僕のご主人様の作品が、読まれない!

コーヒーブレイク

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僕のご主人様の作品が、読まれない!

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「ねえ、マシュマロ。最近のご主人様、どう思う?」

 黒猫である「僕」は、僕と同じ飼い猫である白猫のマシュマロにたずねた。

「職場と家を往復するだけの毎日、二十八歳、彼氏なし、貯金なし。趣味は深夜アニメを見ること……相変わらず地味で華がなくて、どうしようもねー女だな」

 マシュマロはご主人様のベッドの上で毛づくろいしながら答えた。

「そういうこと言ってるんじゃないよ。というか、マシュマロ、僕らのご主人様に対してひどすぎるよ」

「本当のことじゃねーか。それにしてもココア、あかりのことを『ご主人様』って呼ぶのいい加減よせよ。俺達猫は誰にも支配されない、そうだろう?」

「昨日おやつの『ちゅるる』におびき出されて爪切りさせられてたマシュマロが言うセリフじゃないね」

「くっ……。ちゅるるくれるっていうから寄ってったのに、まさか爪切りだとは」

 自分の肉球を見つめてくやしがるマシュマロを横目に、僕は本題を思い出した。

「そうじゃない! ご主人様……あかりちゃんが最近元気がないっていうことを、僕は言いたいんだよ!」

「ああ? そういえば最近あかりのやつ、パソコンの前で『私の書いた小説、全然読まれない~』とか言って、凹んでることが多いな」

「そう、それそれ。あかりちゃん、最近パソコンで小説を書いてるみたいなんだ」

 僕はあかりちゃんの肩に乗りながら、パソコンの画面を一緒に見てるから、知ってるんだ! 

「あかりのやつ、小説家になりたいのか?」

「さあ。それは分からないけど、あかりちゃんの元気がないことは分かる。僕はあかりちゃんに元気になってもらいたい。そのためには……『推し活』だ!」

「推し活?」

 首を傾げるマシュマロに、僕は説明した。

「推し活、っていうのは『好きを応援する活動』のことだよ! あかりちゃんもやってる。ほら、あかりちゃん、深夜アニメの登場キャラで、魔導師の青年が好きでしょ? 彼氏にしたいって言ってるでしょ? グッズたくさん買って、アニメを何回も観て、感想をめちゃくちゃたくさんブログに書いてるでしょ!」

「そんなことまでよく知ってるな、ココア」

「肩に乗って、いつもパソコン見てるからね!」

「で? なんであかりが元気になるためには推し活なんだ」

「察しが悪いなあ、マシュマロは。推し活とは、好きを応援する活動。僕らの『好き』はあかりちゃん。あかりちゃんを応援する……すなわち、あかりちゃんの書いている小説を応援するんだよ! そうすれば、あかりちゃんは元気になる」

「お前って本当興奮するとよくしゃべるな。しっぽ回しすぎ」

 マシュマロはベッドの上から飛び降りた。

「で? 具体的に何するんだ」

「ふふっ。マシュマロってばなんだかんだで乗り気じゃない。やっぱりマシュマロもあかりちゃんに元気になってもらいたいんだね」

「うるせー。何をどうするか言えよ、ココア」

「まずはパソコンの電源を入れるんだ! それからいつもあかりちゃんが見てるサイトにアクセスして、あかりちゃんの書いてる小説を探して、読んで、君の小説は最高だ、という感想を書いて……」

「そんなこと、猫の俺たちに出来るのか?」

「出来る出来ないじゃないよ、やるんだマシュマロ、あかりちゃんのために!」

「……分かったよ、ココア、やろうぜ!」


 二時間後。

 仕事から帰って来た工藤あかりは、猫の毛だらけのパソコンと、床で取っ組み合っている飼い猫二匹を見て茫然とする。

「なにこれ、どういうこと? なんでパソコンの電源が入ってるの? ココア、マシュー、あんたたち、何やったの?」

「にゃーにゃーにゃー!(ほら言っただろ、猫にパソコン操作なんて無理なんだよ!)」

「にゃにゃにゃ!!(マシュマロが僕の言ったとおりのキーを押さないからだろ! 僕のマウス操作は完璧なんだ!)」

「にゃおーん!(じゃあココアがキーを押せよ! 肉球じゃうまく押せねーんだよ)」

 パソコンは電源が入っていたものの、最初のパスワード画面で止まっていた。
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