、そこにはきれいに木の板がはめ込んである。
それをゆっくり、ずらすように開けてやると太陽の光がまぶしく差し込んだ
「うわっ。まぶしー!」
ナートが思わず悲鳴をあげる
「いきなり明るいところに出たからなー」
カンザキとナートはそのまま外に出てみるとそこは山の中腹あたりだった
そしてそこから見える景色に、カンザキは絶句する
そして考えるよりも早く走り出していた
「ちょー!カンザキさんどうしたのー!まってー」
あわててナートもついてくるが、カンザキは走るのを緩めない
だというのに邪魔になって来る木の枝一本すら折らずに駆け降りる
あっという間に、山から下ってその景色の場所を確かめた
「これ・・は・・・水田・・・だと・・稲作か・・・」
追いついてきたナートは木の枝や葉、蜘蛛の巣にまみれている
それを払いながら言った
嫌そうにそれを取り払いながら
「ああ、もうっ…はい?何言ってるんです?」
そこにはもうすでに頭を垂れさせた稲があった
まるで黄金の草原という言葉がふさわしいその景色はかつてカンザキが日本でみたそれそのものだった
「だが・・味は・・」
カンザキはその稲穂を、数本拝借する
そして簡単に、脱穀し、魔力で水分を軽く飛ばしてから鍋に入れて煮立ちさせてやる
「あ、いい匂い」
ヨダレを垂らしたナートが横にすわって一緒に鍋を見る
そしてー
軽く蒸し、その場で炊き上げた米をカンザキはひとすくい口に放り込んだ
もぐもぐ・・・
「美味い・・・な・・・」
率直な感想である
カンザキはダンジョン内で米は見つけている
だが、売るには少ないその米は味もさほど美味いといえるものではなかったのだ
しかしこれは
「旨すぎる」
まるで日本で食べていた味そのものだ
思わず、目がウルっとしてしまう
やはり故郷の味というのは忘れられないものだったんだなと改めて感じる
そして、それ以上にこの世界でまだまだ食べてない旨いものがあるんじゃないかと・・・思った
「おー!おいしいこれ、甘いねー」
見るとナートも一口、いや、今炊き上げた白米を全て平らげていたとこだった
「あー!俺ももうちょい食べたかったのに!!」
一口に時間をかけすぎたか!
ナートに残り全て食われてしまった
「ありゃ、こめんなさいカンザキさん・・・」
ナートは目をウルウルさせてカンザキに謝るのだが
「おまえ頬っぺたに米粒付けたままそれやってもなぁ」
カンザキはひょいと米粒を取ってぱくりと食べる
しかし、こりゃ、予想外に・・効くなぁこの味は・・。
涙が溢れる・・その時だった
ガラガラと二人の下へ馬車が向かってくる
大きな馬に引かれているのは車輪つきの荷台だ
そして馬の上には一人の青年が居た
「おお?お前ぇさんらどっからきたんだ?って、そっちのあんちゃんは日本人か?」
彼は、タバコを吹かしながらカンザキとナートを見る
馬車を止めると、彼はスタリと降り立つ
身長はカンザキよりやや低いくらい。顔はこれでもかというくらいの美形で、黒髪がサラサラと揺れている
顔だけ見れば女性と勘違いしそうだがその体は筋肉質で男とわかる
「ふー、あんちゃんはじめて見る顔だなー」
「ああ、すみません。こちらの稲はあなたが作っておられるのですか?」
カンザキは勝手に食べた事を謝罪しつつ、ぱっと見年下の相手に敬語を使う
それはきっと、生産者の彼を一目で尊敬してしまったからだろう
「ああ、そうだー。こっちのはソラノヒカリって名前の米だ。品種改良してる。日本米になるべく近づけようとがんばって15年ようやくココまでの味になったんさ」
にやりと、彼は笑って
「あんちゃん名前はなんていうんだ?オレの名前はキヨマサってんだ」
カンザキは思わず背筋を伸ばし、今までになくしゃきっとした態度で
「か、カンザキと言います!品種改良までされたのですか?それはすごいですね」
「あー最初はな、苦労したんさ。古代米っつーか、それがここには自生してたんだがあんまりいい味じゃなくてなぁ・・でもま、ここ数年で劇的に味は上がったんさ」
「へえ、それは品種改良が上手くいったので?」
「んや、スキルってやつさー」
スキル?・・・
カンザキはちょっとだけ拍子抜けした。
地道な掛け合わせで作られたものではないと言われたからかもしれない
だが、キヨマサの品種改良は確かにスキルでーだということだが、育てる行程はきちんと行われていた
無農薬農法のため、虫は害獣への対策も大変だったそうだ。
そして、そのスキルというものが何なのかを聞く前に、うちの村にこないかと誘われて連れてこられた
その道中も、
「これがもち米、そっちが麦だ。大豆と小豆はその山の辺だなぁー」
「おおおおおお!!!!豆腐に、餡子もいける!」
カンザキは驚愕しまくって、あっと言う間に村に着いてしまった
その間ナートは
「何がそんなにおもしろいのかなぁー」
と、呆れて空を眺めていた
そして一歩、その村に足を踏み入れると
そこはまるで弥生時代かというほどの・・木と藁で出来た住居があった
そしてそこから出てきたのは
「おかえりなさいそんちょー!!」
「そんちょーおかえりー!」
ちいさな、獣人達だった
そのなかでひときわ大きく美しい金色の毛並の獣人が、すっと前にでてきて
「お帰りなさい村長、そちらの方は?」
「ああ、ちょっと田んぼで拾ったんだ。うちまで案内してやってくれ。オレは片付けてからいくわー」
そう言うと
「はい、わかりました。それではお客様、こちらへ」
カンザキとナートは案内されるまま後ろを付いて行く
「獣人って、こんなにいたのねー」
ナートがつぶやく
「どういうことだ?どこにでもいるんじゃないのか?」
「ほら、ちょっと違うでしょー。ウルグインには獣の耳とか尻尾つけた亜人はいるけど、この人たちは獣人」
うーん。よくわからん。あれか?毛深いとかどーとか言う事か?
まぁうしろかみるとあの耳がピクピク動く仕草とか可愛く見えるけどな
そういえばキトラ最近見てないな
ダンジョンにシルメリアともぐったままだからなぁ・・
「どうぞ、こちらでお待ちください」
通されたそこは、他の藁の家と違い古い木造建築だった
まるで江戸時代くらいまで時代が進んだような錯覚を覚える
ふすまとか瓦とかもちゃんとあるのだ
そして囲炉裏の前にいくと・・一人の女性が寝転がっている
すーすーと寝息をたてているので、起こさないようそっと座ってキヨマサを待っていると、ばたーん!という音と共に帰ってきた
「いやーすまんすまん。またせたの」
あたまをぽりぽりと掻きながらキヨマサはどしりと座る
どうも見た目が10代にしか見えないためかれのおおざっぱな性格とあわさって変な違和感を覚える
「いえ、さほどまってませんよ」
「そか、それならええ。おーい!たのむわー!」
そうキヨマサが言うと、後ろのふすまがスッとあいて先ほどとは違うエプロンをした獣人がお膳を持ってくる
そのメニューは
白米、お味噌汁、お漬物・・あとは豆腐に芋の煮付けだった
ごくりとカンザキの喉が鳴る
「とりあえず、こんなものだが食べてやってくれ。おっと、醤油はその小瓶だ」
そういわれるなりカンザキは箸をにぎりしめて、プルプルと震える箸先をなんとか抑えて
ぱくり
と、大きな口を空けて食べる
この・・味だ・・・
かつて、日本で食べた白米そのものだ。
先ほど盗み食いしたものとは比べ物にならないほどそれは美味しかった
そして、味噌汁をずず・・と吸い、醤油を垂らした豆腐をすっと切って口へ運ぶ
ごくりと飲み込んで
「まるで、ここが日本じゃないかと・・そんな錯覚に陥ります」
カンザキはしんみりと、そう言った
「ああ、それもいいかもしれんよ。獣人だって付き合ってればその心根は人間とかわらんしさ、それにその米や大豆もあいつらとオレが一緒に作ってるんだ」
「なるほど・・・」
カンザキは関心する。彼は日本人であると、だがそれと同時にふとした疑問も沸いてくる
なぜ彼はそう、ここまで穏やかに異世界で暮らしていけているのか?
獣人の助けがあったからか?
なぜ彼は・・
異世界で冒険を拒否しているのか?
いや、そうとは限らないか。生き方はそれぞれだ。
カンザキだってウルグインで焼肉屋なんて始めてしまっていた
「で、おめぇさんらはどうするんだ?」
「どうするって?」
「あれだよ、ヒミコについて帰るのか?」
「ヒミコ?」
カンザキとナートは怪訝な顔をする
「なんだ、知らないのか?おかしいな・・この島の反対側にある街から来たんじゃないのか?」
キヨマサの話はこうだ
この島の反対側にはヒミコという女王が支配する街がある
そしてこの村、テサ村というらしいがここはそのヒミコの街の食料庫だと。
故にあの一面の田畑があるのだと
「この村にいる人数じゃ食いきれねぇだろあんなにいっぱい」
そうキヨマサは笑いながら言った
そして彼の言った帰るとはー
「ショウヘイってのがこの間から来てるんだが、ソイツのスキルが異世界転移なんだと」
はー?
カンザキとナートが顔を見合わせる
ショウヘイにそんなスキルなんてあったか?
そう、ショウヘイにもしもそんなスキルなんてわけのわからないものがあればきっともっと前に日本に帰っているはずだ
「オレもよ、日本に帰ろうって誘われたんだが・・この顔っつうか、この姿で帰るのはなぁ・・」
そう彼の言った意味はー後に分かることになる
そしてそれよりも
「ふにゃ!?ごはんのにおい!」
がばっと寝ていた女性が起き上がる
その頭には猫耳がついていてーあれ?見覚えがある耳だな・・・
「って!みにゅう!?」
「あれ?どしてカンザキこんなとこにいんの?」
それはこっちのセリフだ!
「あー、あれ?そっちの娘なんか見たことあるけどだれだったっけ・・よく覚えてないなぁ」
そしてナートがカンザキに問いかける
「この方はどなたなんですかー?なんか・・変な気配なんですけど」
キヨマサは眼をぱちくりとさせて
「なんじゃ、カンザキこの人と知り合いなんか?それだったらちょうどええ、連れて帰ってくれんか・・働きもせんのにもう1ヶ月もここにおるんだわ。飯だけは良く食う奴でのー」
なんだそのぐうたらぶりは・・さすがはみにゅうか・・
「えーだってご飯美味しいんだもん」
そういう理由で居座ってんの!?近くに探し人がいるとかじゃなくて?!
「ひどいやつだなお前・・・」
カンザキは呆れた目でみにゅうを見ていると、あたふたと慌てだして
「い、いやぁそういう理由だけじゃないんだよー。ちょっとルールやぶりそうな雰囲気があるから見張ってたんだよ」
そう取り繕うように、言った後で
あっという顔をして自分の手で口をふさいだ
あーなんか怪しいぞこれ。ルール、ね
「どういうことか、聞かせてもらおうかな」
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