おっさんはクレゲに恋を求めない

ちょせ

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水曜日

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岡田 洋一は今年で39になった

今生での結婚などはもう諦めている。毎日が職場と自宅の往復で、最近ではもうテレビすら見なくなってきた

家で何をしているのかと言えば、ゲームかスマホでSNSで見たことも無い友人たちと会話して過ごす

このスマホの向こうにいる人達も、きっと俺と同じ毎日をすごしているのかもしれないと思うと少しだけ不安は消える

仕事関係での知り合いは皆家族やら、恋人やらで幸せそうだなと思うが、彼らの生活は想像は出来ない

キャンプが趣味だと言われても、流行りに敏感なんだなとしか思わないし、なぜそんなめんどくさい事をするのか分からない……


最近の趣味、というかストレス発散はクレーンゲームだ

このご時世に近所に新しく出来た店があり、そこに週に2回ほど通う

毎回予算を決めて、2000円とかでプレイする。最近は上手くなってきたのかそれで数個のプライズ品を手に入れて帰るようになった

まあだからどうしたって言う話なんだが

まあ俺のライフサイクルはこんなもので構成されている。特に変化もなく、金の使い道だって他にない

なんでつまらない人生になってしまったんだろうな

学生時代こそ、もっと楽しみ友人を作っておくべきだったのかもしれないといまさらながら後悔……も、しないな。

なるようにしかならないのが人生だと諦めているのだから

チビでデブでそろそろ頭皮もさようならが始まってる、こんな奴に良くしてくれる女性はいない。似たような境遇のおっさんの友人が片手で数えられる程度いるだけだ

そんな自分にすら興味がわかなくなって久しい

今日もいつものように仕事が終わればクレーンゲームをやりにゲーセンに向かう

客の減る時間帯に来れるのは気楽でいいと思う
だから家族や恋人同士で溢れる土日は近寄らないのだ

ガゴンと音がして、景品を落とす

3手で二個目を手に入れる

なんだ、今日は絶好調かなと少しにやける
取得した景品は撮影して日記代わりのSNSに写真をあげる
するとそれらが好きな人から反応があるのも良い

日本の何処かで同じような生活をしている人がいるのも自分が救われている気がする

ガゴン。

凄いな、今日は。既に3個目だ
まだ1000円しか使っていない。もう1つ2つ行けそうだなと思って、台を物色していると


「おにーさん、さっきから見てましたけど上手ですね!」

ん?

見ると髪を茶髪にした女性が話しかけてきた
俺は少しだけ動揺する

知り合いだったか?と思うが記憶にない。
こんな俺に話しかけてくる人は大概は仕事で付き合いのある人だからだ

結構可愛い子だなと思った

「ああ、結構お金使ってるから」

なんとか絞り出した答えがそれ
この人、俺におにーさんとか言うのはなかなか配慮のできる人だなあと思う。
おじさんとか、おっさんとか、そう言わないだけこの人の品性は良いと感じた

「良かったらちょっと教えて欲しいんです、てゆうか手伝ってくれません?」

それがクレーンゲームの事だとはすぐ分かった

「いいですよ、でも取れるかどうかはわからないですよ?」

「大丈夫です、こっちなんですけど」

連れられて行ったのはアニメのフィギュアだった。

箱物、谷落としで

箱の大きさは小さめか。これならいけるか

「えっと、まず左のアームを引っ掛けようか」

「どうやるんです?お金入れるのでやってください」

そう言ってコインを投入する

まあこれくらいならいいかと操作をして

「これでくるっと回ったら、持ち上げる感じで」

またコインを入れる

そして理想の形に整えたら……


ゴトン。


「うわあ!凄い!流石ですね!ありがとうございます」

なんだか喜んで貰えるのは嬉しい

「ああ良かった、取れて」

「えへへ、これ好きなんですよ」

「そうなんだ、良かったね」

俺はそれだけ言うとその場を離れる
なんだか珍しい事もあるもんだなと思った

普通ならここから連絡先聞いたり色々するんだろうなあとか思うけど、あんな可愛い娘が俺を相手にする訳もねえなと即座に諦めている

変な期待をするのはもう随分前に辞めた

他の台の物色とも思ったが、この場を早く離れようと俺は車に乗り込む

そこで加熱式タバコを吸いながらスマホを覗き込む

今取れたものを助手席に並べて撮影する。
ああ、台の状態も撮れば良かったか?

まあいい、載せとこう。

そうやって操作をしてると、コンコンと優しく窓を叩く音が聞こえてビクリとする

見れば先程の女の子だ
ああ失礼、女の子ではないな、女性だ

おそらくは20代半ばか、後半だろう
最近自分より若い人に対して、女の子とか男の子とか言ってしまう

本当におっさんなんだよ

窓を開けると、彼女は一本のコーヒーを出してきた

「ブラックですけど良かったですか?さっきの御礼です!」

「え、いいのに」

「だいぶん安くゲットできたので!それにまた助けて貰いたいですし」

そう言うものだから、受け取っておく

「あ、SNSしてるんですね!フォローしていいですか?」

彼女が俺の手元にあるスマホの画面を見ていた

「ああ、いいよ」

隠すものでもないしな。
そして彼女もスマホを取り出して、俺のアカウントをフォローした

「えへへ、また何かあったらDMしますね!」

そう言って彼女は再び店内に入って行った

フォローされたアカウントの名前を見ると、「みゆ@クレゲ」と書いてあった

うん、趣味友?か。悪くないな

多分彼氏とか居るんだろうなと思いながら画面を切る


俺は大して期待しない事にする

DMなんて来ないだろうとも思ってる

本気で思ってるんだ

まあ来たところで何があるわけでもないのだけれどな


さあ、家に帰ろうか

俺は車を走らせながら、今日はちょっとだけいい事があったなと思った
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