男装魔法師団団長は第三王子に脅され「惚れ薬」を作らされる 両思い編

コーヒーブレイク

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マンネリ化? (完)

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 射貫くようなはしばみ色の瞳に、フェリシアは言葉を発することができないほど、囚われてしまう。
 いつもそうだ。
 猪突猛進で危なっかしかったり、子供っぽいところがあるくせに、ときに、精悍な男性の顔をする。

 私は……今、ミラン殿下の前でどんな顔をしているだろう?

 ミランの手を取って立ち上がりながら、フェリシアはふとそんなことを考える。

「何考えているのさ」

 見透かしたようにミランがフェリシアを抱き寄せ、キスをした。フェリシアを見上げるその顔には、どことなく余裕な表情がうかがえる。

 ん? 余裕? 余裕と言えば。

 フェリシアははっとした。
 そうだ、悔しいけれど、勝ち抜きバトルを優勝したあの団員に夕ご飯を奢らなくてはならないんだった。
 あの団員は見どころがある。魔力量も申し分ないし、魔法の使い方も上手だ。
 いずれは次の団長に……。

「こら! やっぱり別のこと考えてるだろフェリシア!」

「えっ」

 頬を大きな手のひらで挟まれ、フェリシアは二度目のはっとをした。

「まったく、フェリクスの顔になっていたぞ。魔法師団のことを考えていたのか」

 見下ろす先にはこちらも二度目のふくれっ面をしたミランがいた。さっきまでの精悍な顔が台無しだ。
 こっちも可愛いけど。

「いいえ。ミラン殿下の瞳の虜になっていました」

「また適当なことを……僕のエスコートが不満か?」

 エスコートって、フェリシアの自室……すぐそこまでだけど。

「滅相もございません。光栄の至りです」

 今度は、フェリシアからミランにキスをする。再び二人の間に甘いムードが流れ……た、が、

『フェリクス団長、助けて下さい』

 王宮の酒場からの魔法通話でそれはあっけなくかき消された。

「なんなんだよ、こんなタイミングで!」

「ミラン殿下、お静かに。通話が聞こえません」

『魔法師団の団員数名が、酔って潰れて帰ってくれません。そのうちの一人は俺が優勝、とか騒いで、もうどーにもなりません! なんとかして下さいフェリクス団長』

 俺が優勝……余裕団員だな。
 魔法ガチバトルのことは内緒のはずなのに。
 大方、優勝が嬉しくて友人の団員と早々に飲みに行った、ということだろう。
 こんなことならはやく夕ご飯を奢って優勝を称えてあげるんだった……。

「分かりました、すぐに向かいます。いつもご迷惑をかけて申し訳ない」

『すみません、お休みのところ』

 魔法通話を終えたフェリシアは、申し訳ない顔で、ミランに事の次第を告げた。ミランは「そういうことなら仕方がない」と頷いたが、その顔は不満そうだ。それはそうだ。お休みどころか今始まろうとしていたところなのに。

「そんな顔しないで下さい。私もかなりがっかりですが、魔法師団の団長として無視することはできません。それでは行って参ります。すぐ、本当にすぐ戻ってきますから!」

「そんなに気にするんじゃないよ。僕は逃げないからね」

 フェリシアのセリフに、ミランは苦笑して答えた。

 心の中はミランとの時間を邪魔されて荒れ狂うフェリシアだが、その表情はいつものクールな魔法師団団長のフェリクス・ブライトナーそのものだ。
 浮遊魔法で王宮の廊下を急ぐその凛々しい横顔に、夜間警備の女性兵士たちは歓声を上げる。
 彼女たちに華麗な流し目を送りながら、当のフェリクスは、

 もう! 彼を次の団長に推すかは保留! しばらくは私が団長を続けなくちゃ!

 と、心の中で決意するのだった――。


 ちなみに「魔法師団マンネリ化」については「料理対決」と「ファッションショー」を足して二で割ったものが採用された。
 おしゃれな私服にエプロン姿の団員たちが数名ずつのグループに分かれ、料理を作り(魔法禁止)、ファンの方々に振舞う。
 フェリクスは、ミランと余裕団員と組んだ。
 真剣に料理したが、フェリクス以外の二人は料理をしたことがほとんどなかったため、最後に鍋が爆発し、三人は消火作業と片付けに追われ、ファンに微笑ましく笑われた。

 ……結果散々だったが、おおむね好評に終わり、定期的に開催されることになった。
 何より歌を歌わなくて済み、とりあえずホッとするフェリクスだった。


 マンネリ化? (完)
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