彼女はだれ?

ももがぶ

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第二章 夏休み

休みの前に

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 SIDE A. 試験の前の試練
 昼休みの屋上でいつもの四人で昼食をとっていると由美から唐突に言われる。
「ねえ、手伝ってよ! いいでしょ」
「あ、俺もついでにいいか」
「なんで、お前まで。お前は……ふぅ、まあいい。だけど、前に言ったように俺の家はダメだぞ。それだけは譲れない」
「なら、予定通りに図書館ってとこかしら」
 由美の試験勉強対策に付き合えと前から言われていたけど、土田さんのこともあり棚上げになっていたが、由美がお手上げとばかりに俺を頼ってきた。
 いくら特待生とはいえ、余りにも非道い成績だと部活動が禁止になることもあるとか。そして、同じ立場にある太まで便乗してきた。この時には『お前には中山がいるじゃないか』と言いそうになったが、寸前でなんとか止めることが出来た俺は俺自身を褒めてあげたい。
 そして当然の様に中山も加わり、勉強会なるものが開催されることとなったが、これだけの人数は自分の部屋には入れられない。特に女子が入るとなれば、妹の真美が入り込んで来て勉強どころじゃないだろう。
 そんな訳で自宅開放は勘弁してもらうと話したところ、中山から図書館の提案となり、そこに落ち着くだろう。

「え~まー君の部屋に行きたかったな~この前は行けなかったし」
「俺も久しぶりに行きたかったな。どんなお宝が増えたのか点検しないとだし」
「あら? お宝があるの?」
 由美に続き太も『部屋がよかった』と言うが、その後の発言が頂けない。『お宝の点検』ってなんだよ! そりゃ、いくつかはあるけどさ、まさか太は把握しているのか?
 それに反応する中山がボイスレコーダーとスマホを準備している。まさか、今から調べに来るとか言わないよな。

「中山、お宝の発掘調査なら太の部屋で存分にやればいい。忘れているかもしれないが、太だって健全なお年頃だぞ。それこそ、俺にお下がりをくれるくらいに……フガッ」
「ブル! 何言ってんのかな~悪いのはこのお口かな?」
 太にいきなり後ろから口を塞がれるが、太の手が大きいため、鼻まで塞がれ呼吸困難になる。
「太! タップしているから! タップ!」
「え? あ、ああ、ごめんブル」
「ゴホッゴホッ……お前、人を売っておいてこれはないだろ」
「すまん。だけど、お前が悪いんだぞ。何もあそこまで言うことはないだろ」
「へぇ、認めるんだね?」
「「え?」」
 太が俺の背中を摩りながら謝っている? と背中の方から中山が言う。二人が振り向くとボイスレコーダーとスマホのカメラを構える中山の姿があった。
「さあ、太君。さっきの発言の意味を教えてくれないかな? 健全な男子に必要な物って何? 『あそこまで言うことはないだろう』の真意は? 田中君の言ったことは本当なの? さあ、どうなの?」
「ぐっ……ブル、恨むぞ」
「墓穴を掘ったのはお前だろ?」
「別に私はどっちでもいいわよ。でも、最初に仲間を売ったのは太君よね」
「あ!」
「さあ、答えてちょうだい!」
 太がボイスレコーダーとスマホを構えて迫ってくる中山の背中越しに俺を見る。
 俺は両手を合わせ合唱し『検討を祈る』と口パクで太に伝える。
「裏切り者~!」
 その言葉は君に贈ろう。俺の横で由美は「お宝ってなんなの?」とさっきから袖を引っ張りながら聞いている。お前も味わうがいい。本当に勘弁してくれよ……

 SIDE B.お宝への興味
「あ~試験かぁ~」
「何? 亜美は何か不安がある科目でも?」
 昼休みの教室で何時ものように奈美とお弁当を食べているときに思わずぼやいてしまった一言に奈美が反応する。
「う~ん、そこまで悲観する科目がある訳じゃないんだけどね。ほら、この前の騒ぎがあったでしょ。だからね、お父さんがしばらく身を隠せって言ってきてね」
「あ~お父さんとしては不安しかないものね。でも、夏休みの間なら何も困ることはないんじゃないの」
「それがね、奈美。お父さんは早ければ早い方がいいって言い出してね。試験の前におばあちゃんの所に行けと言うのよ。どう思う?」
 この前の吉田一太の件は奈美も知っているので、少し相談にのってもらうつもりで愚痴を吐く。
「試験の前には……ちょっとね。私もどうかと思うわ」
「でしょ! だから、私もなんとか試験期間が終わってからということにしてもらったのよ。だから、私は試験が終わったら、おばあちゃんの所に行くの。あ~奈美とも遊びたかったのになぁ……」
「そっか、夏休み中じゃぁね。『ピリリ……』あ、由美からだ。なになに、『まー君の部屋にお宝があるんだって。今度、発掘調査しようね』だって。お宝ってなんのことなんだろうね。亜美は分かる?」
「さ、さあ、なんでしょうね?」
『お宝』という言葉に、あの兄が頭に浮かび、男友達からお宝を貸してもらったと喜んでいたのが頭に浮かぶ。だから、『お宝』と言うのが、多分アレのことだろうと想像が付く。そして、それに奈美が気付き追求してくる。
「おや? その顔は何か知ってるわね」
「し、知らないわよ。まー君に聞けばいいじゃないの」
「聞けるわけないじゃない、そんなこと!」
「そんなこと?」
「あ!」
 奈美が思わず口走った『そんなこと』をオウム返しに口にすると、奈美がしまったという顔になる。知ってて私に聞いたんだと思うと少し、イジワルしてみたくなる。
「じゃあ、いいわ。私がまー君に聞くから」
「それはダメ!」
「ふふふ、冗談よ。それより、試験よ試験。どうしよう」
「そんなに悲観する科目はないんじゃなかったの?」
「悲観はないけど、楽観も出来ないのよ。誰かどうにかしてくれないかな~」
「じゃあ、亜美も参加する?」
「参加?」
 奈美を揶揄って少し気が済んだところで、試験のことが頭に浮かぶ。試験自体なくなって欲しいと思っていると奈美から『参加する』と聞かれる。何への参加だろう?
「うん。由美とまー君達が図書館で試験勉強するらしいの。私もそれに入れてもらおうと思ってね」
「でも、内容が全然違うんじゃないの?」
「教科書が違っても同じ高校生なんだし、それほど変わるもんじゃないでしょ。数学や英語だって高校ごとに違うなんてことはないんだし」
「それもそうね。じゃあ、お願いしようかな」
「じゃあ、亜美も参加ね。由美に伝えておくわ」
「うん、お願いします」
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