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第51話 淋しいのは皆一緒

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 やっちゃったことは仕方がないと慰めにもならない言葉を皆から掛けられた恒も気を取り直して由香と久美、それにホスを馬車に乗せるとホスが御者台に座り、ドラゴに声を掛ける。

「ドラゴ、お嬢さん達に教えながらだからゆっくり行くぞ」
『おう、爺さんゆっくりだな。任せろ』

 明良はミリーと一緒にドラザに乗り、恒はドラジに乗ると小夜を引き上げ前に乗せれば同時に馬車の中からは「ズルい!」と声がする。

「ふふん、早いモノ勝ちじゃ。油断する方が悪い」
「小夜、あまり挑発しないの。あんまりそういうことするのなら、馬車「悪かったのじゃ。大人しく座っているのじゃ」そう。じゃ、行こうか」
「おう」
「行くぞ」
「大切にしてもらうんだぞ」

 ケニーさんと挨拶を済ませ馬車を出したところで、ケニーさんからドラゴ達に声を掛けられる。ドラゴ達も大事にしてもらったのが、分かるのか耳と尻尾がピコピコと揺れている。

 ドラゴ達は嬉しそうにギルドまでも道のりを歩く。それがホスとの最後になるのが分かっているのか由香達に御者のやり方を教えるためと言ってはいるが、それでも歩みはゆっくりだ。まるでホスとの別れを惜しむかのようにも思える。

 恒もそれを知ってはいるが敢えて口には出さない。何故ならば、恒も明良もまだ乗馬には慣れていないのだから。

 だが、そんな風にゆっくりとしているものだから、冒険者ギルドでの用事を終えたドリーが向こうからやって来る。

「おう、遅かったな。どうした……って、おい! 本当にどうしたんだよ、これは!」
「ああ、説明するから。先ずは馬車に乗ってくれるかな」
「……分かったよ」

 ホスが馬車を停めるとドリーは馬車へ乗り込む。

「また、冒険者ギルドへ逆戻りとはな」
「だって、恒がしちゃったんだから」
「しょうがないよ。うんうん」
「そっか。ワタルがな……そっか」

 ドリーは外にいる恒に目を向けるが、起こってしまったことはしょうがないと開き直るしかなかった。

 やがて、恒達は冒険者ギルドへと着くが、思っていた通りにちょっとした騒動になる。

「おぉ~でけぇな……」
「こりゃ、普通の竜馬ドレイクホースじゃねえな」
「おい、兄ちゃん。これどうしたんだ?」

 馬車や竜馬ドレイクホースの回りに集まってくる野次馬はドリーに任せ、恒は冒険者ギルドへと入って行く。

 冒険者ギルドに入るなり「ワタル、やっぱりお前か!」とギルマスに手招きされる。

「ギルマス、その前に……」
「いいから、ちょっと来い! それと、表のヤツに話を聞いて登録が必要なら手続きしてやれ」
「「「はい」」」

 ギルマスがギルド職員に対しドラゴ達の従魔登録を指示すると恒は有無も言わさないままに部屋の中へと招き入れられる。

「で、何をどうしてこうなった? ちゃんと俺にも分かる様に説明してくれ」
「えっと、何を?」
「あぁ? 何って表の騒ぎはお前のせいだろうが!」
「騒ぎって言われても……俺達は別に何もしてないけど?」
「ハァ~あのな、あんな魔物を三体も連れて歩いて騒ぎにならない訳ないだろうが! いいから、知っていること、やったことを全部素直に話すんだ。話さない内は帰さないからな」
「えぇ~」
「え~じゃない! 泣きたいのはこっちだよ。ったく……でもまあ、こういう日常茶飯事がなくなってしまうのも少し寂しい気はするがな」
「あ~」

 ギルマスのそんな態度に恒は嬉しくなり思わず「ふふふ」と笑ってしまう。

「何がおかしい?」
「だって、ギルマスは俺達がいなくなるのが淋しくてこうやってお話ししたかったんだよね」
「な、バカ! 何を言ってるんだ。いいから、表の魔物をどうしたのかをちゃんと話せよ。別れの挨拶はその後だ」
「もう、分かったよ。あのね……」

 恒はホスに会った後にケニーの元で竜馬ドレイクホースを譲り受けることになり、名付けをしたことで、竜馬ドレイクホース魔竜馬マジカル・ドレイクホースとなったことを話す。

「あ~またお前は面倒なことを……」
「いや、俺だってしたくてした訳じゃないんだけど……」
「あ~分かってる。分かってはいるんだがな、コレばっかりはな……で、どうするつもりだ」
「んまぁ、最初に決めた通りに王都に行こうとは思っているよ」
「アレを連れてか?」
「当たり前でしょ」
「そうか。だが、あまり力で解決しようとはするなよ。いくらお前達でも数の暴力には適わないからな。まあ、それもなんとかしてしまうんだろうな。お前達なら」
「へへへ、多分ね」

 その後はギルマスとたわいもない話をしていたが。いつまでも引き留める訳にもいかないとギルマスは恒を解放すると、ギルド職員から「これが従魔登録証です」と渡されるが、職員がその手を離さないので「あの?」と声を掛ければ職員は「あ、すみません」と慌てて手を離す。

 そして、意を決した様に恒を見てから「お願いがあります!」と言うので恒も何かなと訝しく思いながらも「なんでしょう」と出来るだけ柔軟に対応する。

「あの……触ってもいいですか?」
「え?」
「あ、違います! 言い直します。あの子達を触ってもいいでしょうか?」
「あ、ああ、そういうこと。いいよ」
「ありがとうございます!」

 職員のお姉さんはそう恒にお礼を言うと冒険者ギルドの外に飛び出していく。

「こりゃ、出発するのは伸びそうだな」
「えぇ~」
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