【完結】ツンな猫君の恋愛事情

結城れい

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38 レポート

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「もう、外で食べないほうがいいかもねー」
「そうだな」

 額に汗をにじませながら、樹はサンドイッチを頬張った。季節はもう夏と言っていいだろう。気温は高く、外に長時間いると汗をかいてしまうほどだ。座っているベンチは木の陰にあるが、それでも葉の隙間から太陽の光が容赦なく降り注いでくる。

「次から涼しい室内で食べようね」
「ああ、購買横の休憩スペースでいいか?」
「うーん、あそこはいつも混んでるからねー。もうちょっと静かなところがいいけど、仕方ないか」
「ああ」

 雨で外のベンチが使えないときは、中央ひろばの購買の横にある休憩スペースで食べていたが、あの場所は、晴れの日も雨の日も昼休憩時は混んでいる。座席数はそれなりに多いが、毎回空いている席を探すのに苦労していた。それに、樹は人が多すぎる場所はあまり好きではないし、この季節特有のエアコンが効きすぎて寒くなった場所も好きではない。だからこそ、外のベンチはとても良かったが、ここまで気温が上がってしまうとそんなことは言っていられない。
 理系棟や文系棟にもそれぞれ休憩スペースはあるが、理系棟の空いている休憩スペースを利用するとなると迅が遠くなってしまうし、逆もまたしかり。お互いに同じくらいの距離にある中央ひろば付近で空いている涼しい場所があれば一番いいが、そんな都合のいい場所はなかった。

 お昼のサンドイッチを食べ終わった後、樹は迅に言わなければならない残念なことを思い出した。ゴクリと冷たいお茶を飲み、口を開く。

「――迅くん、今日は一緒に帰れないの。ごめんね」
「――え」

 ショックを受けたような顔を一瞬見せた迅に、樹は罪悪感でいっぱいになる。今日は水曜日だ。樹の花観察が終わり、先週から今まで通りに水曜と木曜は迅と一緒に帰っていたが、今日は一緒に帰ることが難しくなってしまった。
 迅は口に出して言ったことはないが、樹と一緒に帰ることを楽しみにしてくれていることは伝わってきていた。樹も、毎回家まで送ってもらうことは申し訳ないが、それでも一緒にいられることは嬉しく思っている。

「ごめんね。明日提出のレポートが終わってなくて……足りない資料を図書館で探さなきゃいけないんだ……今日全部終わらせるから、明日は一緒に帰れるよ」
「レポート……図書館でやるのか?」
「うん、そうなの」
「――それなら、俺もレポートあるから一緒にする」
「え、いいの?」
「ああ、家でしようと思ってたから丁度いい」
「ありがとう。じゃあ、講義終わったら購買横の休憩スペースで待ち合わせしよう!」
「ああ」


******


 4限目の講義が終わり、中央ひろばにある休憩スペースへ向かうと、すでに迅は待っていたため樹は駆け寄った。外との気温差に、一度体をブルリと震わせる。

「何か食べてから図書館に行こう」
「うん!」

 樹は迅と一緒に隣の購買へ向かう。店内を見て回り、小さめの梅おにぎりとお茶を購入した樹は、会計を済ませて購買の入り口で迅を待つ。暫くして、迅も袋を片手に出てきたため、先ほどの休憩スペースへと一緒に戻った。

「んー酸っぱい!」

 海苔とおにぎりを綺麗に袋から外し、口へと頬張る。あまり食欲はなかったが、梅のほど良い酸っぱさが疲れた体にみる。今日は講義数が多かったため、少し休憩しないとレポートのやる気が起きない。樹は時間をかけておにぎりを食べ終えた。
 向かい側で2つ目の惣菜パンを頬張っていた迅は、樹がおにぎりを食べ終わったタイミングで、袋から何かを取り出し樹へと渡してきた。

「ん?」
「――やる」

 差し出されたそれは、パウチ包装のチョコレート菓子だった。
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