男装魔法師団団長は第三王子に脅され「惚れ薬」を作らされる 両思い編

コーヒーブレイク

文字の大きさ
4 / 72

ミランの災難 3

しおりを挟む
 魔法師団としての仕事が終われば、フェリクスはミランと二人きりのとき「フェリシア」に戻っていた。

 フェリクスは立場上、国の王子であるミランの私室においそれと入れないので、ミランの方が毎日魔法師団団長室を訪れ、マネージャーとして魔法師団の仕事の確認をさっさと済ませ、フェリクスの自室で二人きりのひとときを過ごすのが常だった。

「毎日キスしてりゅけど、今日は出来ないからっ」

 ミランはすでに膨らんでいる頬をもっと膨らませてそっぽを向いた。可愛い系第三王子じゃなくて、あざとい系に路線変更したようだ。

「ちょ、ちょっとミラン殿下」

 突然何を言いだすんだと、フェリクスはあたふたした。そんなこと、誰かに聞かれたらどうする。いい加減、他の団員がもうすぐやってくる時間だ。
 その一方で「今日のキスはなしか」と心の中でがっかりしている自分に気がつき、情けなさで泣けてくる。

 結局、私はミラン殿下が好きで好きでしょうがないんだ……。

「あーあ、ざんねんだにゃあ、君が、まひょうで、僕の虫歯をなおしれくれたりゃ、ひょうもずっといちゃいちゃできりゅのに」

 最早何を言っているのか分からない第三王子は、追い風が自分に吹いていることに気がつき、勝ち誇った顔でフェリクスをちらりと見る。顔が歪んでいてあまり様になっていない。

「わ、私はただミラン殿下のために言ってるんです。いざぎよく、虫歯治療してきてください」

「ふぇりしあは、僕と、いちゃいちゃしたくなひのか」

「い、いちゃいちゃんなんて、私はそんな」

「したくなひ!?」

「し、したい……って、君たち! 遅いぞ! い、今から訓練を始める! 各自準備しろ!」

 心を鬼にする決心がぐらついたフェリクスだが、すんでで「魔法師団団長、フェリクス・ブライトナー」を取り戻した。
 他の団員数名が、やっと訓練場に現われ、欠伸しながらこっちに向かってきたのだ。公私混同、ダメ、絶対!

「くそう、もうしゅこしだったのひ(もう少しだったのに)」

 ミランは悔しそうにうっかり歯ぎしりして「いたたたた!」と頬を抑えた。

「ミラン殿下、今日は貴族学校をお休みして、今から歯の治療に向かって下さい」

 自分のペースを取り戻したフェリクスは、元のクールな態度に戻っていた。その顔は、キリリと凛々しい、魔法師団団長。こうなってしまっては、ミランは観念するしかなかった。

「どうしたんスか、団長。今日は気合入ってますね」

「もうウォーミングアップしたんですか? 顔が赤いですよ」

「ま、まさかミラン殿下と秘密の話を? 俺ら邪魔でしたか」

 フェリクスとミランのやり取りを知っているはずないのだが、フェリクスとミランの関係を知っている団員は、あからさまににやにやして、からかった。

「な、なににやにやしてるんだ! いくら国が平和だからって、魔法師団として、最近たるんでるよ! 気合い入れて魔法の訓練を怠らないで! いいね!」

 フェリクスが活を入れると、団員は「はーい」とやっぱりにやにやしながら、各自ウォーミングアップアップに入っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました

さら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。 裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。 「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。 恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……? 温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。 ――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!? 胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

処理中です...