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43 愛情不足
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迅は暫く衝撃から戻ってこれず、エレベーターのボタンを間違えて押してしまうし、玄関ドアが開ききる前に入ろうとして扉に体をぶつけてしまう。だが、そんなことは気にも留めずに足を動かした。
フラフラになりながら廊下を通り抜けた迅は、リビングのソファへと力なく座り込み頭を抱える。
「……愛情不足」
愛情不足とは何だ。愛が足りていない、つまり、樹は今、愛が足りておらず体調が悪いに違いない。このままいくと、死んでし――
最悪な光景が頭をかすめ、迅は勢いよく頭を振った。
そもそも、迅と付き合っているのに、どうして愛情不足になるのだ。これほど樹のことを愛しているのに――愛して……
そこで、迅は気がついた。もしかして、自分は樹に愛の言葉を告げたことがないかもしれないということに――
まさか、と思いながら記憶を辿る。最初に出会った時には、なんと言っただろうか。あまり覚えていないが、付き合うかどうかの話をしただけで、好きだとかは言った記憶がない。では、その後はどうだ。今までの記憶を全て思い返してみるが、言っている記憶は1つも見つからなかった。
迅は目を見開き、愕然とした。伝えていると思っていたが、実際に口に出して言ったことはなかったのだ――
樹に元気になってもらうためにも、直接『愛している』と伝えなければいけない。そう決意した迅はソファから立ち上がり、『愛している』と何度も呟きながらリビングを意味もなく歩き始めた。
******
ようやく水曜日になり、試験期間も折り返しだ。
樹は、電車に揺られながら、試験範囲のプリントを読み込む。中帝駅へ着いたため、プリントをバッグへと直しながら電車を降りて改札を出た樹は、視線を前へ向けて驚いた。
「――え、迅くん!?」
人の流れが収まるまで端の方で止まった樹は、改札から出てくる人が少なくなったタイミングで、逆側にいた迅の元へ走って向かう。
「迅くん、おはよう。駅でどうしたの?」
「え、ああ、いや、たまたま……」
「ん? 僕、今から大学向かうんだけど、迅くんはご用事?」
「いや、俺も今から大学に――」
「あ、そうなの? じゃあ、一緒に行こー」
「ああ」
迅と、駅を出て大学へと向かう。どうして駅にいたのか分からなかったが、迅も大学へ向かうところだったようで、丁度良かった。どこか気合の入っている雰囲気の迅を見ながら、樹も気合を入れなおした。あと3日で試験も終わりだ。1番の鬼門だった科目も昨日無事に終わり、今日はレポート提出の科目が1つあったため、2科目分の試験のみだ。
「――あ、その、今日は体調はどうだ?」
「うん、大丈夫だよ!」
迅が心配そうに声をかけてきたので、樹は笑顔で返す。心配をかけたくないが、どうやらあまり隠せていないようだ。やはり、昼食を一緒に食べるため、食欲がなくなっていることがバレてしまっているのだろう。せめて、日中の気温が少しでも下がってくれればいいのにと、樹は照りつける太陽を見上げた。今朝スマホで確認したニュースでは、今日も猛暑日の予想を告げていたことを思い出しながら――
「あ、えっと――」
「ん? どうしたの?」
迅はいつもスタスタと歩いていくのに、今日は何故だか足が重そうだ。立ち止まってしまった迅を振り返ると、何かを言おうとしていたので、樹もその場で足を止めて待つ。迅の透明感のある綺麗な青い瞳が、樹へと注がれる。正面から真剣に見つめられた樹の鼓動は、ドクドクと音を立てた。
「あ、あ――っ」
その時、後ろから来ていた大学生が笑いながら隣を追い越していったため、迅の肩が跳ねる。辺りを見渡した迅は、大きく息を吐いた後、樹へ話しかけてきた。
「――その、今日、俺の家でテスト勉強していかないか?」
「え、うん?」
最初に真剣に言おうとしていたこととは別の話のように思えたため、樹は不思議に思いながらも頷いた。何か言いにくいことを言おうとしていたように見える。迅が言える時に言ってもらえればいいため、樹からあまり深く聞くのは良くなさそうだ。そう判断した樹は、何も聞かずに歩き出した。
「じゃあ、4限の試験が終わったら連絡するねー」
「ああ」
元気を取り戻した様子の迅も、頷きながら樹の隣に並んで歩きだした。
フラフラになりながら廊下を通り抜けた迅は、リビングのソファへと力なく座り込み頭を抱える。
「……愛情不足」
愛情不足とは何だ。愛が足りていない、つまり、樹は今、愛が足りておらず体調が悪いに違いない。このままいくと、死んでし――
最悪な光景が頭をかすめ、迅は勢いよく頭を振った。
そもそも、迅と付き合っているのに、どうして愛情不足になるのだ。これほど樹のことを愛しているのに――愛して……
そこで、迅は気がついた。もしかして、自分は樹に愛の言葉を告げたことがないかもしれないということに――
まさか、と思いながら記憶を辿る。最初に出会った時には、なんと言っただろうか。あまり覚えていないが、付き合うかどうかの話をしただけで、好きだとかは言った記憶がない。では、その後はどうだ。今までの記憶を全て思い返してみるが、言っている記憶は1つも見つからなかった。
迅は目を見開き、愕然とした。伝えていると思っていたが、実際に口に出して言ったことはなかったのだ――
樹に元気になってもらうためにも、直接『愛している』と伝えなければいけない。そう決意した迅はソファから立ち上がり、『愛している』と何度も呟きながらリビングを意味もなく歩き始めた。
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ようやく水曜日になり、試験期間も折り返しだ。
樹は、電車に揺られながら、試験範囲のプリントを読み込む。中帝駅へ着いたため、プリントをバッグへと直しながら電車を降りて改札を出た樹は、視線を前へ向けて驚いた。
「――え、迅くん!?」
人の流れが収まるまで端の方で止まった樹は、改札から出てくる人が少なくなったタイミングで、逆側にいた迅の元へ走って向かう。
「迅くん、おはよう。駅でどうしたの?」
「え、ああ、いや、たまたま……」
「ん? 僕、今から大学向かうんだけど、迅くんはご用事?」
「いや、俺も今から大学に――」
「あ、そうなの? じゃあ、一緒に行こー」
「ああ」
迅と、駅を出て大学へと向かう。どうして駅にいたのか分からなかったが、迅も大学へ向かうところだったようで、丁度良かった。どこか気合の入っている雰囲気の迅を見ながら、樹も気合を入れなおした。あと3日で試験も終わりだ。1番の鬼門だった科目も昨日無事に終わり、今日はレポート提出の科目が1つあったため、2科目分の試験のみだ。
「――あ、その、今日は体調はどうだ?」
「うん、大丈夫だよ!」
迅が心配そうに声をかけてきたので、樹は笑顔で返す。心配をかけたくないが、どうやらあまり隠せていないようだ。やはり、昼食を一緒に食べるため、食欲がなくなっていることがバレてしまっているのだろう。せめて、日中の気温が少しでも下がってくれればいいのにと、樹は照りつける太陽を見上げた。今朝スマホで確認したニュースでは、今日も猛暑日の予想を告げていたことを思い出しながら――
「あ、えっと――」
「ん? どうしたの?」
迅はいつもスタスタと歩いていくのに、今日は何故だか足が重そうだ。立ち止まってしまった迅を振り返ると、何かを言おうとしていたので、樹もその場で足を止めて待つ。迅の透明感のある綺麗な青い瞳が、樹へと注がれる。正面から真剣に見つめられた樹の鼓動は、ドクドクと音を立てた。
「あ、あ――っ」
その時、後ろから来ていた大学生が笑いながら隣を追い越していったため、迅の肩が跳ねる。辺りを見渡した迅は、大きく息を吐いた後、樹へ話しかけてきた。
「――その、今日、俺の家でテスト勉強していかないか?」
「え、うん?」
最初に真剣に言おうとしていたこととは別の話のように思えたため、樹は不思議に思いながらも頷いた。何か言いにくいことを言おうとしていたように見える。迅が言える時に言ってもらえればいいため、樹からあまり深く聞くのは良くなさそうだ。そう判断した樹は、何も聞かずに歩き出した。
「じゃあ、4限の試験が終わったら連絡するねー」
「ああ」
元気を取り戻した様子の迅も、頷きながら樹の隣に並んで歩きだした。
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