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世界喰い
しおりを挟むカンザキは世界樹の種となる、虹の実を3つほど腰に付けている魔法の袋に詰め込むと自室を出る
そして1階に降りると、閉店したままの店内に出た
いつの間にかシアはどこかに行ったようだった
もしかしたらミナリと飲みにでも出たのかもしれないと、カンザキは考えながら店内を通り抜けて外に出と、そのまま街の外へ向けて歩き出した
◇
さて、カンザキがエイランと飛び出したあとミタニは一度城へと戻って元よりの目的の交流を話し合う
そこにはウルグインの王へと舞い戻っていたアイエテスが居て、面会予定であったキャサリンの姿もあった
それと、エルマと言う女の子が1人居たのだがまるで親子のようだと思った
ミタニは公務の間を縫って、猫さんの店へと舞い戻る
ふと、思ったことがあったのだ
猫さんから聞かされたエイランのことである。
その目的は世界樹の復活だという話だった。ダンジョンのどこかにあるという世界樹を見つけ、苗木を手に入れることがらしいが
そもそもカンザキはずいぶん以前から世界樹と関りがあったという。だからこそ、今回あのAIルーンとも呼ぶべき物を復活させる協力をするのだとか
それにはエイランの大切にしているものを使う必要があるが、それ以上に苗木を求めているらしいー
「ってのはわかったんだけどさ、そもそものその世界樹がなんで枯れた?か、無くなった理由が分かんないとまた失敗するんじゃないのかなー?」
ミタニは店に入るなりそう叫んだ
気持ち良さそうにカウンターの上に設置されたカゴの中で丸まって寝ていた猫さんは耳をピクリとさせて頭を持ち上げて大きく口を開けてあくびした
「確かに世界樹について、ダイダロスにも残された資料があったし、なんなら枝葉は実物がありました。でもですよ、その世界樹が無くなった理由については、全く、一切合切その全てが、文献も口伝もなんもかも無いんですよ!私がお世話になったエルフの村ですら何も知らない。あの寿命が長いエルフですら、ですよぉ」
「よく調べたんにゃぁ」
欠伸をもう一度してから、猫さんは言う
「エイランもその辺の事は考えて対策してるみたいにゃ。本来は神の領域の話だけどにゃ」
「神の、領域?」
「にゃ。しかしここに住まう人である以上、どんな対策をしようと無駄にゃ。だからこそエイランはこの機会が巡ってくるのを待ってたんだろうにゃ」
この機会とは、カンザキが訪ね、頼ってくる機会だろうと猫さんは言う
それはエイランの対策の中で最も重要なポイントなのだから
◇
「お待たせーって、どうした?」
カンザキは再びエルフの廃国にやって来ていた
そこで何故か殴りあっているエイランとアイが居たからだ
口を開いたのはエイラン
「気にしないでいい。ちょっとだけ意見の相違があっただけだ」
「そ、そうか?とりあえず、コレでいいか?」
カンザキが袋から取り出したのは虹色に輝く果実
とてもでないが美味そうには見えない
見る角度で色が変わるどころか、まるで液体のように揺らめくその表皮にエイランの目は奪われる
「それは?」
「世界樹の木の実。随分前に貰ったやつだが、多分大丈夫だろう?」
カンザキの言う事が頭に入ってこない
その後も入手元の話をしているのだが、エイランはその実から微かに匂いがしていることに夢中になっている
「食べなければ……?食べたい…」
思わず口からそんな言葉がこぼれた
「ん?ああ、いいけど硬いぞ?剥こうか?」
「いいや、構わない」
エイランは奪い取るようにカンザキの手から虹の実を奪い取ると
シャリ
噛み付いた
それにカンザキは驚いた。実はカンザキもかじろうとしたが、歯が通らなかったからだ。
その時は剥いて食べたのだが、美味くはなかった
「ちょ、エイラン!?カンザキくん、これどうしたの?!なんでエイランは」
「わ、わかんねえよ!?この皮、めちゃくちゃ硬い筈なんだが…」
ゆっくりと咀嚼するエイランの手元、よく見ればふるふると柔らかそうに震えている虹の実があった
カンザキはカバンからもう1つ取り出すと、握りこぶしにした手でコンコンと叩いて硬さを確かめる
「カンザキくん…なんで君それもう一個持ってるのよ…」
「ああ、3つばかり貰っていたからな」
「貰ったって、誰に?」
「『エミリオ』に貰ったものなんだよ」
「え?誰って……」
風が吹いた
魔力を含んだ強い風だ
カンザキとアイは風の吹いてきた方向を見る
エイランが、土に虹の実から出てきた種を植えていた所だった
そこに、エイランが手をかざして魔力を流し込んで居るようだった
風は色づいて、翠の風となりまるで竜巻のようにうねり上げた
翠の風は優しい森の香りとともに収束していき
そこに、1本の大きな木が生えていた
「嘘でしょ!?成長促進魔法?!そんなの、ただの魔力だったわよあれ!」
アイは叫んだ
それはただの魔力ではない。虹の実を食べたエイランの魔力だ
母が子に乳を与えるが様に、エイランは木に魔力を注いだ
注ぎ終わると、その木はもう10メトル程になっていた
エイランの虚ろだった目に光が戻る
「信じられない…世界樹とは、これ程のものなのか」
既に力強く根付いた世界樹を見上げてエイランは言った
渦巻いていた魔力は全てその世界樹が飲み込んだ
そしてこの場ではエイランだけが分かっていた
これが、世界樹の苗木なのだと理解していた
◇
時を同じくして、ウルグインー
ウルグインはエルフの廃国からわずか、歩いて3時間ほどの距離しか離れていない
ただ、見える距離にはないし、あちらは少しばかり山の上にある
エイランが世界樹を植えた時だった
「にゃ…ん?」
異変を感じ取っていたのは猫さんだけだった
「どうかしましたー?」
ミタニの問いかけに答えることも無く、猫さんは遠くを見つめた
(コレは世界樹?でも変な感じにゃ…何かが決定的に違うにゃ。それに…世界喰いも目覚めたにゃ…どうにゃるのかにゃあ…)
◇
うねうねと動く、白い幼虫があちらこちらの地面よりはい出てくる
目の前に現れた栄養源を食べ尽くさんと這い出てくる
それを予期していたエイランは胸に隠し持っていたルーンを取り出して世界樹の辺りにばら撒く
「こいつが、世界樹を喰った元凶!」
カンザキの動きは早かった
背中に手を回すと、腰にある剣を抜いてその勢いのまま駆け出し振り下ろす
しかし巨大な幼虫は切られた部分がまた一匹として世界樹へ這い向かう
「嘘だろ、死なねえ!?」
エイランの放り投げたルーンは魔法陣を展開し、まるでマシンガンが火を噴くように火炎弾を打ち付けて行く
今ここに現れたその幼虫は5匹、その全てを火炎弾が押しとどめる
カンザキは内心凄いなと思いつつ、腰の袋から魔石を取り出し口に放り込む
ガチンッ
ガギギ…
「さて、くらえフレイムショット」
火魔法が効くのだろうと思い発動させる
ドンドドドドドッ
カンザキの放つ魔法が幼虫2匹に当たり、燃やし始めたように見えた途端に幼虫が悲鳴のようなものをあげた
この世のものとは思えない程の音量で泣き叫んだかと思えば、その声に釣られるように幼虫がモコモコと土から這い出て来る
「おいおい、倒した数より増えたじゃねえか」
エイランのルーンは正直足止めにしかなっていない
それも分かっているのか、エイランは魔法を唱えているようだった
アイは先程から歌声を響かせ始めている
「はあ…『エミリオ』のやつ、こんな事言ってなかったじゃねえか」
エミリオからは、好きなように使ってくれと渡された世界樹の実である
もしかしたら、彼らの食事にもなっていたのかも?と、カンザキはおもっていた
ただカンザキは美味いと感じなかった為に、しまい込んでいたのだが先程のエイランを見る限り、エルフには美味いものなのだろうと思った
「しっかし、キリがねぇぞ」
カンザキも先程から火魔法を放っているし、エイランのルーンもフルバーストしている
だと言うのに、そもそも燃えにくい、切っても無駄で幼虫の耐久能力はカンザキの想定を超えている
キャサリンやミナリとかなら、こう言った多勢相手は得意そうだよなぁと思っていた時だった
キキキン
ガラスの弾ける様な音がした
エイランのルーンが弾けたのだ。それにはやはりというか、限界があった
「マズ、どうする!?」
カンザキが焦ると同時だった
ルーンと言う枷の消えた場所から、幼虫が押し寄せる!
その中の1匹が世界樹の根に噛り付いた
世界樹が危険を感じたのか、赤く輝いて
そこに天使が現れた
「はっはっはー!エミリオ参上!」
そらに浮いているエミリオはぐるりと見回して
「なるほど!世界喰い共がまだこれ程いるのか!」
そう言い放ちながら、両手を広げる
そこから黒い闇が溢れ出て幼虫を全て捕まえて漆黒に引きずり込んだ
「すげ」
カンザキは思わず言った
驚嘆に値する、そんな魔法に思えた
「はっはぁ!これはこいつらを喰うためだけの奇跡だ!それにしてもカンザキ、何を遠慮している?」
空に浮いたままのエミリオはカンザキを見て言った
「遠慮?なんの話だ?」
「先ほどの魔法だよ、君はあれかい、こいつらに同情でもしているのかい?」
エミリオは空をくるりと回ってから
「君は想像力だけで魔法を使うだろう?世界樹がこの世界に根付いた今、魔法力はかつての世界に戻った!であれば、君は自由になれているだろう!あーっはっは!」
そういうとふわりと降りてくる
とはいえ、状況はすでに決着しているのではとカンザキは思った
さきほどのエミリオの魔法で、すべて片付いたと
「さてカンザキ、アレを残しておいた。今一度遊んでくればいい」
そういってエミリオは、先ほど世界樹の根に食いついていた一匹を指さした
「うそだろ・・あの一瞬でこんなことになんのかよ」
この幼虫が世界樹を喰うという意味はどういう意味になるのか
世界樹が無くなった意味というのは
それらはもう終わっている話だったはずだった
だがエイランが望んだ。世界樹を育てることを
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