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第1章

13 服をかえても?

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「凄い質素!変な装飾品とかないから落ち着く。良かった、普通で」

家の中はシェオンの事だから無駄に豪華な家具とか置いてきらびらかな作りにしているのでは、と警戒していたがそんな事はなかった。
質素で生活しやすそうな居住スペースになっている。
翠はほっと安堵の息を洩らして胸を撫で下ろす。

(まだ、シェオンと出会って一日もたってないのに。前から知っているみたい)

何だか可笑しくて笑ってしまう。
シェオンは耳をぴくり、と動かして私に素早く詰め寄ると威嚇する犬のように低く唸る。

「ちょっとミドッち!俺っちはまともな神様なんだからな。これ、着替えてこいよ。こっちの世界のふつーな服!その部屋ミドッちが使っていいから」

シェオンからずずいっと服が渡された。
示された部屋のなかに入ると早速今来ている服を脱いで着替えた。若草いろの布で作られたワンピースタイプの服と腰ひもがある膝丈の長さのパンツだ。
とても動きやすい。
全身がうつる鏡の前に立つ。
ふと、自分の顔に違和感を覚えた。

(……あれ?私、なんだか…)

いつもと同じ顔だ。平凡で何処にでもある顔。
大勢のなかにいると埋もれる地味な顔立ち。
でも、少し違う気がする。
思わず頬に指を這わせて首をかしげる。

「ミドッち着替えたー?」

シェオンの声が聞こえる。

「あともう少しです!」

自分の地味顔を見ても面白くないし返事をして部屋から出るとそこには神様らしい服装に着替えたシェオンが立っていた。
先程、隊長が神様のイメージと言っていた白いローブを身に纏い杖を持っている。
そして、つけ髭。神様というより私の世界で思い当たるのはただひとつ。
仙人。

「……どうどう?俺っち神様っぽい?」

「エセ仙人って感じです」

二重で切れ長の瞳の儚げな美しい顔立ち。中性的で艶やかな肌をしている。そこに白いつけ髭、すごく違和感がある。

「マジっすかぁ~。神様らしさって何?俺っちって生まれながらの神様、正真正銘の神のなのにぃ!」

どうやら先程の事を気にしているようだ。
シェオンは頭を抱えている。

「変な仮装はやめなよ、シェオン様。今度から神様って名乗るの禁止。面倒だから」

壁に背をつけてシェオンが仙人のコスプレをするのを傍観して止めなかったマドカが遠慮なく言った。

「禁止ってもさぁ、俺っち神様じゃん?神様嘘つかない」

シェオンは案外頑固だ。

「言わなきゃいいでしょ。それに何かあったら僕に面倒が掛かるんだよ。僕がかわいそうでしょ」

そしてマドカは性格がきつい。はっきりと嫌なことを嫌だと言えるのは羨ましいとさえ思う。

「ミドリ、その服似合ってるね。可愛いよ」



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