【完結】片翼のアレス

結城れい

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「全部、入ったぞ」

 その言葉を聞いた時、アレスは心底ほっとした。これ以上入れられては本当に腹を突き破ってしまう。アレスの額からは汗が流れ落ちた。

「――良かった」

 後ろを振り返る余裕もなく、アレスは小刻みに呼吸をする。

「――アレス、動いてもいいか? まだ無理か?」

 苦しそうなルーカスの声に、アレスは思わず「いいよ」と頷いてしまった。
 次の瞬間、半分ほどまで抜かれたルーカスのモノがアレスを突き上げた。体ごと動いてしまいそうな衝撃に、目の前に火花が散る。

 何度か出し入れをされたとき、それは突然やってきた。
 その場所を突き上げられるのと同時に、萎えていたアレスのモノから何かが飛び出た感覚がした。アレスの目の前は真っ白になり力が抜ける。

「――ぐっ……アレス、達したのか?」
「……あ、えっ」

 アレスは何が起きたのか分からなかった。ただ衝撃が体を駆け抜けていき、下半身から出ていく。
 放心状態のアレスを横からのぞき込んできたルーカスは、一度アレスの顔を舐めた後、再度同じ場所を優しく突いてくる。

「――んぁ」

 アレスの腰がピクリと動き、口からは嬌声が飛び出した。

「気持ちいいのか、アレス」
「んっ、たぶん……きもちいい」

 何度も何度も同じ場所を刺激され、お腹側からもルーカスの手で押さえられて、アレスは限界を越えた快感に震えた。

 動いていたルーカスがピタリと止まったため、一度休憩をしようと震える口を開いたアレスは違和感を覚えた。後ろに入っているルーカスの熱いモノの根元が膨らんできている。限界まで広げられたアレスの後ろが更に広がっていく。

「え、何……」
「――アレス、すまない、抜くタイミングが遅くなってしまった。今無理に抜いてしまうと裂けてしまうだろうから、このまま出してもいいか……?」
「ん、うん」

 ルーカスのモノの根元が膨らみ、こぶとなってアレスの後ろから抜けないようになっているのだろう。アレスは上手く回らない頭で考えながら、頷いた。
 ルーカスの舌がアレスのうなじを舐め、首を噛んできた。甘噛みのようで痛くはないが、牙が首筋に当たり押される。
 次の瞬間、大量の熱いものがアレスの中へと注がれた。

「――アレス」

 ルーカスのかすれた声を聞きながら、アレスは気を失った。


******


「――アレス」

 頬を舐められた感触にアレスは目を開いた。
 心配そうにこちらを見ているルーカスと目が合う。座っているルーカスの腕に抱かれているようだ。

「あれ、オレ……」
「アレス、良かった。すまない、抑えが効かなくて無理をさせた」
「そうだった、最後までできたね」
「ああ、すまなかった」
「もう、謝らないでよ! き、気持ちよかったよ。ルーカスは?」
「――ああ、今まで生きてきた中で一番良かった」
「ふふっ、よかった」

 色々と想像していなかったことがあったが、ようやく体までつなげることができた。とくに大きな怪我もしていない。全身がだるくて、特に下半身には力が入らないが、これくらいなら問題ないだろう。

「次は前からがいいな。ルーカスが見えたほうがいい」
「ああ、俺もアレスの顔を見たい。次はちゃんと抑える」
「別に抑えなくてもいいのに」
「いや、しかしな――アレスの負担になるだろう」
「番だもん、これくらい大丈夫だよ! 次の日はあんまり動けなさそうだけどね」
「ああ、責任もって俺が世話する」

 ルーカスがアレスの髪をそっと爪で梳かす。アレスはルーカスの胸へと頭を寄りかからせ目を閉じた。行為に慣れたら、もっと快感を拾えるようになるだろうし、ルーカスにも抑えずに本能のままに求めてほしい。これからのことを考えたアレスは目を閉じたまま笑みを浮かべた。

「体は拭いておくから、このまま寝ていいぞ。おやすみアレス」

 ルーカスの優しい声に包まれて、アレスは幸せな気持ちで夢の世界へと旅立った。


******


 次の日、アレスは予想通り体があまり動かなかったが、ルーカスはそんなアレスに甲斐甲斐しく世話を焼いた。常に抱き上げて移動し、食事もすべてルーカスが手ずから食べさせる。アレスは文字通り一歩も動いていない。
 アレスの世話をするルーカスはとても楽しそうで、そんなルーカスを見てアレスも笑った。
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