彼女はだれ?

ももがぶ

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第二章 夏休み

想いと行き先はそれぞれ

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 朋姉ちゃんも一夫さんの様子に気付いた様子で少し頬を赤らめるが今までの行いが行いなので、そう簡単には許せることではないのかも知れない。だけど、自分に好意を持っているかも思ってしまえば、相手が余程のことでもない限りは、そこまで強く拒絶することも出来ないのだろう。

 朋姉ちゃんが一夫さんに「とりあえず座れば」と塩対応をするが、由美達、女子はその様子にニヤニヤとしている。太だけは状況に追いつけずに「えっえっ嘘だろ」と言っているが、こればかりは弟とは言え、口出すことではないだろう。

「じゃあ、落ち着いた所で、話をしてもいいのかな?」
「「「あ!」」」

 俺がそう言うと「あ、そうだった!」とでも言いたげに皆が朋姉ちゃんが持って来た雑誌を真剣に見始める。

「ん~やっぱり、こういうデートコースに私達が集団で行くのは場違いだと思う」
「そうね。私もこういう場所は初めてのデートに取っておきたいわ」
「へ~奈美はそういう相手がいるんだ。由美もそうなのか?」
「「「……」」」

 俺がそう言うと、言われた奈美だけでなく由美に中山、それに亜美に朋姉ちゃんまでが「マジか、コイツ?」とでも言いたげに俺の顔を見る。

 太は俺と同じで何が起きたのか分からない様だったが、俺が何をしたと言うのだろうか。

「はいはい、こういうのは放っておいて。でも、確かにあなた達と一緒にいい雰囲気になっている人達を邪魔するのは私としても出来るだけ避けたいし、私だって出来れば二人で行きたいのよね」
「ともちんまで……」
「「「え!」」」
「あ……勘違いしないでよ! 今は、誰も一緒に行く人がいないだけで……私だってそういう夢を持っててもいいでしょ!」
「直ぐに叶えてくれそうな人はいますけどね」
「ともちん、それは、誰なんだ!」
「バカだ……」
「うん、バカだね」
「バカがここにいるよ」

 由美が朋姉ちゃんを揶揄うようにそう言うと一夫さんが反応し、それを見た亜美が呆れ、中山が呟き、奈美もそれに納得する。

「もう、お兄ちゃん。それは後で好きなだけ確認することにして、私も奈美達の意見に賛成よ。もちろん、今相手がいるいないは別にしてね」
「なんだよ、あのしゃ「だから、違うって言ってるでしょ!」……お、そうか。すまん」
「もう、変な時だけ勘がいいんだから」

 話はあっちがいい、こっちがいいと纏まることはなかったが、一夫さんがポロッと零す。

「なら、いっそのこと婆ちゃんとこに行くか? あそこまでなら、高速を使えば一時間ちょっとで行けるし、父さんもそこなら安心だろうしな」
「あ~でも……」

 一夫さんからの提案に対し、亜美は少しノリ気ではなさそうな感じだ。だけど、それに対し朋姉ちゃんが追随する。

「ねえ、高速に乗るの?」
「ああ、そうだな。下りになるけど車はそれほど混むこともないし。比較的走りやすいと思うぞ」
「……決めた!」
「「「え?」」」
「そこにする!」
「「「え?」」」

 朋姉ちゃんは一夫さんに確認すると、一夫さんが提案するお婆さんの家に行くことに決めたみたいだ。

「姉ちゃん、友達とは言え知らないお婆さんの家に行くんだぞ?」
「あら、別に私達全員が行く必要はないでしょ」
「そうだな。俺とともちんで挨拶するくらいでいいんじゃないか」
「「「はぁ?」」」
「な、なんだよ!」
「なんで私がアンタと一緒に挨拶するのよ!」
「いや、それはほら……なんとなく……かな」
「お兄ちゃん、それはないよ」
「そうね。引率者としての挨拶程度なら分かるけど」
「ソレだ! うん、そう言うことだよ。ともちん!」
「だから、ともちん言うな!」
「もう、照れちゃって……」

 一夫さんの発言に朋姉ちゃんが反論すれば亜美も呆れ気味に一夫さんを諫める。それに対し俺が引率者としてならと言えば、一夫さんがそれに乗っかってくる。

 ともあれ、朋姉ちゃんが高速に慣れる為にもということでなし崩し的に亜美達のお婆さんの家に決まった。

「行き先はそこでいいとして、場所はどこなの?」
「場所は……」
「ここだよ」

 そう言って一夫さんがスマホに地図を表示させると俺達に見える様にしてくれた。

「ああ、ここなら確かに近いし日帰りにはちょうどいいかも」
「そうね。お父さん達もすんなり許してくれそうね」
「あれ? ここって……」
「「どうしたの? まー君」」
「いや、なんか見覚えがあると言うか、記憶にあると言うか。ん~地図じゃ分かりづらいな」
「なら、こうや「お兄ちゃん、用事があるんでしょ!」っ……いきなりなんだよ」
「いいから、ほら。私も夕飯の買い物しなきゃだし荷物持ちお願いね!」
「え、でも……」
「いいから、ほら! 財布出して。私の分もお願いね」
「……分かったよ。じゃ、ともちん。これでお願い」
「また、ともちんって……分かったわよ」
「ごめん、奈美。由美。後で連絡するね」
「「うん」」

 亜美はなんか焦った様子で一夫さんを引っ張るように店を出て行った。俺はそんな二人の様子が少し気になったけど、すぐに奈美に話しかけられたので「ま、いっか」となる。

 店を出てから亜美は一夫の背中をバンバンと思いっ切り叩いている。

「痛っ……もうなんだよ」
「さっき、何を言おうとしたのよ」
「何ってまー君の写真『バシッ!』……だから痛いって」
「もう、なんでそんなこと言うのよ。バカ!」
「バカってお前、お兄ちゃんに対してそんなこと言うなよ」
「何よ! バカにバカって言って何が悪いのよ! そんなバカだから好きな子にイタズラして嫌われるんでしょ! いい歳こいてバカじゃないの」
「お、お前……好きな子って「好きなんでしょ?」……いや、だから、そういうのじゃなくてだな」
「ふ~ん、じゃ私の方から『お兄ちゃんは他に好きな子がいます』って言っておこうか?」
「な、何言ってんだよ! そんなのがともちんの耳にはい……」
「はい……? 何?」
「あ~もう俺が悪かったよ。揶揄うようなマネをして」
「ふん! 分かればよろしい」
「だけど、お前も裸で一緒に写真に写ったまー君があの子だってのは知っているんだろ。このままでいいのか?」
「お兄ちゃんには関係ないでしょ!」
「でもなぁ~妹の初恋なら、出来れば叶えたいじゃないか。お兄ちゃんに任せろ!」
「……」
「なんだよ」
「不安しかないから、却下で」
「おい!」
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