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09 ルーカス
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ルーカスは小さくなって行く背中を見送った。
自分以外の者が落とし穴を確認しにきていたら、確実に彼は食われていただろう。今日の当番が自分で本当に良かったとルーカスは胸を撫で下ろした。
ルーカス達獣狼族が住んでいるガル村の東側には広大な森があり、その森の反対側には鳥人族が住んでいる。彼らは空を飛べる種族であり、獣狼族にとっては美味しい獲物でもあるのだ。
ルーカスはしばらくその場に留まっていたが、日も暮れてきたため籠を背負い、村へと戻っていった。
「おい、ルーカス。今日は何かとれたか?」
「いやさっぱりだ。落とし穴にも何もかかってなかったし、獣達も見かけなかった」
背負っていた籠を覗き込まれ、ルーカスは慌ててそう言った。少しわざとらしかったかと焦ったが、聞いてきた彼は全く気に留めていなかった。
「ふーん」
「植物が枯れていってるから、仕方ないだろ」
「まぁ、そうだけど。じゃあ、夕飯時に」
「ああ」
ルーカスは自宅に戻るとため息をついた。
夕飯の時間になったので、食堂へと向かう。獣狼族ではいつも皆で集まり食事を取るのだ。食堂の中には、低くて長い机が幾つか並んでおり、基本的に座る席は決まっている。ルーカスは食堂の中を進み、奥側のいつもの場所にあぐらをかいて座った。隣にはルーカスの兄のルーンが座り、その奥には父である獣狼族の長が座る。
全員が食堂に集まると、それぞれの机に等間隔で大きな肉の塊がドンと音を立てて置かれて行く。血の滴る肉はきっと新鮮なものだろう。とても美味しそうだ。
長が食事前の報告をするため、立ち上がった。それに気づいた者から話を止め、長の方を向いていく。全員が注目した事を確認した後、長が話し始めた。
「最近、近くの植物が枯れ、そのせいで獲物の取れる量が少なくなってきていることは皆も承知しているだろう。近いうちに別の場所へ村ごと移動することを考えているので、頭に入れておくように。それでは食事を始めよう」
長の挨拶が終わった瞬間、皆が一斉に目の前の肉へと手を伸ばす。大きな塊だった肉が引きちぎられて、それぞれの口へと運ばれて行く。
ルーカスも目の前のどんどん小さくなっていく肉へと手を伸ばして、鋭い爪で引きちぎった。
「いやー、この鹿肉もうまいけど、やっぱ鳥人族の肉が1番うめぇよ」
隣で食べていたルーンが思い出したように舌なめずりをする。
「この前、1匹取れたんですよね! 僕も食べたかったな」
「あいつら、すぐ空へと逃げるからなかなか捕まんないんだよな」
「こんくらいのちっちゃい弓で反撃してくるけど、全然痛くないよね」
「ルーンさん、凄いです! どうやって捕まえたんですか?」
近くの机に座っていた者から興味津々な声が上がったため、ルーンが得意げに周りの者へ鳥人族を狩った時のことを語り始めた。
「森の奥の泉の近くをあいつらが通りかかったから、隠れてたんだよ。そしたら、気づかずに降りてきて水を飲もうとしたから、背後から翼を目掛けて一撃よ! 2匹いたからどっちも取りたかったけど、もう1匹はすぐ逃げちまってな。まぁそっちはいいや。翼をやったら飛べねえから、そしたらこっちのもんよ! ちょっとずつ痛めつけながら追い詰めていくんだ。必死の形相で走って逃げんのがまた面白くてな。最後は首に噛み付いて仕留めるんだ」
「へぇー、すげぇ。最初に翼をやるんですね」
「そうだ。あいつらは飛べなきゃただの雑魚だ」
食堂が笑いに包まれる。ルーカスは聞いていられなかったが、いま席を立つわけにはいかない。口に肉を押し込みながら黙って咀嚼した。
「翼が1番美味しいんですよね」
「そうだ! まじでうめえ。1匹に2つしかないのが残念だよ。4つくらいほしいな」
「『ごちそう』って言われている部位ですからね。いいなー。まだ食べたことない」
「あいつらの村に捕獲に行くわけにはいかないからな。やり過ぎたら逃げた奴らが他の種族にチクリに行って、反感を買ってしまうからな。逸れている奴らを狙って仕留めに行くんだよ。頭を使え、頭を」
「なるほど」
「――なぁ、腰抜け野郎」
いきなりこちらへ話が振られたので、ルーカスは咀嚼していた肉を慌てて飲み込んだ。
「俺は別に……」
「ルーカスは腰抜け野郎だからな。あんな美味しい奴らを狩りたくないんだとよ。昔、一緒に山に狩りにいった時も、あいつらを逃がすために態と音を立てて歩きやがったからな」
「俺たちと同じように話せる者たちを態々食べなくとも……」
「同じ獣狼族とは思えんな」
呆れたように首を振られ、ルーカスは黙った。
昔から、話せるものを食べることに抵抗があった。別に食べるものは他にもある。獣だって鳥だっているのだ。それなのに美味しいからと、食べる意味が分からなかった。
ルーカスのこの考え方は獣狼族の中では異端だ。
「折角体格も大きくて、牙も爪も大きいのに勿体無いですね」
「本当にな、そのうち普通の肉も食いませんって言って、木の実だけ食って生活するんじゃねえか」
ルーカスは席を立ち、そのまま食堂を後にした。
立ち去る際に、後ろではルーカスの話で笑っているのが分かったが、言い返すことはしなかった。
どうして分かってくれる者はいないのだろう。この村ではルーカスと同じ考えを持つ者は誰もいなかった。恵まれている体なのに、本気を出せば鳥人族を狩れるのにどうしてやらないのか、と何度も言われるが、生理的に無理だという理由しか出てこなかった。
むしろ、彼らがどうしてそこまで獲物を甚振り追い詰めて、遊んだ後に捕食するのか分からない。百歩譲って狩るにしても一撃で仕留めればいいものを、少しずつ追い詰めて遊ぶなんて考えられない。
誰かに共感して欲しいのに、誰にも分かってもらえない。
もしかしたら自分は本当に獣狼族ではないのかもしれないと考えたこともある。
そんなルーカスは、長の息子としても失格だった。
両親には早々に呆れられ、見放された。本来は長の息子全員で決闘し、勝ったものが後継となるが、ルーカスは決闘をする前に外されてしまい、兄であるルーンが後継となっている。
そもそもルーカスに獣狼族の長は務まらないだろう。鳥人族や人間を食べるなと言っても反感を買うことは目に見えている。
それでも、両親に幼い頃に見放されてしまったことはショックだった。
小さい頃に片方の羽根を折った小鳥を渡された。兄は、飛べないとわかるや否や、甚振り殺して食べてしまったが、ルーカスは折れた羽根に添木をして手当てを行った。
両親に食べなさいと言われたが、小鳥のつぶらな瞳を見てしまうと駄目だった。何も分からずにただこちらを見つめて首を傾げる小鳥が可愛くて、手のひらに乗せたまま、撫でていた。
そんな光景を見た兄が、小鳥を叩き落とし食べてしまったのだ。ルーカスは大泣きしたが、両親が褒めたのは兄だけだった。
あの日からルーカスはみんなと何かが違うと思っていた。周りが普通にやっていることができない。食べなければ生きていけないので獲物は狩って食べるが、必要最低限でいい。遊ぶために狩るなんてもってのほかだ。
そんな風に生きてきたルーカスは村の中で浮いていた。
今は一応長の息子で、体格もいいため普通に接してもらっているが、兄であるルーンが長になったらこの村からは追い出されるだろう。ルーンはルーカスのことを『腰抜け野郎』と言って嫌っているからだ。ルーカスの方が体格が良いことも嫌っている要因の1つだろう。
ルーカスは今日初めて鳥人族と話した。
落とし穴に落ちてしまった翼が片方しかない鳥人族。名前はアレスと言っていた。
最初見つけた時は可哀想なくらい怯えていたが、ルーカスが自分を食べないとわかると普通に話してくれるようになり、次に会う約束までしてしまった。
村の皆にバレてしまえば、彼も食べられてしまうだろう。小さくてかわいい鳥人族だった。あの彼が痛めつけられ食べられることなどあってはならない。
アレスの姿を思い出す。黒髪に黒目で、片方しかない翼も黒く、先の方は白くなっていた気がする。あの翼を広げるととても綺麗なのだろう。銀の毛に金色の瞳であるルーカスとは正反対だ。
色だけでなく、体格も正反対だった。小柄で華奢な体。体には毛も全く生えていない。体に怪我がないか確かめるために腕を掴んで持ち上げたが、まさかあれほど細く軽いとは思わなかった。骨が折れないようにそっと掴んでいたが、少し痛そうにしていた。帰る時には平気そうに動かしていたから大丈夫だとは思うが――
明日また会うのが楽しみで、ルーカスはなかなか寝つけなかった。
自分以外の者が落とし穴を確認しにきていたら、確実に彼は食われていただろう。今日の当番が自分で本当に良かったとルーカスは胸を撫で下ろした。
ルーカス達獣狼族が住んでいるガル村の東側には広大な森があり、その森の反対側には鳥人族が住んでいる。彼らは空を飛べる種族であり、獣狼族にとっては美味しい獲物でもあるのだ。
ルーカスはしばらくその場に留まっていたが、日も暮れてきたため籠を背負い、村へと戻っていった。
「おい、ルーカス。今日は何かとれたか?」
「いやさっぱりだ。落とし穴にも何もかかってなかったし、獣達も見かけなかった」
背負っていた籠を覗き込まれ、ルーカスは慌ててそう言った。少しわざとらしかったかと焦ったが、聞いてきた彼は全く気に留めていなかった。
「ふーん」
「植物が枯れていってるから、仕方ないだろ」
「まぁ、そうだけど。じゃあ、夕飯時に」
「ああ」
ルーカスは自宅に戻るとため息をついた。
夕飯の時間になったので、食堂へと向かう。獣狼族ではいつも皆で集まり食事を取るのだ。食堂の中には、低くて長い机が幾つか並んでおり、基本的に座る席は決まっている。ルーカスは食堂の中を進み、奥側のいつもの場所にあぐらをかいて座った。隣にはルーカスの兄のルーンが座り、その奥には父である獣狼族の長が座る。
全員が食堂に集まると、それぞれの机に等間隔で大きな肉の塊がドンと音を立てて置かれて行く。血の滴る肉はきっと新鮮なものだろう。とても美味しそうだ。
長が食事前の報告をするため、立ち上がった。それに気づいた者から話を止め、長の方を向いていく。全員が注目した事を確認した後、長が話し始めた。
「最近、近くの植物が枯れ、そのせいで獲物の取れる量が少なくなってきていることは皆も承知しているだろう。近いうちに別の場所へ村ごと移動することを考えているので、頭に入れておくように。それでは食事を始めよう」
長の挨拶が終わった瞬間、皆が一斉に目の前の肉へと手を伸ばす。大きな塊だった肉が引きちぎられて、それぞれの口へと運ばれて行く。
ルーカスも目の前のどんどん小さくなっていく肉へと手を伸ばして、鋭い爪で引きちぎった。
「いやー、この鹿肉もうまいけど、やっぱ鳥人族の肉が1番うめぇよ」
隣で食べていたルーンが思い出したように舌なめずりをする。
「この前、1匹取れたんですよね! 僕も食べたかったな」
「あいつら、すぐ空へと逃げるからなかなか捕まんないんだよな」
「こんくらいのちっちゃい弓で反撃してくるけど、全然痛くないよね」
「ルーンさん、凄いです! どうやって捕まえたんですか?」
近くの机に座っていた者から興味津々な声が上がったため、ルーンが得意げに周りの者へ鳥人族を狩った時のことを語り始めた。
「森の奥の泉の近くをあいつらが通りかかったから、隠れてたんだよ。そしたら、気づかずに降りてきて水を飲もうとしたから、背後から翼を目掛けて一撃よ! 2匹いたからどっちも取りたかったけど、もう1匹はすぐ逃げちまってな。まぁそっちはいいや。翼をやったら飛べねえから、そしたらこっちのもんよ! ちょっとずつ痛めつけながら追い詰めていくんだ。必死の形相で走って逃げんのがまた面白くてな。最後は首に噛み付いて仕留めるんだ」
「へぇー、すげぇ。最初に翼をやるんですね」
「そうだ。あいつらは飛べなきゃただの雑魚だ」
食堂が笑いに包まれる。ルーカスは聞いていられなかったが、いま席を立つわけにはいかない。口に肉を押し込みながら黙って咀嚼した。
「翼が1番美味しいんですよね」
「そうだ! まじでうめえ。1匹に2つしかないのが残念だよ。4つくらいほしいな」
「『ごちそう』って言われている部位ですからね。いいなー。まだ食べたことない」
「あいつらの村に捕獲に行くわけにはいかないからな。やり過ぎたら逃げた奴らが他の種族にチクリに行って、反感を買ってしまうからな。逸れている奴らを狙って仕留めに行くんだよ。頭を使え、頭を」
「なるほど」
「――なぁ、腰抜け野郎」
いきなりこちらへ話が振られたので、ルーカスは咀嚼していた肉を慌てて飲み込んだ。
「俺は別に……」
「ルーカスは腰抜け野郎だからな。あんな美味しい奴らを狩りたくないんだとよ。昔、一緒に山に狩りにいった時も、あいつらを逃がすために態と音を立てて歩きやがったからな」
「俺たちと同じように話せる者たちを態々食べなくとも……」
「同じ獣狼族とは思えんな」
呆れたように首を振られ、ルーカスは黙った。
昔から、話せるものを食べることに抵抗があった。別に食べるものは他にもある。獣だって鳥だっているのだ。それなのに美味しいからと、食べる意味が分からなかった。
ルーカスのこの考え方は獣狼族の中では異端だ。
「折角体格も大きくて、牙も爪も大きいのに勿体無いですね」
「本当にな、そのうち普通の肉も食いませんって言って、木の実だけ食って生活するんじゃねえか」
ルーカスは席を立ち、そのまま食堂を後にした。
立ち去る際に、後ろではルーカスの話で笑っているのが分かったが、言い返すことはしなかった。
どうして分かってくれる者はいないのだろう。この村ではルーカスと同じ考えを持つ者は誰もいなかった。恵まれている体なのに、本気を出せば鳥人族を狩れるのにどうしてやらないのか、と何度も言われるが、生理的に無理だという理由しか出てこなかった。
むしろ、彼らがどうしてそこまで獲物を甚振り追い詰めて、遊んだ後に捕食するのか分からない。百歩譲って狩るにしても一撃で仕留めればいいものを、少しずつ追い詰めて遊ぶなんて考えられない。
誰かに共感して欲しいのに、誰にも分かってもらえない。
もしかしたら自分は本当に獣狼族ではないのかもしれないと考えたこともある。
そんなルーカスは、長の息子としても失格だった。
両親には早々に呆れられ、見放された。本来は長の息子全員で決闘し、勝ったものが後継となるが、ルーカスは決闘をする前に外されてしまい、兄であるルーンが後継となっている。
そもそもルーカスに獣狼族の長は務まらないだろう。鳥人族や人間を食べるなと言っても反感を買うことは目に見えている。
それでも、両親に幼い頃に見放されてしまったことはショックだった。
小さい頃に片方の羽根を折った小鳥を渡された。兄は、飛べないとわかるや否や、甚振り殺して食べてしまったが、ルーカスは折れた羽根に添木をして手当てを行った。
両親に食べなさいと言われたが、小鳥のつぶらな瞳を見てしまうと駄目だった。何も分からずにただこちらを見つめて首を傾げる小鳥が可愛くて、手のひらに乗せたまま、撫でていた。
そんな光景を見た兄が、小鳥を叩き落とし食べてしまったのだ。ルーカスは大泣きしたが、両親が褒めたのは兄だけだった。
あの日からルーカスはみんなと何かが違うと思っていた。周りが普通にやっていることができない。食べなければ生きていけないので獲物は狩って食べるが、必要最低限でいい。遊ぶために狩るなんてもってのほかだ。
そんな風に生きてきたルーカスは村の中で浮いていた。
今は一応長の息子で、体格もいいため普通に接してもらっているが、兄であるルーンが長になったらこの村からは追い出されるだろう。ルーンはルーカスのことを『腰抜け野郎』と言って嫌っているからだ。ルーカスの方が体格が良いことも嫌っている要因の1つだろう。
ルーカスは今日初めて鳥人族と話した。
落とし穴に落ちてしまった翼が片方しかない鳥人族。名前はアレスと言っていた。
最初見つけた時は可哀想なくらい怯えていたが、ルーカスが自分を食べないとわかると普通に話してくれるようになり、次に会う約束までしてしまった。
村の皆にバレてしまえば、彼も食べられてしまうだろう。小さくてかわいい鳥人族だった。あの彼が痛めつけられ食べられることなどあってはならない。
アレスの姿を思い出す。黒髪に黒目で、片方しかない翼も黒く、先の方は白くなっていた気がする。あの翼を広げるととても綺麗なのだろう。銀の毛に金色の瞳であるルーカスとは正反対だ。
色だけでなく、体格も正反対だった。小柄で華奢な体。体には毛も全く生えていない。体に怪我がないか確かめるために腕を掴んで持ち上げたが、まさかあれほど細く軽いとは思わなかった。骨が折れないようにそっと掴んでいたが、少し痛そうにしていた。帰る時には平気そうに動かしていたから大丈夫だとは思うが――
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