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いい目ですね
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刃はアルベールの首をかすめるところで止まった。彼の首からうっすらと血が滲みだす。
「あーあ、気絶しちゃったみたいですね」
アルベールは白目を剥いて気を失っていた。四肢は弛緩しだらんとして、わずかに痙攣する両脚の間からは液体が漏れている。
「げえ、台が汚れちゃいました」
マルクは顔をしかめる。そして不思議そうな顔をして私に向き直った。
「どうして止めたんですか?」
私はすまなそうにマルクを見た。
「ごめんなさいマルク。ここまで私に協力してくれたのに。だけど、この男を殺したところで私の気持ちは晴れないと思って」
アルベールが命乞いなどせずに私を罵倒してくれたなら、私は迷わず彼をやっていただろう。だけど目の前の男は殺す価値なんてない。この男を殺しても私の恨みは晴れない。
「あの、ジュリアとかいう女を連れてきましょうか?」
マルクが提案する。
私は首を振った。多分ジュリアに同じことをしても結果は変わらない気がする。
私が憎んでいたのは、私が復讐したかったのは、私が絶望したのは。
私の処刑を心待ちにする民衆、私を捨てた両親、私の声を誰も聞いてくれなかった理不尽さ。
アルベール一人どうにかしたところで埋められるものではない。
目に前に立つマルクを見上げて、私は言った。
「私が恨んでいるのはあの腐った国よ。すべてが腐ったあの国」
しばらく見つめ合うと、マルクは私をそっと抱きしめてくれた。優しくあやすように背を撫で「わかりました」と穏やかな声音で言う。
「いい目ですね、カトリーヌ」
カトリーヌが別室で眠りについたあと、僕は無様に気絶している男の顔に、かめの中の水をぶちまけた。もう大きな刃は魔法で消してある。
「ぶは……」
男は一瞬びくりとしたあと目を覚まし、僕の顔を見るなり悲鳴を上げた。
カトリーヌが起きるだろ、と思って僕は男の顔を容赦なく殴りつける。
何度か殴りつけると男は大人しくなった。
「よく聞け、アルベール。これからお前には役に立ってもらう」
アルベールは弱弱しく「城に帰してくれ、マルク」とすすり泣いた。僕は吹き出しそうになった。
「城? ここはお前の住んでる城の地下だよ。すごーく深いところにあるけどね。だから、泣いても誰も助けてくれないよ」
アルベールは驚愕した顔をした。いやいやこんなことで驚いてもらっちゃ困る。ここからが本題なんだから。
「僕の愛しのカトリーヌが、この国の破滅を願っておられる。だからお前に協力してもらう。国を破滅させる呪いの魔法をかけるにはお前が必要なんだ。あ、ひとつ質問なんだけど、お前ちゃんとした王家の血を引いてるだろうね? お妃が浮気とかして出来た子供じゃないだろうね、答えろ」
アルベールは狂ったように頷いた。しまった、これじゃ脅しの強制になっちゃうか。うーん、まあいいか。違ったら違ったで。別の王家の人間を城から捕まえてこよう。
僕はアルベールの上にかがみ込み、一言一言ゆっくり聞かせるように言った。
「破滅させる魔法を完成させるには、お前の両目と、舌と、全身の血液が必要なんだ。破滅させたい国の血を引く者のじゃなきゃいけない。叫ばれるとカトリーヌが起きちゃうから、舌からいくねー」
カトリーヌはまだほんの少しだけこの男に未練があるようで僕は全く気に食わない。ゆーっくりと存分に痛めつけてやろう。
そして国を破滅させる呪いの魔法でこいつの国を滅ぼした後、僕はカトリーヌと別の国へ旅立つんだ。
そして、あの魅力的なあの目を、いつか、僕に向けてくれたら、とっても嬉しい。
「あーあ、気絶しちゃったみたいですね」
アルベールは白目を剥いて気を失っていた。四肢は弛緩しだらんとして、わずかに痙攣する両脚の間からは液体が漏れている。
「げえ、台が汚れちゃいました」
マルクは顔をしかめる。そして不思議そうな顔をして私に向き直った。
「どうして止めたんですか?」
私はすまなそうにマルクを見た。
「ごめんなさいマルク。ここまで私に協力してくれたのに。だけど、この男を殺したところで私の気持ちは晴れないと思って」
アルベールが命乞いなどせずに私を罵倒してくれたなら、私は迷わず彼をやっていただろう。だけど目の前の男は殺す価値なんてない。この男を殺しても私の恨みは晴れない。
「あの、ジュリアとかいう女を連れてきましょうか?」
マルクが提案する。
私は首を振った。多分ジュリアに同じことをしても結果は変わらない気がする。
私が憎んでいたのは、私が復讐したかったのは、私が絶望したのは。
私の処刑を心待ちにする民衆、私を捨てた両親、私の声を誰も聞いてくれなかった理不尽さ。
アルベール一人どうにかしたところで埋められるものではない。
目に前に立つマルクを見上げて、私は言った。
「私が恨んでいるのはあの腐った国よ。すべてが腐ったあの国」
しばらく見つめ合うと、マルクは私をそっと抱きしめてくれた。優しくあやすように背を撫で「わかりました」と穏やかな声音で言う。
「いい目ですね、カトリーヌ」
カトリーヌが別室で眠りについたあと、僕は無様に気絶している男の顔に、かめの中の水をぶちまけた。もう大きな刃は魔法で消してある。
「ぶは……」
男は一瞬びくりとしたあと目を覚まし、僕の顔を見るなり悲鳴を上げた。
カトリーヌが起きるだろ、と思って僕は男の顔を容赦なく殴りつける。
何度か殴りつけると男は大人しくなった。
「よく聞け、アルベール。これからお前には役に立ってもらう」
アルベールは弱弱しく「城に帰してくれ、マルク」とすすり泣いた。僕は吹き出しそうになった。
「城? ここはお前の住んでる城の地下だよ。すごーく深いところにあるけどね。だから、泣いても誰も助けてくれないよ」
アルベールは驚愕した顔をした。いやいやこんなことで驚いてもらっちゃ困る。ここからが本題なんだから。
「僕の愛しのカトリーヌが、この国の破滅を願っておられる。だからお前に協力してもらう。国を破滅させる呪いの魔法をかけるにはお前が必要なんだ。あ、ひとつ質問なんだけど、お前ちゃんとした王家の血を引いてるだろうね? お妃が浮気とかして出来た子供じゃないだろうね、答えろ」
アルベールは狂ったように頷いた。しまった、これじゃ脅しの強制になっちゃうか。うーん、まあいいか。違ったら違ったで。別の王家の人間を城から捕まえてこよう。
僕はアルベールの上にかがみ込み、一言一言ゆっくり聞かせるように言った。
「破滅させる魔法を完成させるには、お前の両目と、舌と、全身の血液が必要なんだ。破滅させたい国の血を引く者のじゃなきゃいけない。叫ばれるとカトリーヌが起きちゃうから、舌からいくねー」
カトリーヌはまだほんの少しだけこの男に未練があるようで僕は全く気に食わない。ゆーっくりと存分に痛めつけてやろう。
そして国を破滅させる呪いの魔法でこいつの国を滅ぼした後、僕はカトリーヌと別の国へ旅立つんだ。
そして、あの魅力的なあの目を、いつか、僕に向けてくれたら、とっても嬉しい。
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