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月見バーガーを食べよう (完)
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※今回作者の高校生時代が反映されたファッションでお送りします。
「ねえフェリシア、今日マックで、月見バーガー食べに行かない?」
友達に肩を叩かれ、フェリシアは振り返る。
「月見バーガー?」
って、なんだっけ。
記憶の糸を辿っているフェリシアをよそに、友達は続ける。
「ほら今日から発売してるじゃない、ね、学校終わったら行こうよ。いつもの駅前の」
「うん、わかった。一緒に行こう」
ああ、うんうん、そう、月見バーガー。
毎年秋になると発売される期間限定ハンバーガー。
なんですぐに思い出せなかったんだろう? 変なの。
「どしたの、フェリシア、ぼうっとして?」
「ちょっと月見バーガーど忘れしちゃって、なんだったっけって考えてた」
「マジ? チョーウケる。フェリシア天然~」
「だよねー、マジヤバイよね」
あははは、と笑いながらフェリシアは「私ってこんな話し方していたっけ?」と違和感を覚える。見下ろしてみれば、自分はずいぶんと短いスカートを履いていて、ふくらはぎまでの白い靴下は、足首の方でくしゃくしゃとルーズな感じでたるんでいる。
目の前の友達も同じ服装だ。制服の上にだぼっとしたカーディガンを着て、胸元のリボンはゆるく止めている。
イマドキの女子高生なら当たり前の格好。
なんで違和感を覚えたんだろう? いつも着ている制服なのに。おかしいなあ。
私はフェリシア・ローデンバルト。十七歳。女子高生……だよね?
夏が暑すぎて、頭おかしくなっちゃったのかなあ? マジでヤバいね。チョベリバ~。
♦♦♦
「月見キター」
「月見マジウマー」
マックで友達と向き合いながら、おなじみ月見バーガーを頬張る。ついでにポテトとシェイクも頼んだ。
「やっぱ月見だね、フェリシア」
「うん、秋が来たってカンジ。ミラン殿下にも食べさせてあげたいな」
「は? なに、ミランって?」
「え?」
「は?」
「ワケワカメ」
「あはははは、だよね、誰だよ、ミランって」
「あたし、来週からここでバイトしようと思っててさ、マジ金なくて。フェリシアもやらない?」
「やるやる、パケ代足りないの。新しいCDも欲しいし」
「決まりだね。またメールするよ」
「オッケー」
♦♦♦
「何がオッケーなのさ?」
「オッケー……はっ? あ、あれ、ミラン殿下!?」
目の前に、にやけたミランの顔があった。
フェリシアは慌てて身を起こす。
魔法師団団長室の、ソファーの上だった。
「ミラン殿下、私、オッケー、って言ってました?」
「うん、言ってたけど。君が寝言なんて珍しいね。チョベリバってなに?」
「え? チョベ……なんですか、それ」
ありがちだが、起きた途端夢の内容は霧散していく。その中で、ひとつだけ鮮明に覚えていた単語があった。
「ツキミバーガー」
「え? キミハバカ? なにそれ」
「ツキミバーガーですってば。私、夢の中で食べたんです。パンズにパティと卵をはさんで、とてもおいしかった」
「ツキミってどういう意味?」
ミランが首を傾げる。そう聞かれても、夢の中で「ツキミ」についての説明はなかった。フェリシアも「なんでしょう? わかりません。占いの一種でしょうか」と首を捻る。
後日、フェリシアは自身の記憶を頼りに、王宮のキッチンで「ツキミバーガー」を大量に作った。けっこう上手くできた、と自分でも思い、ひとつぱくりと食べる。やっぱりおいしいと思う。よし、皆の感想も聞こう。
魔法師団の訓練が終わった後、魔法師団団長フェリクス・ブライトナーは、王宮の食堂で団員に「ツキミバーガー」を配った。
「ええ~、またミラン殿下のために作ったお菓子の失敗作ですか?」
と、団員たちは不安顔だったが「ツキミバーガー」をぱくりと食べると「美味い!」と大絶賛だった。
「美味いですよ、団長」
「とろり卵がたまらん」
「手軽に食べられるのもいいです」
フェリシアは団員たちの賞賛に対し満足げに頷くと、満を持して、一番上手く、きれいにできたとっておきのツキミバーガーをマネージャーのミランに差し出す。しかも他の団員達とは違い、三段だ。
「ミラン殿下、どうぞ」
「わーい、ありがとう、フェリクス殿」ぱくっ。ぱくっ。
ミランは二口で食べきってしまった。
「すごく美味しいね。王宮のメニューに取り入れるよう頼んでみよう」
「ちょ、ミラン殿下だけ三段!?」
「贔屓だ贔屓」
「俺たち毎日頑張ってるのに」
団員からの芝居がかったブーイング。
「君たちのもまだまだあるよ。たくさんどうぞ」
フェリクスも一つ手に取り、口を大きく開けてぱくりとかぶりつく。今は貴族女性じゃなく、フェリクスなんだから、いいよね。ソースが口につくのもかまわない。
それにしても、あの夢は、なんだったんだろう。なんだか奇抜な制服を着ていたような気が……スカートがすごく短くて、靴下がくしゃくしゃで……
どこかにあんな世界があるのかな……
ツキミバーガーを頬張りながら、そんなふうに思うフェリクスだった。
月見バーガーを食べよう (完)
「ねえフェリシア、今日マックで、月見バーガー食べに行かない?」
友達に肩を叩かれ、フェリシアは振り返る。
「月見バーガー?」
って、なんだっけ。
記憶の糸を辿っているフェリシアをよそに、友達は続ける。
「ほら今日から発売してるじゃない、ね、学校終わったら行こうよ。いつもの駅前の」
「うん、わかった。一緒に行こう」
ああ、うんうん、そう、月見バーガー。
毎年秋になると発売される期間限定ハンバーガー。
なんですぐに思い出せなかったんだろう? 変なの。
「どしたの、フェリシア、ぼうっとして?」
「ちょっと月見バーガーど忘れしちゃって、なんだったっけって考えてた」
「マジ? チョーウケる。フェリシア天然~」
「だよねー、マジヤバイよね」
あははは、と笑いながらフェリシアは「私ってこんな話し方していたっけ?」と違和感を覚える。見下ろしてみれば、自分はずいぶんと短いスカートを履いていて、ふくらはぎまでの白い靴下は、足首の方でくしゃくしゃとルーズな感じでたるんでいる。
目の前の友達も同じ服装だ。制服の上にだぼっとしたカーディガンを着て、胸元のリボンはゆるく止めている。
イマドキの女子高生なら当たり前の格好。
なんで違和感を覚えたんだろう? いつも着ている制服なのに。おかしいなあ。
私はフェリシア・ローデンバルト。十七歳。女子高生……だよね?
夏が暑すぎて、頭おかしくなっちゃったのかなあ? マジでヤバいね。チョベリバ~。
♦♦♦
「月見キター」
「月見マジウマー」
マックで友達と向き合いながら、おなじみ月見バーガーを頬張る。ついでにポテトとシェイクも頼んだ。
「やっぱ月見だね、フェリシア」
「うん、秋が来たってカンジ。ミラン殿下にも食べさせてあげたいな」
「は? なに、ミランって?」
「え?」
「は?」
「ワケワカメ」
「あはははは、だよね、誰だよ、ミランって」
「あたし、来週からここでバイトしようと思っててさ、マジ金なくて。フェリシアもやらない?」
「やるやる、パケ代足りないの。新しいCDも欲しいし」
「決まりだね。またメールするよ」
「オッケー」
♦♦♦
「何がオッケーなのさ?」
「オッケー……はっ? あ、あれ、ミラン殿下!?」
目の前に、にやけたミランの顔があった。
フェリシアは慌てて身を起こす。
魔法師団団長室の、ソファーの上だった。
「ミラン殿下、私、オッケー、って言ってました?」
「うん、言ってたけど。君が寝言なんて珍しいね。チョベリバってなに?」
「え? チョベ……なんですか、それ」
ありがちだが、起きた途端夢の内容は霧散していく。その中で、ひとつだけ鮮明に覚えていた単語があった。
「ツキミバーガー」
「え? キミハバカ? なにそれ」
「ツキミバーガーですってば。私、夢の中で食べたんです。パンズにパティと卵をはさんで、とてもおいしかった」
「ツキミってどういう意味?」
ミランが首を傾げる。そう聞かれても、夢の中で「ツキミ」についての説明はなかった。フェリシアも「なんでしょう? わかりません。占いの一種でしょうか」と首を捻る。
後日、フェリシアは自身の記憶を頼りに、王宮のキッチンで「ツキミバーガー」を大量に作った。けっこう上手くできた、と自分でも思い、ひとつぱくりと食べる。やっぱりおいしいと思う。よし、皆の感想も聞こう。
魔法師団の訓練が終わった後、魔法師団団長フェリクス・ブライトナーは、王宮の食堂で団員に「ツキミバーガー」を配った。
「ええ~、またミラン殿下のために作ったお菓子の失敗作ですか?」
と、団員たちは不安顔だったが「ツキミバーガー」をぱくりと食べると「美味い!」と大絶賛だった。
「美味いですよ、団長」
「とろり卵がたまらん」
「手軽に食べられるのもいいです」
フェリシアは団員たちの賞賛に対し満足げに頷くと、満を持して、一番上手く、きれいにできたとっておきのツキミバーガーをマネージャーのミランに差し出す。しかも他の団員達とは違い、三段だ。
「ミラン殿下、どうぞ」
「わーい、ありがとう、フェリクス殿」ぱくっ。ぱくっ。
ミランは二口で食べきってしまった。
「すごく美味しいね。王宮のメニューに取り入れるよう頼んでみよう」
「ちょ、ミラン殿下だけ三段!?」
「贔屓だ贔屓」
「俺たち毎日頑張ってるのに」
団員からの芝居がかったブーイング。
「君たちのもまだまだあるよ。たくさんどうぞ」
フェリクスも一つ手に取り、口を大きく開けてぱくりとかぶりつく。今は貴族女性じゃなく、フェリクスなんだから、いいよね。ソースが口につくのもかまわない。
それにしても、あの夢は、なんだったんだろう。なんだか奇抜な制服を着ていたような気が……スカートがすごく短くて、靴下がくしゃくしゃで……
どこかにあんな世界があるのかな……
ツキミバーガーを頬張りながら、そんなふうに思うフェリクスだった。
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