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猛特訓 5
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「頭大丈夫ですか、リステアード王太子殿下。すごい音がしましたよ」
フェリクスはリステアードの後頭部を調べた。「怪我はしてないようですね、よかった」
リステアードは苦笑いした。
「フェリクス君、頭大丈夫って言い方、もうちょっとなんとかならないかな。まあいいや。俺は大丈夫だから、そんなに心配しないで」
「でも、ちゃんと調べてもらった方が」
「フェリクス殿! こいつが勝手に転んで頭打ったんだ、そんな心配することないよ。もう仕事の時間外だろ、とっとと切り上げて、部屋に帰って、休もう」
ミランはフェリクスとリステアードの間に割って入った。
リステアードは興ざめしたように身を引くと、明らかにミランを無視して、フェリクスに向かってこう言った。
「分かった、念のため救護室に行くよ。頭の内部に損傷があっても、認識していないと自分で治癒魔法かけられないしね。魔道具で頭の中をちゃんと検査してもらうよ。その前に、フェリクス君、必殺技、やってみて」
「え」
突然水を向けられ、フェリクスは間抜けな顔で固まった。
「え、じゃないよ。さっきやってやるって言ってたじゃないか。君がきっちり必殺技を繰り出したら、俺は安心して救護室に行ける」
リステアードはフェリクスの肩を抱くと、ウインクした。
「俺と一緒にやってみよう。いいかい?」
「よくない! さっさと救護室に行けよ、このナンパ王子! フェリクス殿も、肩なんか抱かれて黙ってるなよ!」
ミランが噛みつくと、フェリクスは驚いた顔をした。
「なんでそんなに怒ってるんですか、ミラン殿下。私なら魔法師団として、慣れてるから大丈夫ですよ」
「フェリクス殿、君は、女性の自覚が足りない!」
「えっ」
「はいはい、そこまで。愚かな弟よ、お前は人のことをとやかく言える立場か? ナンパ王子はお前だろ。マルガレーテちゃんにあっちこっちまとわりついて……ああ違った、ナンパ王子じゃなくて、ストーカー王子か? 最終的には、フラれ王子だったなあ!」
リステアードがそう言うが早いか、ミランは兄に飛びかかっていた。
「くそ兄貴! 言っていいことと悪いことがあるぞ! この野郎」
「王太子に殴りかかるとは、いい度胸だなミランよ。だけど本当のことだろ? マルガレーテちゃんに逃げられたのは」
「マルガレーテをそんなふうに呼ぶなっ」
「ぐおおっ。本気で殴りやがったな! いいさ、第一王子と第三王子の格の違い、見せてやる」
フェリクスは床にごろごろ転がりながら殴り合う、エルドゥ王国の王子二人を、なすすべもなく見つめていた。
しばらく見つめていたあと、そおっと後ずさりし、そのまま二人を残し、練習場をあとにした。
……止めに入っても無駄だろうしな。リステアード殿下も大丈夫そうだし、気がつかれないうちに逃げよう。
もうどうすることもできない王子二人に見切りをつけて、フェリクスは団長室に戻ることにした。
魔力はほとんど使っていないが、三時間もリステアードの特訓を受けていたので、さすがに疲れている。
……それにしても、ミラン殿下はなんであんなに怒ってたんだろう。
フェリクスは廊下を歩きながら、ふと、ミランの言葉について考えた。「フェリクス殿、君は、女性の自覚が足りない!」って、男装しているときは、女性扱してもらわなくてもかまわないんだけどな……。
「フェリクス団長、お疲れ様です」
「……あ」
団長室の前に、魔法師団の団員たちが、みんな揃って待っていた。
フェリクスはリステアードの後頭部を調べた。「怪我はしてないようですね、よかった」
リステアードは苦笑いした。
「フェリクス君、頭大丈夫って言い方、もうちょっとなんとかならないかな。まあいいや。俺は大丈夫だから、そんなに心配しないで」
「でも、ちゃんと調べてもらった方が」
「フェリクス殿! こいつが勝手に転んで頭打ったんだ、そんな心配することないよ。もう仕事の時間外だろ、とっとと切り上げて、部屋に帰って、休もう」
ミランはフェリクスとリステアードの間に割って入った。
リステアードは興ざめしたように身を引くと、明らかにミランを無視して、フェリクスに向かってこう言った。
「分かった、念のため救護室に行くよ。頭の内部に損傷があっても、認識していないと自分で治癒魔法かけられないしね。魔道具で頭の中をちゃんと検査してもらうよ。その前に、フェリクス君、必殺技、やってみて」
「え」
突然水を向けられ、フェリクスは間抜けな顔で固まった。
「え、じゃないよ。さっきやってやるって言ってたじゃないか。君がきっちり必殺技を繰り出したら、俺は安心して救護室に行ける」
リステアードはフェリクスの肩を抱くと、ウインクした。
「俺と一緒にやってみよう。いいかい?」
「よくない! さっさと救護室に行けよ、このナンパ王子! フェリクス殿も、肩なんか抱かれて黙ってるなよ!」
ミランが噛みつくと、フェリクスは驚いた顔をした。
「なんでそんなに怒ってるんですか、ミラン殿下。私なら魔法師団として、慣れてるから大丈夫ですよ」
「フェリクス殿、君は、女性の自覚が足りない!」
「えっ」
「はいはい、そこまで。愚かな弟よ、お前は人のことをとやかく言える立場か? ナンパ王子はお前だろ。マルガレーテちゃんにあっちこっちまとわりついて……ああ違った、ナンパ王子じゃなくて、ストーカー王子か? 最終的には、フラれ王子だったなあ!」
リステアードがそう言うが早いか、ミランは兄に飛びかかっていた。
「くそ兄貴! 言っていいことと悪いことがあるぞ! この野郎」
「王太子に殴りかかるとは、いい度胸だなミランよ。だけど本当のことだろ? マルガレーテちゃんに逃げられたのは」
「マルガレーテをそんなふうに呼ぶなっ」
「ぐおおっ。本気で殴りやがったな! いいさ、第一王子と第三王子の格の違い、見せてやる」
フェリクスは床にごろごろ転がりながら殴り合う、エルドゥ王国の王子二人を、なすすべもなく見つめていた。
しばらく見つめていたあと、そおっと後ずさりし、そのまま二人を残し、練習場をあとにした。
……止めに入っても無駄だろうしな。リステアード殿下も大丈夫そうだし、気がつかれないうちに逃げよう。
もうどうすることもできない王子二人に見切りをつけて、フェリクスは団長室に戻ることにした。
魔力はほとんど使っていないが、三時間もリステアードの特訓を受けていたので、さすがに疲れている。
……それにしても、ミラン殿下はなんであんなに怒ってたんだろう。
フェリクスは廊下を歩きながら、ふと、ミランの言葉について考えた。「フェリクス殿、君は、女性の自覚が足りない!」って、男装しているときは、女性扱してもらわなくてもかまわないんだけどな……。
「フェリクス団長、お疲れ様です」
「……あ」
団長室の前に、魔法師団の団員たちが、みんな揃って待っていた。
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