【完結】ツンな猫君の恋愛事情

結城れい

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44 試験勉強

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 水曜日は2人とも4限で終わり、いつも迅と一緒に帰っていた。きっと今日も迅は4限まで試験なのだろう。だが樹は、先日のレポート提出で終わったため、今日の4限目の試験はない。しかし、それを言ってしまえば、一緒に帰れなくなってしまうかもしれないと思った樹は、迅には伝えずに、4限目の時間帯は図書館で明日の試験勉強をして時間をつぶそうと考えていた。

 迅の家で試験勉強することになったので、勉強道具を持ってきてちょうど良かったと思いながら、3限目の試験が終わった樹は図書館へと向かう。
 試験期間中ということもあり混んでいたが、1人分の席はチラホラ空いている。樹は集中できるように仕切り付きの1人用の席に座り、バッグの中から明日試験のある講義プリントを取り出して、勉強を始めた。


 暫く集中して勉強していたが、スマホのバイブ音がなったため顔を上げて画面を確認する。迅からのメッセージ通知だった。慌てて時間を確認するが、まだ4限目の終わりの時間ではない。急いでANIMALを開いてメッセージを確認すると、『試験が早めに終わったから、理系棟近くの広場まで行く』とのことだった。きっと迅は樹が試験中で、スマホを見ていないと思っているはずだ。試験後に迅のメッセージを確認することで、広場へ向かうという流れだったのだろう。
 しかし、ANIMALでは、相手がメッセージを読むと、『読んだマーク』と呼ばれる丸い印がメッセージ上に表示されてしまう。樹は慌ててアプリを閉じたがもう遅い。
 立ち上がった樹は、机の上に置いていた勉強道具を急いでバッグへ入れて、図書館を飛び出した。
 だが、とにかく返信をと思い直し、一度立ち止まって『ありがとう』とお礼のメッセージを送り、早めにメッセージを見れた言い訳を考えながら広場へ早足で向かった。


「迅くん!」

 迅の姿が見えたため走り出した樹は、途中で血の気が引いて、目の前が真っ白になる。貧血だと悟った樹は、慌ててその場にしゃがみ込んだ。寝不足の上に、あまり食べていない状態で走ったので、貧血にもなる。反省しながら顔を上げると、迅が血相けっそうを変えて走ってきていた。

「大丈夫か!」
「あ、うん、ごめん。転んだわけじゃないよ。ちょっと貧血になっちゃった」
「貧血……」

 ゆっくりと立ち上がった樹の腰に、迅の太い尻尾がギュッと巻きついた。

「あ、あ――家に行こう」
「うん」

 貧血のおかげで、メッセージのことは迅の頭から消し飛んでくれたようだ。考えていた言い訳を使わなくて良くなったため、樹はホッと胸を撫で下ろした。


 迅は余程心配したのだろう。マンションに着くまでの間、隣を歩く迅の尻尾はずっと樹に触れていた。


******


 マンションにつくと、樹は迅に案内され、リビングのローテーブルの前に座った。フカフカのクッションと飲み物まで渡される。

「ありがとう」
「ああ、何か欲しいものはあるか?」
「欲しいもの? 特にないよ? 大丈夫」
「――そうか」

 机を挟んで向かい側に座った迅はどこか落ち着かない様子だ。尻尾もずっと左右に動いている。

「さっきのは貧血だったから、そんなに心配しないで。ごめんね」
「――貧血」

 樹の言葉を聞き素早く立ち上がった迅は、キッチンまで駆けていき、戸棚から何かを取り出して戻ってきた。

「これを」

 差し出されたのは、大袋に入ったチョコレートだった。

「あ、ありがとう! 勉強しながら一緒に食べよう」
「ああ、スープとかはどうだ?」
「ううん、大丈夫だよ!」

 余程心配させてしまったようで、樹は迅の前でしゃがみ込んでしまったことを反省した。慌てて走らなければ貧血にならなかっただろう。早く試験期間が終わり、寝不足と気温差が解消されれば大丈夫なはずだ。
 まずは後2日間の試験を乗り切らなければならない。樹はバッグから明日の試験範囲のテキストを取り出した。ついでにバッグからカーディガンを取り出して着ておく。

「――寒いのか?」
「あ、うん。ちょっとだけ――」

 樹の返答をすべて聞き終わる前に、迅は再度立ち上がり寝室の方へと駆けていく。戻ってきた迅は分厚いブランケットを両腕に抱えて持っていた。

「これを使え」
「ありがとう」

 フカフカのブランケットを膝にかけた樹は集中して明日の試験範囲の勉強を始めた。サークルの先輩からもらった過去問も参考にしながら暗記していく。
 向かいに座っている迅も同じく勉強をしていたが、たまに顔を上げて樹を見つめていた。視線を感じた樹が顔を上げて迅を見ると、視線をそらされる。一体どうしたのだろうと、樹は首を傾げた。

 学部の違う2人は試験範囲や勉強内容は全く違うので、お互いに聞くこともない。チョコを包みから出す時の音やシャーペンの走る音、紙をめくる音以外はしない静かな空間で時間は流れていった。
 

 結局、夕飯までいただいてから樹は家まで送ってもらった。

「ありがとう! じゃあねー」
「あ、あい――あ、ああ、また」

 樹をアパートまで送った迅は、挙動不審になりながら、帰っていった。
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