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第六章 いざ、王都へ

第12話 野盗殲滅ツアー開催

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 野盗のアジトからお宝やらなにやらを回収したソルトがアジトの外に出ると、いつもの……といいていいのかどうか分からないが、捕まっていた人達がその辺に落ちている石や棒を手に取り、捕縛されている野盗達を滅多打ちにしていた。

 今回は止める人がいなかったため、皆が好き勝手に「お前が!」「あの子は」とか呪詛の様な言葉を呟きながら思いっ切り振り下ろしている。

「ソルト、止めないのか?」
「なんで俺が?」
「いや、だってよ。俺が瞬殺した時は責めただろ」
「あ~それはだって、アジトを探すのが面倒になるからだよ」
「そうか。なら、俺がアレを手伝ってもいいのか?」
「それはダメだよ」
「なんでだ? 俺がやった方が直ぐに終わるぞ」
「だからだよ」
「ん? だからなんでダメなんだよ?」
「もう、シルヴァはこっちに来てなさい。ごめんね、ソルト。邪魔しちゃって」
「いいよ。気にしないで」

 シルヴァが野盗達を始末するのなら手伝うと言い出したが、それをやられてしまうと彼らの怒りのやり場が霧散してしまうからとソルトにやんわりと断られたのに納得がいかないシルヴァだったが、ノアがシルヴァの耳を引っ張り連れて行ってくれた。

 しかし、いつ見ても慣れそうにないなと思いながら「グチャッ」と聞こえる音と共に鮮血が飛び散り野盗の体はビクッと痙攣する。

 猿轡をしているから「助けて」と叫ぶことさえ許して貰えない野盗達はソルトに助けを求め縋るように見ているがソルトは見て見ぬ振りをする。

 中には猿轡が緩んでいたのか「なんで俺達が……」と呟く声が聞こえたが、それは捕まっていた彼らにとってもいえるだろう。

「私達が何をした!」
「あの子を返せ!」
「あの人はどこなの?」

 晒されていたご遺体だけでなく襲った時に放置されてしまった亡骸もあったのだろう。峠道にご遺体が放置されたのが昨日今日ならなんとかなったかも知れないが、ソルト達が通ってきた道には、そういった争った痕跡は見受けられなかったので、相当前だろうと思われる。だが、そうなると死体はその辺に潜んでいる魔物達が持ち帰ったと考えるのが妥当だろう。

 ソルトは自分が魔物に腹部に噛み付き咀嚼しているところを想像しブルッと身震いしてしまう。

 そろそろ止めた方がいいのかなとか思っている内に息をしている野盗は一人もいなくなったようだとルーから知らされたソルトは彼らに近付き「既に死んでいる」ことを伝えると仇討ちが終わったことでホッとしたのか、その場に座り込んでしまう。

 ソルトは彼らにクリーンをもう一度掛けた後にエリスに念話で追加でお届け物があることを話すとエリスは『分かったわ』とだけ答えて念話を切った。

「どうしたんだろう。なんか機嫌を損ねるようなことしたかな?」
『違いますよ。単にこれからのことを想像して気が重くなっただけだと思いますよ』
「これからのこと?」
『はい。王都まではまだまだ距離がありますから。それに潜んでいる野盗も』
「あ~そういうことね」
『はい。どうします? 無視して行きますか?』
「ん~出来ればそうしたいけど、向こうから来るし……それに捕まっている人も多分いるんだよね」
『はい。それは索敵して分かりました』
「ふぅ~やっぱりいるんだね」
『はい。どうします? 助けずに無視しますか?』
「いや、それは無理だよ。ルーも分かってて言ってるよね」
『はい。試すような真似をしてすみません』
「いいよ。でも、そうなると王都が遠く感じるね」
『そうですね。まだ二日目なんですよね』
「そうなんだよ。予定では七泊八日だったんだけどね。とてもじゃないけど……」

 ルーとの会話を打ち切りエリスの元へ人質だった人達を届けた後に、ゴルドが待っている所まで急ぐ。

「ん? 今回の野盗はどうしたんだ?」
「それがさ……」

 ゴルドに今回捕縛した連中がいないのかと聞かれ、ソルトは人質だった人達を助けた後のことを詳細に話す。ソルトの話を黙って聞いていたゴルドだったが、短く嘆息してから話し出す。

「なるほどな。まあ、俺としては詰所に放り込んだり自白を聞いたりする必要がなくなったから助かったと言いたいが、被害に遭った人達のことを考えると……な」
「そうだよね。直接手を下した人達は仇討ちが出来たのだから、幾分かはスッキリ出来たとは思うけどね」
「だよな。まあ、首から上だけでもあればなんとかなるかもな」
「そういうだろうと思「出すなよ!」って……え? だって出さないと」
「だから、それを俺が手に持って詰所に行くのかよ!」
「え? ああ、そういうこと。じゃあ、次の機会で」
「そうしてくれ。だがよ、まさかだけど……まさかだよ。このまま野盗を討伐していくのか?」
「うん、そのつもりだけど。ダメかな?」
「ん~ダメとは言えないが……俺達は今、領主代行の護衛なんだよな」
「でもさ、その領主代行を狙って来ているんだからしょうがないんじゃないの」
「ん? 何故領主代行が狙われるんだ?」
「何故って、教会と対立したからじゃないの」
「それは、お前じゃないのか?」
「そうかも知れないけど、ほら。アイツらのアジトにあった羊皮紙の紋章だけど、これって領主の紋章じゃないの」
「……確かに」

 ソルトが見せた紋章は今も心配そうに馬車の窓からこちらを見ている領主代行が乗っている馬車の側面に描かれている紋章と同じ物だった。
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