男装魔法師団団長は第三王子に脅され「惚れ薬」を作らされる 両思い編

コーヒーブレイク

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かき氷を食べよう 後編

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 フェリクスは迷わず「わさび味かき氷」を選んだ。

「やっぱり団長はわさびなんですね。俺はいちごにしようかな」

「僕はメロン」

「ブルーハワイってどんな味かよくわかんないけど、ブルーハワイにしてみるか」

 各々かき氷屋の店主に注文する。

 店主は中年の男性で、「はいよ」とぶっきらぼうに答え、かき氷を手早く作っていく。無口な質なようだ。

 すぐにフェリクスの前にわさび味かき氷が出された。

 氷の上に緑色のシロップがかかり、わさびの匂いがする。

「へえ、これがかき氷か」

 フェリクスはスプーンですくい、一口食べた。冷たくておいしい。わさびの味が口に広がる。氷のシャリシャリ感と、わさびの辛さが程よく絡んでおり、どんどん食べたくなるおいしさだ。

「わさびのつんとくる味が氷と相性がよくて、とてもおいしいよ」

 フェリクスはかき氷を夢中で食べた。それを見た店主が、

「魔法師団の団長さんに気に入ってもらえたなら光栄だよ」

 と、表情は変えずにまたぶっきらぼうに言った。

「今日のような暑い日に、とてもありがたいです。なんといってもわさびですね」

 そう店主に返すフェリクスに対し、団員の一人が、ふうっと呆れたようにため息をついた。

「団長は浅はかですねえ」

「あ、あさはか!?」

 驚いて聞き返す。私の何が浅はかだというのか。
 団員は冷静な態度で言葉を続ける。その団員の手にはメロンシロップのかき氷がある。

「こういうかき氷のシロップは、色と匂いが違うだけで、味は全部ほとんど一緒なんですよ」

「え? まさか、だってわさびの味がするし……」

 フェリクスは反論し、かき氷を食べた。そう言われると、辛いのかどうか、よく分からない気持ちになってくる。
 まさか。色と匂いに騙されていたのか。
 とはいえ、おいしいものはおいしいから、それはそれでいいような気もする。

 会話を聞いているであろう、店主はだんまりだ。そうしておもむろに、

「お代。一人15ピース(エルドゥ王国の通貨単位1500円くらいだと思ってください)だよ」

 と言った。


 かき氷にシロップを乗せただけなのに、結構高いな……。



 ♦♦♦


「そういえばフェリシア、君最近かき氷ファンになったのか?」


 魔法師団団長室にお茶をしに来たミランが、思い出したようにそう言った。


 フェリシアはわさびせんべいをかじりながら「かき氷ファン? 私が? どうしてです」とソファの対面に座るミランに尋ねる。

 期間限定エルドゥプリンまんじゅうを頬張っていたミランは、まんじゅうを紅茶で流し込みながらこう言った。

「貴族学校でもちきりだよ。魔法師団団長、フェリクス・ブライトナーも虜になったわさびかき氷、王宮前の広場で絶賛発売中ってね。今でも君のファンの女性たちが列をなして買っているよ。値段は20ピース」


 それを聞いたフェリシアは驚きを通り越して、呆れてしまった。確かに、


『わさびのつんとくる味が氷と相性がよくて、とてもおいしいよ』

『今日のような暑い日に、とてもありがたいです。なんといってもわさびですね』


 って私、思わず言ったけど。

 路地裏で売っていたのに、王宮前の広場に出店? 何気に値段も上がってるし。

 あの寡黙に見えた店主は、商売っ気なさそうに見えて、やり手らしい。利用できるものは利用するのか。


 その後、エルドゥ王国の暑さが落ち着くまで、フェリクスを虜にしたわさびかき氷は王宮前で売られることとなったのだった。



 かき氷を食べよう  終わり。
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