73 / 80
最終章
よく頑張ったな
しおりを挟む
俺はぐんぐん上昇し、結乃の隣に並んだ。
眼下に見える魔物は……どう見ても巨大カリフラワーだ。
「青野君、この魔物さんは、カリファーさんて言うの。二百年に一度お昼寝から目覚めて、魔法力を食べて、また眠る。魔法力のお返しに、ミール国を二百年守ってくれるの」
結乃が一生懸命説明してくれる。
髪はほつれ、汗をかき、叫び続けて疲れ切った表情だ。
「もうカリファーさんはお腹いっぱいになったけど、背中が痒くてしょうがないんだって。痒いのを何とかしてくれたら、シオン様とエメルを解放してくれるって」
「結乃、よく頑張ったな」
俺は我慢できずに結乃に語りかけた。
「へっ?」
「こんな高いところで一人……、怖かっただろう?」
今すぐ、抱きしめてやりたい。
「そんなこと……実はちょっと怖かったけど、頑張ったよ。マルコに貰った魔法力でカリファーさんと会話できるようになったんだ」
「それで魔物を説得したのか。すごい、すごいよ結乃。俺なんて弓はぶっ壊れるし、魔法力ゼロだし」
「そんなことないよ。青野君がここに来てくれて、すごく嬉しい。やだ、泣けてきちゃった」
「馬鹿だな、泣くなよ。あ、やばい、俺も」
鼻の奥がツンとしてきた……。
「おい、馬鹿二人! さっさとやれ! もたないぞ」
地上から小野寺が怒鳴った。あ、そうだった。結乃まで馬鹿呼ばわりなんて、相当キレてるな。
「わー! ごめんなさい、カリファーさん、い、今やります! 痒いところ教えて下さい!」
結乃が突然叫んだ。魔物に何か言われたのか?
「もたもたしてないで早く痒みを止めろって! 早くしないとシオンお姉様たちからもっと魔法力を搾り取るって」
魔物がまた光り出した。まずい、つい二人の世界に入っちゃったぜ。
俺は矢筒から矢を取り、弓を構えた。
「結乃、魔物はどこが痒いって言ってるんだ?」
「そこから見て、真っすぐだって。ちょっとぽこっとしているあたり」
何がちょっとぽこっとだ。もともとぼこぼこじゃねーか、カリフラワーが!
俺はとりあえず言われた通りに矢を放った。
矢は真っすぐに飛び、カリフラワーに突き刺さる。
「全然違うって。もっと右だって」
刺さった矢が押し出され、はじかれる。
「まかせろ!」
二本目を放つ。
「もっと左」
三本目。
「惜しい! もう少し上」
二十本目。これでラストだ。外したら落ちた矢を拾い集めてやり直しだ。
ヒーローとしては、ここで決めないと! いや、決めさせてください、お願いします!
「さっきのより、もう少しだけ斜め左下だって」
「よし、ここだ!」
矢がカリフラワーに刺さり、沈んでいく。どうだ?
「そこだって! 青野君、やったよ」
「よっしゃ!」
思わずガッツポーズする。しかし、喜びもつかのま、結乃のつるが外れ、結乃が落下した。
「結乃!」
そんな――!!
気がついたら俺も落下していた。小野寺、力尽きちまったのか?
このままじゃ地面に叩きつけられる、結乃を助けないと、そう思っていたら落下がぴたりと止まった。
結乃と俺は、地面から二メートルぐらいのところに浮いていた。そのままゆっくりと、地上に降ろされる。
目の前にいた小野寺が、両手を突き出したままよろけてその場に崩れ落ちる。
「美羅ちゃん!」
結乃が小野寺に駆け寄る。小野寺は三つ子たちに支えられていた。
「小野寺、魔法で助けてくれたのか」
小野寺は薄目を開けると、せわしく呼吸しながら言った。
「言っただろ、私を信じろと。空中で、のろけだしたときは、さ、殺意を覚えたが」
「ごめんなさい、美羅ちゃん」
「まったくもう、結乃だから許す。私のことはいいからエメル達のところへ行ってやれ」
そうだ、エメルとシオン様はどうなったんだ?
二人を助けに向かおうとした矢先、地響きがした。
眼下に見える魔物は……どう見ても巨大カリフラワーだ。
「青野君、この魔物さんは、カリファーさんて言うの。二百年に一度お昼寝から目覚めて、魔法力を食べて、また眠る。魔法力のお返しに、ミール国を二百年守ってくれるの」
結乃が一生懸命説明してくれる。
髪はほつれ、汗をかき、叫び続けて疲れ切った表情だ。
「もうカリファーさんはお腹いっぱいになったけど、背中が痒くてしょうがないんだって。痒いのを何とかしてくれたら、シオン様とエメルを解放してくれるって」
「結乃、よく頑張ったな」
俺は我慢できずに結乃に語りかけた。
「へっ?」
「こんな高いところで一人……、怖かっただろう?」
今すぐ、抱きしめてやりたい。
「そんなこと……実はちょっと怖かったけど、頑張ったよ。マルコに貰った魔法力でカリファーさんと会話できるようになったんだ」
「それで魔物を説得したのか。すごい、すごいよ結乃。俺なんて弓はぶっ壊れるし、魔法力ゼロだし」
「そんなことないよ。青野君がここに来てくれて、すごく嬉しい。やだ、泣けてきちゃった」
「馬鹿だな、泣くなよ。あ、やばい、俺も」
鼻の奥がツンとしてきた……。
「おい、馬鹿二人! さっさとやれ! もたないぞ」
地上から小野寺が怒鳴った。あ、そうだった。結乃まで馬鹿呼ばわりなんて、相当キレてるな。
「わー! ごめんなさい、カリファーさん、い、今やります! 痒いところ教えて下さい!」
結乃が突然叫んだ。魔物に何か言われたのか?
「もたもたしてないで早く痒みを止めろって! 早くしないとシオンお姉様たちからもっと魔法力を搾り取るって」
魔物がまた光り出した。まずい、つい二人の世界に入っちゃったぜ。
俺は矢筒から矢を取り、弓を構えた。
「結乃、魔物はどこが痒いって言ってるんだ?」
「そこから見て、真っすぐだって。ちょっとぽこっとしているあたり」
何がちょっとぽこっとだ。もともとぼこぼこじゃねーか、カリフラワーが!
俺はとりあえず言われた通りに矢を放った。
矢は真っすぐに飛び、カリフラワーに突き刺さる。
「全然違うって。もっと右だって」
刺さった矢が押し出され、はじかれる。
「まかせろ!」
二本目を放つ。
「もっと左」
三本目。
「惜しい! もう少し上」
二十本目。これでラストだ。外したら落ちた矢を拾い集めてやり直しだ。
ヒーローとしては、ここで決めないと! いや、決めさせてください、お願いします!
「さっきのより、もう少しだけ斜め左下だって」
「よし、ここだ!」
矢がカリフラワーに刺さり、沈んでいく。どうだ?
「そこだって! 青野君、やったよ」
「よっしゃ!」
思わずガッツポーズする。しかし、喜びもつかのま、結乃のつるが外れ、結乃が落下した。
「結乃!」
そんな――!!
気がついたら俺も落下していた。小野寺、力尽きちまったのか?
このままじゃ地面に叩きつけられる、結乃を助けないと、そう思っていたら落下がぴたりと止まった。
結乃と俺は、地面から二メートルぐらいのところに浮いていた。そのままゆっくりと、地上に降ろされる。
目の前にいた小野寺が、両手を突き出したままよろけてその場に崩れ落ちる。
「美羅ちゃん!」
結乃が小野寺に駆け寄る。小野寺は三つ子たちに支えられていた。
「小野寺、魔法で助けてくれたのか」
小野寺は薄目を開けると、せわしく呼吸しながら言った。
「言っただろ、私を信じろと。空中で、のろけだしたときは、さ、殺意を覚えたが」
「ごめんなさい、美羅ちゃん」
「まったくもう、結乃だから許す。私のことはいいからエメル達のところへ行ってやれ」
そうだ、エメルとシオン様はどうなったんだ?
二人を助けに向かおうとした矢先、地響きがした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
23
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる