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第4話 向こう側
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「そう! 俺は選ばれたんだよ!」
「ハァ~なあ、そう思うのはあんたの勝手だが、俺達に死体検分させないようにしてくれよな」
「え? それはどういう意味なんですか?」
「どうもこうも、まだ何もハッキリとしたことが分かっていないのに嗅ぎ回って二人目になるなよってことだよ」
「……二人目」
「そう、二人目だ。まあ、ひょっとしたら三人目になるかもな」
「なら、そうなる前に捕まえればいいじゃないですか!」
「誰を? 知っているのなら、教えてくれよ。これから行くからよ」
「……」
「そうだ。あんたも分かっているんだろ。これはヒトがしたことじゃない。俺もハッキリとは言えないし、オカルトを推奨しようとも思ってはいない……がだ!」
「……」
先輩刑事はそこで言葉を句切ると若い社員を睨み付け、興味半分で足を突っ込んでいい状況でないことを説明しようと試みるが、若い社員の方は「それくらいは分かっている」と言い退く様子は見せない。
「分かった。好きにすればいい」
「もとから、そのつもりですよ」
「だが……」
「まだ、何か?」
「俺達があんたを止めたってことは誰かに言うなり、遺書に書くなりしといてくれな」
「それは警察としての意見ですか」
「まあ、そう思ってくれていい。いいか、俺達は手を出すなと忠告したとだけ記してくれればいい。話は以上だ。ありがとうな」
「いえ……では、失礼します」
若い社員が応接室から出て行ったのを確認してから、後輩刑事が言う。
「先輩、もう少し言い方ってものがあるでしょうに……」
「はん! あんな連中に何を言っても右から左だろ」
「でも……はぁ、もういいです。片付けてお礼を言ったら帰りますよ」
「分かったよ」
応接室を出た後に事務員にお礼を言ってから事務所を出れば、いつの間にかカメラやマイクを持った記者達が事務所の前に陣取っていた。
「早くないか?」
「あ~多分、これじゃないですか?」
「これ?」
「ええ、これです。ほら」
「……こんなのあるなんて聞いてないぞ!」
「多分、言うとスマホごと没収されると思ったんじゃないんですか」
「おいおい、いい大人がすることか?」
「それは私に言われても分かりませんよ」
「で、動画は回収したのか?」
「したんじゃないんですか」
「おい!」
「私は先輩と一緒にいたんですよ。きっと他の人が対応していますって」
「そうかい」
後輩刑事が運転席に座り、先輩刑事が助手席に座ると「女子高校生の家に寄ってくれ」と言う。
「え? それって失踪者の……ですか?」
「そうだ」
「理由を聞いても?」
「ああ、関連するかどうかは分からないが、彼女の動画を見せられて死んだんだ。なら、関連性があるのかないのかぐらいは調べておいた方がいいだろう」
「それもそうですね。ちょっと、待って下さい」
「頼む」
後輩刑事がどこかに電話を掛けると短く「ハイ……ハイ……」と繰り返しお礼を言ってから電話を切る。
「住所は分かりました。ここからそう離れてはいないので、このまま行きましょう」
「ああ」
やがて二人を乗せた車はマンションの前に停められ「ここです」と後輩刑事に案内され受付用の操作盤の前に立つと後輩刑事が部屋番号を押し、「警察の者です。少しお話を伺えますか」とインターフォンの向こう側にいるであろう人物に警察手帳を見せながら話しかける。
『どうぞ』と返事がすると同時にエントランスのロックが解除され自動ドアが開き二人は奥へと進む。
エレベーターで目的の階に到着すると「こっちみたいですね」と後輩刑事に案内され玄関扉の前に立ちベルのボタンを押す。
少ししてから、少し窶れた様子の中年女性が玄関扉を開けると「どうぞ」と二人を招き入れる。
二人は応接間に通されると遺影が目に入ったので「お線香を上げさせて下さい」と女性に断ってから仏壇の前に座り、線香を立てるとリンを鳴らし手を合わせる。
「ありがとうございます。お茶をどうぞ」
「いただきます」
仏壇から母親の方に向き直ると、母親が煎れてくれたお茶で喉を潤す。
「ありがとうございます。あなた方のお陰で娘に会うことが出来ました。本当にありがとうございます」
「どうぞ、お顔を上げて下さい。私達は犯人の供述を元に娘さんを探しただけです。通報者の方のご協力がなければ……捕まえるのは難しかったと思います」
「それはそうかも知れませんが、私達にはどうすることも出来なかったのも事実です。本当にありがとうございます」
「はぁ……」
自分達二人が何かをした訳でもないのに警察代表の様な形で母親からお礼を言われると恐縮するしかない。だが、ここにはお礼を言われる為に来た訳ではないので、早速とばかりに本題に入ることにした。
「あの、本日こちらへお伺いしたのはですね、娘さんと親しくしていた人がいたのかを確認したいと思いまして」
「娘とですか?」
「ええ、警察でも聞かれたと思いますが、お願いします」
「そうですね。娘にはお付き合いしていた人はいないと思います」
「そうですか。では、学外でお付き合いのあった方はどうでしょうか? 異性、同性問わずに」
「それは……どういう意味でしょうか? 娘が何かしていたといいたのですか!」
「お母さん、落ち着いて下さい。私共は何も娘さんが援交をしていたと疑っている訳ではありません」
「では、何をお聞きになりたいと言うんですか!」
「ですから「先輩」……すまん、頼む」
先輩刑事の話し方では母親の不審を買うだけだと感じた後輩刑事が選手交代とばかりに母親に話しかける。
「お母さん、私達が気にしているのはですね。娘さんが好意を持っていた人や親しくしていた人がいなかったかを確認したいだけなんです」
「だから、それはどういう意味なんですか!」
母親からの問い掛けに後輩刑事は先輩刑事と視線を交わすと先輩刑事が黙って頷いたので後輩刑事は建設会社の社長が亡くなった時に見ていたのが、女子高校生の失踪事件を解決に導いた動画であることを正直に話した。
「……もしかして、娘がソレをしたと言うんですか!」
「あ、いえ。そうではなくてですね。その建設会社の社長、もしくはそこのコンビニで誰かに会っていたとか……そういうお話を娘さんから聞いていないかと思いましてですね」
「そんなの……あ!」
「何かご存知なんですか!」
「ちょっと待って下さい」
母親は二人にそう言うと、娘の部屋へと入りスケッチブックを手に持ち戻って来た。
「思い出しました。この人です」
「「え?」」
母親がスケッチブックを開くとそこには一人の男が描かれていた。時には正面を向き笑顔を見せていたり、口を結んでジッとしていたりと何パターンかの姿が描かれてはいたが、そのどれにも足下は描かれていなかった。
「これを娘さんが?」
「ええ、そうなんです。娘が言うには、気が付いたらソコにいたらしいんです」
「いた?」
「ええ、娘はそう言ってました」
「失礼ですが、どこかは言ってましたか?」
「はい。あのコンビニです」
「そうですか……先輩、どうしました?」
母親が言うには失踪した女子高校生は動画が撮影されたコンビニで見かけたと言う。だが、この絵はどう見ても道路を挟んだ向こう側に男性が立っている。だが、先輩刑事の記憶ではコンビニの向かいは藪であり、人が歩ける様には整地されていない。
先輩刑事がそれを話せば「だからか」と何かに気付いた後輩刑事も納得した顔になる。
「益々、領域外の仕事だよな」
「ハァ~なあ、そう思うのはあんたの勝手だが、俺達に死体検分させないようにしてくれよな」
「え? それはどういう意味なんですか?」
「どうもこうも、まだ何もハッキリとしたことが分かっていないのに嗅ぎ回って二人目になるなよってことだよ」
「……二人目」
「そう、二人目だ。まあ、ひょっとしたら三人目になるかもな」
「なら、そうなる前に捕まえればいいじゃないですか!」
「誰を? 知っているのなら、教えてくれよ。これから行くからよ」
「……」
「そうだ。あんたも分かっているんだろ。これはヒトがしたことじゃない。俺もハッキリとは言えないし、オカルトを推奨しようとも思ってはいない……がだ!」
「……」
先輩刑事はそこで言葉を句切ると若い社員を睨み付け、興味半分で足を突っ込んでいい状況でないことを説明しようと試みるが、若い社員の方は「それくらいは分かっている」と言い退く様子は見せない。
「分かった。好きにすればいい」
「もとから、そのつもりですよ」
「だが……」
「まだ、何か?」
「俺達があんたを止めたってことは誰かに言うなり、遺書に書くなりしといてくれな」
「それは警察としての意見ですか」
「まあ、そう思ってくれていい。いいか、俺達は手を出すなと忠告したとだけ記してくれればいい。話は以上だ。ありがとうな」
「いえ……では、失礼します」
若い社員が応接室から出て行ったのを確認してから、後輩刑事が言う。
「先輩、もう少し言い方ってものがあるでしょうに……」
「はん! あんな連中に何を言っても右から左だろ」
「でも……はぁ、もういいです。片付けてお礼を言ったら帰りますよ」
「分かったよ」
応接室を出た後に事務員にお礼を言ってから事務所を出れば、いつの間にかカメラやマイクを持った記者達が事務所の前に陣取っていた。
「早くないか?」
「あ~多分、これじゃないですか?」
「これ?」
「ええ、これです。ほら」
「……こんなのあるなんて聞いてないぞ!」
「多分、言うとスマホごと没収されると思ったんじゃないんですか」
「おいおい、いい大人がすることか?」
「それは私に言われても分かりませんよ」
「で、動画は回収したのか?」
「したんじゃないんですか」
「おい!」
「私は先輩と一緒にいたんですよ。きっと他の人が対応していますって」
「そうかい」
後輩刑事が運転席に座り、先輩刑事が助手席に座ると「女子高校生の家に寄ってくれ」と言う。
「え? それって失踪者の……ですか?」
「そうだ」
「理由を聞いても?」
「ああ、関連するかどうかは分からないが、彼女の動画を見せられて死んだんだ。なら、関連性があるのかないのかぐらいは調べておいた方がいいだろう」
「それもそうですね。ちょっと、待って下さい」
「頼む」
後輩刑事がどこかに電話を掛けると短く「ハイ……ハイ……」と繰り返しお礼を言ってから電話を切る。
「住所は分かりました。ここからそう離れてはいないので、このまま行きましょう」
「ああ」
やがて二人を乗せた車はマンションの前に停められ「ここです」と後輩刑事に案内され受付用の操作盤の前に立つと後輩刑事が部屋番号を押し、「警察の者です。少しお話を伺えますか」とインターフォンの向こう側にいるであろう人物に警察手帳を見せながら話しかける。
『どうぞ』と返事がすると同時にエントランスのロックが解除され自動ドアが開き二人は奥へと進む。
エレベーターで目的の階に到着すると「こっちみたいですね」と後輩刑事に案内され玄関扉の前に立ちベルのボタンを押す。
少ししてから、少し窶れた様子の中年女性が玄関扉を開けると「どうぞ」と二人を招き入れる。
二人は応接間に通されると遺影が目に入ったので「お線香を上げさせて下さい」と女性に断ってから仏壇の前に座り、線香を立てるとリンを鳴らし手を合わせる。
「ありがとうございます。お茶をどうぞ」
「いただきます」
仏壇から母親の方に向き直ると、母親が煎れてくれたお茶で喉を潤す。
「ありがとうございます。あなた方のお陰で娘に会うことが出来ました。本当にありがとうございます」
「どうぞ、お顔を上げて下さい。私達は犯人の供述を元に娘さんを探しただけです。通報者の方のご協力がなければ……捕まえるのは難しかったと思います」
「それはそうかも知れませんが、私達にはどうすることも出来なかったのも事実です。本当にありがとうございます」
「はぁ……」
自分達二人が何かをした訳でもないのに警察代表の様な形で母親からお礼を言われると恐縮するしかない。だが、ここにはお礼を言われる為に来た訳ではないので、早速とばかりに本題に入ることにした。
「あの、本日こちらへお伺いしたのはですね、娘さんと親しくしていた人がいたのかを確認したいと思いまして」
「娘とですか?」
「ええ、警察でも聞かれたと思いますが、お願いします」
「そうですね。娘にはお付き合いしていた人はいないと思います」
「そうですか。では、学外でお付き合いのあった方はどうでしょうか? 異性、同性問わずに」
「それは……どういう意味でしょうか? 娘が何かしていたといいたのですか!」
「お母さん、落ち着いて下さい。私共は何も娘さんが援交をしていたと疑っている訳ではありません」
「では、何をお聞きになりたいと言うんですか!」
「ですから「先輩」……すまん、頼む」
先輩刑事の話し方では母親の不審を買うだけだと感じた後輩刑事が選手交代とばかりに母親に話しかける。
「お母さん、私達が気にしているのはですね。娘さんが好意を持っていた人や親しくしていた人がいなかったかを確認したいだけなんです」
「だから、それはどういう意味なんですか!」
母親からの問い掛けに後輩刑事は先輩刑事と視線を交わすと先輩刑事が黙って頷いたので後輩刑事は建設会社の社長が亡くなった時に見ていたのが、女子高校生の失踪事件を解決に導いた動画であることを正直に話した。
「……もしかして、娘がソレをしたと言うんですか!」
「あ、いえ。そうではなくてですね。その建設会社の社長、もしくはそこのコンビニで誰かに会っていたとか……そういうお話を娘さんから聞いていないかと思いましてですね」
「そんなの……あ!」
「何かご存知なんですか!」
「ちょっと待って下さい」
母親は二人にそう言うと、娘の部屋へと入りスケッチブックを手に持ち戻って来た。
「思い出しました。この人です」
「「え?」」
母親がスケッチブックを開くとそこには一人の男が描かれていた。時には正面を向き笑顔を見せていたり、口を結んでジッとしていたりと何パターンかの姿が描かれてはいたが、そのどれにも足下は描かれていなかった。
「これを娘さんが?」
「ええ、そうなんです。娘が言うには、気が付いたらソコにいたらしいんです」
「いた?」
「ええ、娘はそう言ってました」
「失礼ですが、どこかは言ってましたか?」
「はい。あのコンビニです」
「そうですか……先輩、どうしました?」
母親が言うには失踪した女子高校生は動画が撮影されたコンビニで見かけたと言う。だが、この絵はどう見ても道路を挟んだ向こう側に男性が立っている。だが、先輩刑事の記憶ではコンビニの向かいは藪であり、人が歩ける様には整地されていない。
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