54 / 72
魔物たちの会話 2
しおりを挟む
ポン助の言葉に、パタパタは憤慨した。
「殺すつもりなんてなかったんだ。急に成長期が来てパニックになって、魔物の本能が出ちまったんだ」
一年前。
フェリクスの団長就任式が行われたとき、パタパタはまだ幼体……子供の姿だった。その姿はまるで大きなトカゲのようで、長い尻尾を持っている。
重要な式である就任式のパフォーマンスに抜擢されたことを知ったパタパタは、その長い尻尾をパタパタさせて喜んだものだ。彼の「パタパタ」という名前はここから訓練係が名付けた。
そう、当初はパタパタがいずれ変態することを、訓練係は知らなかったのだ。
パタパタ自身も知らなかった。魔物管理舎の中には、他に自分と同じ種の魔物はいなかった。
ただ、就任式当日、なんだか体がおかしい……とはパタパタ自身、感じていた。
「体の調子がおかしいと俺は分かっていたが、せっかくのパフォーマンス出演のチャンスを、俺は逃したくなかった。リハも問題なかったし、大丈夫だ、やれる、と俺は思った」
気づけばパタパタはポン助とグルグル姉に向かって一年前のことを長々と語っていた。
「まさかこの姿が俺の本当の姿だったとは! パニックになった俺はわけが分からなくなり、暴れ、フェリクスを糸でぐるぐる巻きにしちまった。挙句魔力まで吸い取っちまって」
「だからさ、キミはフェリシアを殺しかけたんでしょ」
ポン助は話が長いよとばかりに、欠伸しながら言った。グルグル姉は「またその話か……」と呆れてとぐろをまいてしまった。
「ちゃんと最後まで聞け、新入り! リステアードに鎖でぐるぐる巻かれ、フェリクスに攻撃魔法をくらって気絶した俺は、そのあと謹慎となって、最近までパフォーマンスに出られなかった。俺はその間に訓練を重ね、反省し、フェリクスにだってちゃんと謝ったんだ。フェリクスは笑って許してくれた」
「フェリシアは僕ら魔物にも優しいからね」
どこか得意げなポン助の物言いに、パタパタはカチンときたようで、一気に畳みかける。
「久々にパフォーマンス復帰してみれば、お前だ。隣の国からやってきたらしいが、魔物のくせになんで魔法師団側についてんだよ! 俺たち魔物は魔法師団の適役だろう? それなのにお前と来たら、フェリクスの肩に乗って、挙句魔法師団のマスコットとか言って女性陣に可愛がられ……」
「僕には得意な変身魔法があるから、みんなに重宝がられてるのさ」
そう言って、ポン助はポンっとフェリクス・ブライトナーに変身した。
「本当にそっくりね。はじめはあんまりうまくなかったけど……最近はミラン殿下にも完璧に変身できるのよね」
とぐろから顔を出したグルグル姉が感心の声を上げる。
フェリクスの完璧な変身を目の当たりにしたパタパタは面白くなさそうに床へ糸をペッと吐き、グルグル姉に「汚い」と叱られた。
「と、とにかく、どんなに魔法が上手かろうが、新入りは新入りだ。新入りの試験ってものを受けてもらうぜ」
床を羽で拭きながらパタパタは言う。
「試験?」
ポン助はフェリクスの顔で首を傾げる。
「まったく、パタパタさんだってまだ若いのに、先輩ぶっちゃって。貴方がこの魔物管理舎に入って来たとき、試験なんてなかったじゃない」
グルグル姉は呆れた……とでもいうようにパタパタを見やり、ポン助にこう言った。
「相手にしちゃだめよ、ポン助ちゃん」
「大丈夫だよ、グルグルさん。で? パタパタ先輩、試験の内容は?」
先輩、と呼ばれたパタパタは気をよくしたようで「そうだな……難しいのは可哀想だから簡単なのにしてやろう」と言った。単純な性格のようだ。
「よし、王宮の調理場から、なにかうまそうなものを取って来るんだ。人間に化ければ簡単だろう」
パタパタがそう言うと、呆れていたグルグル姉も小さな目を輝かせた。
「あら、いいわね。たまには人間の食べ物も食べたいわ」
グルグル姉は食べるのが好きらしい。
その言葉を聞いたポン助はフェリクスの顔で、にやりと笑った。
「分かった、いいよ。調理場から適当においしそうなものを持ってくるよ」
「殺すつもりなんてなかったんだ。急に成長期が来てパニックになって、魔物の本能が出ちまったんだ」
一年前。
フェリクスの団長就任式が行われたとき、パタパタはまだ幼体……子供の姿だった。その姿はまるで大きなトカゲのようで、長い尻尾を持っている。
重要な式である就任式のパフォーマンスに抜擢されたことを知ったパタパタは、その長い尻尾をパタパタさせて喜んだものだ。彼の「パタパタ」という名前はここから訓練係が名付けた。
そう、当初はパタパタがいずれ変態することを、訓練係は知らなかったのだ。
パタパタ自身も知らなかった。魔物管理舎の中には、他に自分と同じ種の魔物はいなかった。
ただ、就任式当日、なんだか体がおかしい……とはパタパタ自身、感じていた。
「体の調子がおかしいと俺は分かっていたが、せっかくのパフォーマンス出演のチャンスを、俺は逃したくなかった。リハも問題なかったし、大丈夫だ、やれる、と俺は思った」
気づけばパタパタはポン助とグルグル姉に向かって一年前のことを長々と語っていた。
「まさかこの姿が俺の本当の姿だったとは! パニックになった俺はわけが分からなくなり、暴れ、フェリクスを糸でぐるぐる巻きにしちまった。挙句魔力まで吸い取っちまって」
「だからさ、キミはフェリシアを殺しかけたんでしょ」
ポン助は話が長いよとばかりに、欠伸しながら言った。グルグル姉は「またその話か……」と呆れてとぐろをまいてしまった。
「ちゃんと最後まで聞け、新入り! リステアードに鎖でぐるぐる巻かれ、フェリクスに攻撃魔法をくらって気絶した俺は、そのあと謹慎となって、最近までパフォーマンスに出られなかった。俺はその間に訓練を重ね、反省し、フェリクスにだってちゃんと謝ったんだ。フェリクスは笑って許してくれた」
「フェリシアは僕ら魔物にも優しいからね」
どこか得意げなポン助の物言いに、パタパタはカチンときたようで、一気に畳みかける。
「久々にパフォーマンス復帰してみれば、お前だ。隣の国からやってきたらしいが、魔物のくせになんで魔法師団側についてんだよ! 俺たち魔物は魔法師団の適役だろう? それなのにお前と来たら、フェリクスの肩に乗って、挙句魔法師団のマスコットとか言って女性陣に可愛がられ……」
「僕には得意な変身魔法があるから、みんなに重宝がられてるのさ」
そう言って、ポン助はポンっとフェリクス・ブライトナーに変身した。
「本当にそっくりね。はじめはあんまりうまくなかったけど……最近はミラン殿下にも完璧に変身できるのよね」
とぐろから顔を出したグルグル姉が感心の声を上げる。
フェリクスの完璧な変身を目の当たりにしたパタパタは面白くなさそうに床へ糸をペッと吐き、グルグル姉に「汚い」と叱られた。
「と、とにかく、どんなに魔法が上手かろうが、新入りは新入りだ。新入りの試験ってものを受けてもらうぜ」
床を羽で拭きながらパタパタは言う。
「試験?」
ポン助はフェリクスの顔で首を傾げる。
「まったく、パタパタさんだってまだ若いのに、先輩ぶっちゃって。貴方がこの魔物管理舎に入って来たとき、試験なんてなかったじゃない」
グルグル姉は呆れた……とでもいうようにパタパタを見やり、ポン助にこう言った。
「相手にしちゃだめよ、ポン助ちゃん」
「大丈夫だよ、グルグルさん。で? パタパタ先輩、試験の内容は?」
先輩、と呼ばれたパタパタは気をよくしたようで「そうだな……難しいのは可哀想だから簡単なのにしてやろう」と言った。単純な性格のようだ。
「よし、王宮の調理場から、なにかうまそうなものを取って来るんだ。人間に化ければ簡単だろう」
パタパタがそう言うと、呆れていたグルグル姉も小さな目を輝かせた。
「あら、いいわね。たまには人間の食べ物も食べたいわ」
グルグル姉は食べるのが好きらしい。
その言葉を聞いたポン助はフェリクスの顔で、にやりと笑った。
「分かった、いいよ。調理場から適当においしそうなものを持ってくるよ」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜
束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。
家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。
「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。
皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。
今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。
ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……!
心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する
紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!!
完結済み。
毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる