おっさんは異世界で焼肉屋する?ー焼肉GOD

ちょせ

文字の大きさ
139 / 171

世界喰い2

しおりを挟む
世界の終焉?いいや、これこそが世界の再生だろう

この世界にある法則が崩れて久しい
数千年前に世界樹が喰われて魔法力というものが少しずつ消えていった
影響の大きなところでは魔物の弱体化と、その生存域が無くなっていたこと

また、魔物を代表する存在といえるドラゴンの数も減少して行った
シルメリアの一族がかろうじて存続していったといえる
また多くのドラゴンは魔力の消失に伴って、人化して魔力消費を抑えていたのもその影響があるからこそである

世界喰いという存在はその名の通り世界を喰らうのである
魔力が無いと生きていけない世界において、世界樹はその世界そのものを維持するために必要なものなのだから


しかしメリットとは裏腹に当然デメリットも存在しているのが世界樹である
魔物が生まれ、強くなるというデメリット
しかし、人もただやられていくわけではない。強い魔法力は魔法を、人を強くする
それに対抗できるだけの力を手にすることができるのだから





「なるほど…それで崩れかけていた世界だからこそ、私たちのような異世界人がこの世界に呼び寄せられていたかもしれないんですねー」

「そうとも言えるにゃ・・」


ミタニの言葉に、猫さんは多くを語らない
引き寄せられていたのは異世界人だけではないということを言わない

猫さんはもちろん、マサだってそうである
そしてソシアにナートという「天使」存在ですらもこの世界に呼び寄せられている

零れ落ちた高位存在ですらも引き寄せられていたと猫さんは知っている

その中でも切っ掛けになったと思われるのはカンザキ

本来彼も、この世界にくる可能性が無かった人間なのだから

(まぁカンザキはそもそも女神がらみで本来の世界に還れるはずだったのにゃあ)

ことカンザキにおいてはこの世界においてのイレギュラーの代表格ではなかろうかと猫さんは思う

何せ、神の手違いなどそんなありえない偶然でここに来ている
それは神の思惑さえ超える、世界の意思なのではなかろうかと、ふと猫さんは思うのであった






カンザキの魔法は特別だという
それは彼が低位の魔法しか行使できない理由にもなっている

想像力で魔法を放つ

また言い方を変えれば、彼の記憶にある魔方陣のみで魔法を使っていたりなどだ

そして刀の召喚魔法についても同等である。あれは日本にいたころ、妖怪討伐を生業としていた一族にあって、霊力が無くそれが出来なかったカンザキは書物だけを読み漁っていたのである。そこで知識だけは手に入れていた

魔力=霊力とは知らず、その魔力を手に入れたカンザキが使えるのは当然と言えたが、実のところ契約などを必要とするものであるのに、それをしていないカンザキが使える理由が想像力の補佐である

だから実際の物とは違うし、それ以上の威力を生み出していたなどとは本人は知らないのであるが


エミリオの言った想像力による魔法についてカンザキは考える


「遠慮、ねぇ…しているのか?俺が?」


そう一言、言ってから敵を見る

幼虫はさなぎとなり、その周りをまるでクリスタルのようなもので覆っている
羽化をまつための防御壁なのであろうそれは確かに強固であるとみるだけで分かった

先ほどと違い、硬いだけであるのならば手に持った剣だけでどうにかできそうだと思うが・・・それはきっと悪手だ

「魔法か」

想像力だけと言ったな、であれば

(ファイアストーム・レイ)

それはかつての友人が得意とした魔法だ
発動などするわけが無いと思ったが

ごうっ

いとも簡単に発動する。以前は発動どころか兆しさえなかったのに
それが世界樹がそこにある影響なのかと

幼虫の周りに生み出された炎が渦を巻いて巻き上がる!

その本数は見えるだけで10本は下らない

まるで炎の雨が降っているように見える
ビシビシと幼虫を守るクリスタルが音を立ててヒビが入っていくのが見える


炎の余波がエイランとアイに迫る
こちらもビシビシと音を立て地面がひび割れていくのが見える
温度により乾燥した大地が急速に水分を失っていっているからだ
それに伴い、ひび割れた大地が黒く焼け焦げていっているのも分かる

「ちょっ!これマズいんじゃないの!?」

アイが慌てる。それにエイランが言った

「そうだな…でも安心するといい。世界樹がある。であれば」

エイランは知っている。世界樹が持つ力を
そして、その世界樹を護る力を

「世界樹が根づいたんだ。それはあの羽付きが来たこともそれに伴ってのこと。見ろ、あの羽付きが世界樹に祝福を与えている」

幼虫をカンザキに任せた羽付き呼ばわりされたエミリオは世界樹に向けて祝詞のようなものを上げた
そして手の平から産み出された水を世界樹に与え、祈りを上げた


「さて、これでいいだろう。これで失われた世界が一つ戻ったか…我の仲間も増えると面白いのだがな!」

エミリオはエイランとアイを見る
何世代かの後に、きっとそれは叶うだろうと妙な確信のもとにエミリオは元の世界へと帰ることになった

「カンザキ、そのうちまた遊びにくるのだぞ!」

そう大きな声でカンザキに言うや否や、エミリオは消えた
それに対してさすがのエイランも、あの羽付きにカンザキが知見があるのかと驚いたが、そもそもからしてあの虹の実を持ってきたのは誰だったのかを考えてすぐに落ち着いた

世界樹の周りにはドームのような防御壁が展開されている
それにはカンザキの魔法の余波も及ばぬようで、きれいに遮断されているのがわかる


「おお・・・すっご、なにこの防御壁…」

「世界樹の保護膜みたいなものだからな…魔法程度では突破できないさ。それよりもあの幼虫が倒せねば意味がないのだけれどな」

先ほど、世界樹の根を喰っていたのをエイランは見ている
あれはその保護膜など関係なく世界樹を喰べれるという事なのだろう

「カンザキが、倒してくれることを祈ろう」

エイランがそう言ってカンザキを見つめた
アイは、エイランから聞いたあの事を思い出していた


カンザキに頼んだ時点で、全てはもう終わっているという…それの意味することを



「おお、すげぇな…あいつの魔法まんまじゃねえか」

仲間の顔が頭に思い描かれる
と同時に、その魔法を使い追い詰めた魔王の顔と得意技を

「たしか、こう…」

剣を持ったカンザキはその剣先を見つめた

剣先に黒い粒みたいなものが集まってくる

幼虫のクリスタルはバキンと音を立てて割れるが、それが破壊された訳でなく羽化だという事が分かった

まるで巨大な蛾だ

その背の羽をパンっと広げる。逃げる気なのだろう
しかし、逃げられる訳には行かない

カンザキは剣先が黒く染まるのを待たずに駆けだす

これが、アイツの必殺技だ

その技の持ち主に倣い、魔法名を口にした


「呑まれろ、深淵!」


カンザキが剣を振り下ろす
黒い斬撃が巨大な蛾に触れる!

バキバキと音を立ててその黒い斬撃が触れた場所から蛾は吸い込まれて消えた

暗闇に消えた蛾は悲鳴も上げる間が無かった

その空間を見つめながら、カンザキは言った

「これで終わりか」

勇者アインはその斬撃を断ち切り回避したのだが、たかがアレは蛾だ。世界樹を喰らうだけの生き物

だとすれば、回避など出来ようはずもなく消えた
おそらくは先程のエミリオの魔法も似たような効果なのだろう
だから効くかと思ったのだが、拍子抜けする程に簡単に効いた


呆けるカンザキの元に、エイランとアイが駆け寄ってくる

「あ…」

カンザキは焦る。二人が居ることを忘れていた
それであんなでかい魔法を発動させてしまっていたのだ

どのように謝ろうかとカンザキが考えていると

「ありがとう、カンザキくん。世界樹を護ってくれて」

なぜか礼を言われて、謝ることを言い出せなかった

「はぁ…もうね、訳分からない展開だったよ…」

アイはこの後、昔作っていた施設を修繕してAIの中に宿る、エルマを作り出した母性とも言えるものを分離するらしい
そして、エルマを育てさせるのだとか

「私が育てても良いと思うけど、あの子はきっと私を母だと思わないからね」

カンザキはそれに思わず言った

「それでいいのか?」

育てたいのでは無いか、と言う意味である

「んー。まあ無いわけじゃないけどさ、あの子を生み出した奴に責任取らせないとね」

優しい人なんだろうと、カンザキは感じた
だからこそそう言う選択肢を取れるのだと


「そうか、んじゃ王様にゃもう少し待てって言っとくわ」

「ごめんね。新しい素体組むのに設備復活と…あと16日ほどかかるとおもうからよろしくお願い」

そうアイはにっこりと笑って言った


これからしばらくは、エルフの国の復興も共に行われていくということだ
世界中に潜伏しているエルフもこの国の復活を知って駆けつけてくるだろうとのことである

カンザキは今回得たものは実のところあまりない
だけれども、世界が息を吹き返したということだけはわかった


「まぁ、俺は店をほそぼそとやってくさ」

そう言ってカンザキはウルグインへと戻っていった




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安
ファンタジー
ごく普通のフリーター・岩倉運命は謎の少年に刺され、命を落としてしまう。そんな岩倉運命だったが、サダメ・レールステンとして転生を果たす…

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

処理中です...