74 / 80
最終章
眠りにつく
しおりを挟む
「何? 地震?」
地響きとともに短い縦揺れがあったあと、激しい横揺れが私たちを襲った。地面がまるで波打っているみたい。
(我は眠る。この場は閉じるから、早く離れろ。一緒に眠ることになるぞ)
「ええ!?」
カリファーさんの言葉に仰天する。逃げる前にシオンお姉様たちを助けなきゃ!
「ユノ、ミランダ様、アーキス!」
エメルがシオンお姉様を抱えてこっちへ走ってくるところだった。お姉様は力なくぐったりしている。
「シオン様は大丈夫だ。早くここを離れよう」
そう言うエメルの顔色もかなり悪い。魔法力を大分吸い取られてしまったようだ。
シオンお姉様のドレスからシロが飛び出て、当然のように青野君の頭の上に乗った。
揺れが激しくなる。
私は青野君に手を引かれ、美羅ちゃんは三つ子さんの一人に背負われている。とにかく無我夢中で宿に向かって走った。
しばらくすると、地響きはピタリと収まった。
あとには葉のこすれ合う音と、鳥のさえずりがあるだけ。
まるで何事もなかったかのようだ。
全速力で走ったので、皆一斉に座り込む。ここから港町までどれくらいか考えると、気が遠くなる。
「俺、先に行って、宿のスネークを出してもらうよ」
青野君がそう言って走り出しかけたとき、一台のスネークがこっちに向かって走ってきた。
スネークは私たちの前に音もなく停車した。乗降口が開く。
「早く乗れ。宿まで戻るぞ」
聞き覚えのある、運転士さんの声。
「宿に皆を降ろして、すぐに引き返したんだが、どうも同じところをぐるぐる回っちまってな。奇妙な森だ」
金髪の運転手さんはスネークを揺らさないように極力配慮しながら、できる限り宿に急いでくれているようだった。そっか、あのあと私たちを心配して、戻ってきてくれたんだね。カリファーさんは私たち以外を近づけさせないために、森を操作してたみたいだ。
シオンお姉様も、美羅ちゃんも、気を失っているけれど体は温かく、魔法力が徐々に戻れば、大丈夫そうだ。
どっちかっていうと、エメルの方が辛そう。
(ゆの、しおんはだいじょうぶだよ。えめるがくちづけで、まほうりょくをしおんにわたしたから)
「えっ。そうなの」
「うわ、びっくりした。どうした、結乃」
「あ、ううん、ごめん青野君」
青野君の頭の上に乗っているシロが言った言葉にびっくりした。
それだけシオンお姉様は衰弱していたってことだよね。口から直接魔法力を注がなきゃいけないほど。
スネークが宿に到着した。時刻は夕方になっていた。
エメルはスネークを降りるときに、運転席に座る運転士さんに向かって、
「どうもありがとうございました」
と頭を深く下げた。
運転士さんは「まだこれから仕事なんだ。さっさと降りな」と前を向いたまま言っただけだった。
美羅ちゃんとエメルは青野君と三つ子さんたちに任せて、私はシオンお姉様の様子を見守ることになった。
シオンお姉様は宿に部屋を取っていなかったので、急遽私の部屋に運んでもらった。
額にタオルを乗せたり、汗を拭いたりして看病していると、ほどなくしてシオンお姉様は目を覚ました。
「ユノ……?」
目を覚ましたお姉様ははっと我に返ると、がばと跳ね起きて、私の腕を掴んだ。
「ユノ、エメル魔導師は? どうなったの? 彼、多くの魔法力を私に分け与えてくれて」
こんなに取り乱すお姉様を初めて見た。
「落ち着いて下さい、お姉様。エメルは隣の部屋にいます。青野君たちが看病してるから、大丈夫……」
言い終わる前にお姉様はベッドから飛び降り、隣の部屋へかけて行った。
地響きとともに短い縦揺れがあったあと、激しい横揺れが私たちを襲った。地面がまるで波打っているみたい。
(我は眠る。この場は閉じるから、早く離れろ。一緒に眠ることになるぞ)
「ええ!?」
カリファーさんの言葉に仰天する。逃げる前にシオンお姉様たちを助けなきゃ!
「ユノ、ミランダ様、アーキス!」
エメルがシオンお姉様を抱えてこっちへ走ってくるところだった。お姉様は力なくぐったりしている。
「シオン様は大丈夫だ。早くここを離れよう」
そう言うエメルの顔色もかなり悪い。魔法力を大分吸い取られてしまったようだ。
シオンお姉様のドレスからシロが飛び出て、当然のように青野君の頭の上に乗った。
揺れが激しくなる。
私は青野君に手を引かれ、美羅ちゃんは三つ子さんの一人に背負われている。とにかく無我夢中で宿に向かって走った。
しばらくすると、地響きはピタリと収まった。
あとには葉のこすれ合う音と、鳥のさえずりがあるだけ。
まるで何事もなかったかのようだ。
全速力で走ったので、皆一斉に座り込む。ここから港町までどれくらいか考えると、気が遠くなる。
「俺、先に行って、宿のスネークを出してもらうよ」
青野君がそう言って走り出しかけたとき、一台のスネークがこっちに向かって走ってきた。
スネークは私たちの前に音もなく停車した。乗降口が開く。
「早く乗れ。宿まで戻るぞ」
聞き覚えのある、運転士さんの声。
「宿に皆を降ろして、すぐに引き返したんだが、どうも同じところをぐるぐる回っちまってな。奇妙な森だ」
金髪の運転手さんはスネークを揺らさないように極力配慮しながら、できる限り宿に急いでくれているようだった。そっか、あのあと私たちを心配して、戻ってきてくれたんだね。カリファーさんは私たち以外を近づけさせないために、森を操作してたみたいだ。
シオンお姉様も、美羅ちゃんも、気を失っているけれど体は温かく、魔法力が徐々に戻れば、大丈夫そうだ。
どっちかっていうと、エメルの方が辛そう。
(ゆの、しおんはだいじょうぶだよ。えめるがくちづけで、まほうりょくをしおんにわたしたから)
「えっ。そうなの」
「うわ、びっくりした。どうした、結乃」
「あ、ううん、ごめん青野君」
青野君の頭の上に乗っているシロが言った言葉にびっくりした。
それだけシオンお姉様は衰弱していたってことだよね。口から直接魔法力を注がなきゃいけないほど。
スネークが宿に到着した。時刻は夕方になっていた。
エメルはスネークを降りるときに、運転席に座る運転士さんに向かって、
「どうもありがとうございました」
と頭を深く下げた。
運転士さんは「まだこれから仕事なんだ。さっさと降りな」と前を向いたまま言っただけだった。
美羅ちゃんとエメルは青野君と三つ子さんたちに任せて、私はシオンお姉様の様子を見守ることになった。
シオンお姉様は宿に部屋を取っていなかったので、急遽私の部屋に運んでもらった。
額にタオルを乗せたり、汗を拭いたりして看病していると、ほどなくしてシオンお姉様は目を覚ました。
「ユノ……?」
目を覚ましたお姉様ははっと我に返ると、がばと跳ね起きて、私の腕を掴んだ。
「ユノ、エメル魔導師は? どうなったの? 彼、多くの魔法力を私に分け与えてくれて」
こんなに取り乱すお姉様を初めて見た。
「落ち着いて下さい、お姉様。エメルは隣の部屋にいます。青野君たちが看病してるから、大丈夫……」
言い終わる前にお姉様はベッドから飛び降り、隣の部屋へかけて行った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
23
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる