彼女はだれ?

ももがぶ

文字の大きさ
上 下
9 / 29
第一章 再会?

聞いてみました

しおりを挟む
SIDE A.遂に写真が!
由美と一緒に駅を出て学校へと向かう。するといつもの様に背中に『バチン』と衝撃が走る。
「イッタァ……太お前かよ」
「悪りぃ悪りぃ、朝からそんな仲良さそうな光景を見せられちゃあな」
「なんだよ。仲良さそうって。ただ、並んで歩いているだけだろう」
「お前、腰のそれに本当に気付いてないのか?」
「それって?」
「バカ太!」
太に言われて、太が指を差す腰の辺りを見るが、特になにもない。
「なにもないじゃないか? お前、大丈夫か?」
「あ、ああ悪いな。俺の勘違いだったかな?」
「そうよ、バカ太!」
「お前、バカはねえだろ? バカはよ!」
「いいから、ほら遅刻するぞ」
「「はいはい」」

教室に入り同級生と朝の挨拶を交わす。
「おや?」
あの吉田 一太が大人しい。いつもなら、チャラい集団と騒いでいるアイツが珍しく今日は大人しい。
「まあ、俺には関係ないか」

HRが始まり、授業が進んでいく。

昼休みになり、いつもの様に屋上へと向かう。
そこにはいつものメンバーがいた。
「おう、ブル。ここに座れよ」
「太」
「ダメ、まー君はこっちなの! 太の横に座ったら、また載せられるから」
「「由美」」
由美がまた訳の分からないことを言い出す。
「由美、なんだ? その載せられるって?」
「田中君、いいからこっちに座って。太の側だとね、一部のファンが喜ぶから」
「また、それか」
訳の分からない話は、やめてもらい他愛のない話をする。
「ねえ、土曜日はどんな格好をしていけばいいの?」
「別に。普通の格好でいいだろ」
「え~でも、久々のお呼ばれなのに~」
「別にお前は呼んでないから。奈美が心細いって言うから、付き添いを頼んだだけだろ」
「なんだよ。その話。俺は聞いてないぞ!」
「太、なんでお前に言うんだよ」
「なんでって……そりゃ、お前」
「はい、太君。それ以上はやめとこうね」
「幸……でも、俺は」
「はい、やめとこうね。今ここで言うべきことじゃないよね」
「あ、ああ。そうだな」
中山 幸の説得? により太の暴走が治る。
「それで、なんで太はそんなに俺の家に来たがるんだ? 真美が目的か? 言っとくが真美はまだ中学生だぞ?」
「そんなことくらい分かってる!」
「な、なんだよ」
「すまん」
「ほら、太君。落ち着いて。 ね、田中君。それでなんで由美が田中君の家に行くことになったの?」
「それがさ……」
大には悪いと思ったが、由美を招いた理由を説明する為にはしょうがないよなと、胸の内で大に謝りながら、そうなった理由を説明する。

「なるほどな。その弟の暴走を抑えるためにお前のお袋さんが、奈美の前で諭そうって訳か。でも、それって本当に大丈夫か? 下手したらトラウマもんだぞ」
「まあ、その辺は多分大丈夫だろ。母さんの長年の経験から女性の扱いに対してレクチャーしてもらうだけだからさ」
「そうか。でだ、俺も行っちゃダメなのか?」
「なんで、その話になるんだよ」
「なんでだよ。俺だけ仲間外れはないだろ?」
「別に仲間外れでもないだろ? 中山も行かないんだし。それに遊ぶ訳でもないんだから」
「そうだけどさぁ~」
なぜか太が俺の家に来たがる。どうしてなんだろうか。真美の線は消えたけど、他になにか理由があるのだろうか。

「ほら、太君。あんまりしつこいと逆効果だぞ。よし! なら、土曜日は私が相手になってあげよう!」
「幸が?」
「あら? 私じゃご不満?」
「いや、別にそういう訳じゃないんだけど……」
「太は女に免疫がないからな」
太が中山からの誘いに戸惑っているようだから、助け舟を出してみたが、見当違いだったようで太の顔が赤くなる。

「ば、バカ! ブル! なんでそういうことを言うかな~」
「でも、変よね。由美にはそんな感じじゃないのに」
「だって、由美は中学からの同級生だし、今更緊張なんてしないな」
「へ~太は私じゃ緊張しないんだ? じゃ、もし抱き着いたりしても緊張しないのかな?」
「お、おう。全然緊張しないぞ」
「やめて!」
由美の発言に急に中山が叫ぶ。
「そうやって、太君を揶揄うのはやめてあげて。お願いだから……」
「幸?」
「中山、大丈夫か?」
「グスッごめんね。由美」
「なんで幸が謝るの? 私が悪ノリしたのが原因なんだから、やめてよ」
「でも……ごめんね。由美」
「だから、謝らないでって、言ってるでしょ。グスッ」
なんだか知らない内に女の子二人が抱き合って、慰め合っている。そんな光景を太と二人で黙ってみているしかなかった。

「なあ、もしかしてだけどさ。中山ってさ、お前のこと……」
「言うな! うすうす分かってはいたんだ。でも、俺には……俺は……」
「ああ、もういい。俺も今は聞かないでおく」
食べかけの弁当の残りを急いで始末すると、弁当箱の蓋を閉じ、この場から離れる。

「あ、婆ちゃんに電話するんだった」
少し離れた場所で、スマホを取り出し母さんに教えてもらった婆ちゃんの電話番号に掛ける。
『プルル……プルル……プルル……はい、田中です』
「あ、婆ちゃん。オレオレ、昌一なんだけど」
『はい? そんな名前の孫はおりませんが……』
「婆ちゃん、本気で言ってる? まだ、ボケる年でもないだろ」
『はぁ~全く、歳を取るとこんな婆さんの相手もしてくれないんだからね。で、なんの用だい? お金ならないよ』
「それだと、本当にオレオレになっちゃうでしょ。そうじゃなくてさ、俺が小さい頃に一人で、そっちに預けられていたの覚えてる?」
『ん? そんなことあったかな』
「もう、本当にボケてないよね? 俺が二、三歳の頃だから、今から十二、三年前くらいなんだけどさ」
『なんだい、まー君もはっきり覚えてないじゃないか。お前こそボケてんじゃないのかい?』
「婆ちゃん、二、三歳の頃の記憶がハッキリ残っている方がおかしいだろ? で、どうなの? 覚えてないの?」
『ちょっと待ってな。今、思い出すから……』
「婆ちゃん? 婆ちゃん?」
『ああ、すまない。あれは確かご近所さんのまどかさんのところだったな』
「いや、円さんって誰だよ。苗字は? せめて、写真かなにか残ってないの?」
『写真かい? 写真なら、あるよ。なんなら、今から送ろうか?』
「あるの! なら、送って。住所は分かるよね」
『まー君、なに言ってんだい? いいから、まー君のメッセージアプリのIDをSMで私宛に送りな』
「え~と、婆ちゃん? なに言ってんの?」
『察しの悪い子だね。だから、写真を送るって言ってるじゃないか。早くIDを送りな。いいね』
「ちょ、婆ちゃん。切られた。しょうがない言われた通りにIDを送るか」
メッセージアプリのIDをスクショで婆ちゃん宛にショートメールで送る。
「これで本当に写真を送ってもらえるのかな?」
するとすぐに婆ちゃんからの友達申請が届いたので許可するとなにやら画像が送られてきた。
「うわ、本当に来たよ。どれどれ?」

SIDE B.やっぱり運命でしょ!
お昼になり、奈美と机をくっつけると、お弁当を広げる。
「それでさ、奈美の妹さんに頼んでいた件だけどさ、今朝の電車で見つけたんだ。でもさ、可愛い彼女さんと一緒だったから、なんとなく隠れちゃった。妹さんに伝えといてもらえるかな」
「なに? 亜美が乗った電車は、多分だけど私の乗った次のだよね」
「そうかな。次の電車だったら、確実に遅刻だから、多分そうだよ」
「そうか。それで、彼女さんの格好も伝えておけば、由美も探しやすいと思うんだけど、なにか特徴は覚えてる?」
奈美が私が見た男の子の彼女さんの特徴を聞いてくるので、覚えている限りを話すと、奈美がノートに私が言った特徴を書き始める。
「まずは、背丈だけど、そんなに高くもないし低くもなかったかな。髪はおかっぱみたいなショートだね、少し日焼け気味のスポーツ少女って感じだった。そんなに痩せてもなく、ぽっちゃりでもなく、でも胸は私とどっこいかな? むぅ、多分だけど私が……」
「ふ~ん、随分具体的に覚えているのね」
「だって、せっかく見つけたのに彼女さんのせいで、側に寄れなかったんだもの。なんかさ、そんなに盛大にイチャつくって訳でもないんだけど、あの男の子の制服をさ、腰の辺りでギュッと握っていたんだよ。それ見てるとなんだかほんわかとしちゃってね」
「へぇ、そうか。そんなにいい感じだったんだね」
「そう、いつか私もああいう風に……」
「亜美? お~い! 亜美ってば!」
「あ、ごめん」
「どこに行ってたんだか。それで、そっちのマー君の進捗は?」
「それがさ、知っているはずのお婆ちゃんに電話したんだけど、あまりよく覚えていなかったらしくてさ。で、いよいよ本題って時に四限の予鈴がなったから、そこで電話を切っておしまい。続きはまた明日かな」
「なんだ」
「なんだって言うけどさ。お年寄り相手の電話だったら、そうなるって。ん?」
何気なくスマホを見ると、なにやら着信を知らせるランプが点いていた。
なんだろうとスマホの画面を見ると、『三件のメッセージがあります』と新着メッセージを知らせるバナーが表示されていた。
「誰からだろう?」
メッセージアプリを開くと『お婆ちゃんだよ。今度からはこっちの番号に連絡してね!』のメッセージと共に電話番号が書かれていた。
また、それとは別に『メッセージアプリのIDはこれね。友達申請よろしく!』ともあった。
また、その下のメッセージには『お探しの物はこれかな?』のメッセージと共に写真が添付されていた。

「写真? お探しの物? あ~! マー君の写真だ!」
「なに、亜美のお婆ちゃんは、どんな写真を送って来たの? 見せてよ」
「まあ、待ちなさい。私もまだ、見てないんだからさ。じゃ、いきますよ!」
スマホの画面をタップし、添付された写真と思われる画像を開く。

画像を表示させると、そこには川辺で水に浸かって遊んでいる二人の幼児。
「お~! これだよ、これ! 私が探していたマー君との写真は!」
「どれどれ、お~二人とも裸だね。しかも、ブリーフって。そうか、亜美は性転換したのね」
「そんなわけないでしょ! ほら、ここ! 見てよ! ここ!」
そう言って、私が履いているブリーフのウエストの位置を拡大して見せると、そこにはカタカナで『カズオ』と書かれていたのだ。
「あ~やっぱり! これ、お兄ちゃんのだよ。絶対、お父さんが間違えて持って来たんだ。もう!」

あれ? じゃ、やっぱり今朝見たあの夢は私の記憶ってことだよね。あと、もう一つ大事なことがあったような気がしたんだけど、なんだったかな。

「これが亜美のマー君なんだね。あれ? この顔、どこか見覚えが……ねえ、この写真送ってよ」
「え? なにするの?」
「別になにする訳じゃないけどさ、妹に手伝ってもらっているんだから、見せてやりたくてさ」
「それなら、別にいいけどね。はい、送ったよ」
「ありがと。由美にも送っとくかな」
「ねえ、その由美って妹さんの写真はないの?」
「写真ね、ちょっと待って。はい、これが由美だよ」
「へ~これが妹さんか~あれ? ねえ、これって本当に妹さん?」
「そうよ。私の双子の妹の由美。ね、可愛いでしょ?」
「う、うん、そうだね」

そうだよ、見覚えあるはずだよ。奈美のそっくりさんじゃない。一部のパーツを除いては、もろそっくりさんじゃん!
じゃあ、なに? 奈美の片思いのまー君は私が痴漢と間違えた人だっていうの? で、その人の彼女が奈美の妹の由美さんってことなの?
え~どうすればいいのよ~

「亜美、どうしたの? 由美の顔がどうかしたの?」
「いや、妹さんも奈美にそっくりで可愛いなあって」
「あら、そう? ふふふ、由美が可愛いって褒められると、私まで褒められた気分になるわね」
そりゃ同じ顔だもの。それに気付かない私がバカだったよ。

その時、スマホが着信を知らせる。
「もう、なに?」
乱暴にスマホを取り出すと画面にはお婆ちゃんからのメッセージを受信したとある。
「今度はなんなの? え? どういうこと?」
「お婆ちゃんはなんて言ってきたの?」
「あ~なんかね、あの写真はマー君のお婆ちゃんが持っていた物で、孫のマー君から送って欲しいって連絡があったんだって。で、ついでにうちのお婆ちゃんにも送ったんだってさ」
「へ~じゃ、亜美の運命説もなかなかバカに出来ないわね」
「でしょ! やっぱり、これは運命なのよ!」
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ぼっち翔と住人達

青春 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

リコイルコントロール

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

世捨て魔王

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

何気なく

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

猪娘の躍動人生~一年目は猪突猛進

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:71

今月のお小遣い

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

処理中です...