孤独なもふもふ姫、溺愛される。

遊虎りん

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第三章

☆3

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ちゅんちゅん、と小鳥が囀ずる声。
朝の柔らかな日差しがカーテンの隙間から溢れ、ティアの顔を照らした。
眩しさにティアは目覚める。

今回の夢は随分と長いな、と思いつつティアはのんびりとふかふかなベットに相変わらず寝そべり尖った小さな牙を剥き出して欠伸をした。丸い猫の瞳に生理的な涙が滲む。

洋館の主、カルラもとい、エメラルドのご好意により、ティアは3食昼寝付きの優雅な生活を送らせてもらっている。
夢の中のこの場所では、ティアは化け物ではなく可愛い仔猫ちゃんらしい。
ティアは自分の年齢は正確には分からない。城の方に耳を傾けるのは、城やこの国の人々が第一王女は死んでいること、弟が生まれたことを知ったときに止めた。

『可愛い尻尾と耳ね、それに愛らしい顔。今度は『失敗』しなかったわ』

とても満足そうな女性の声。よくやった!と喜ぶ男性の声。王子誕生を祝福する様々な声。

ティアは、ずるい、と思ってしまった。
どろどろした初めての痛みと苦しみが伴う何かで呼吸が苦しくなった。

ティアも、よろこんで、ほしかった

しっぱいだなんて、おもわれたくなかった

弟の誕生を素直に喜べない自分が嫌いになった。
誰からも愛されないのに、自分も自分を嫌いになるんて寂しい。
だから、城の事を考えるのは止めた。

少なくても10年以上はティアは生きている。仔猫ちゃん、と呼ばれるような年ではない。と、思う。
そう訴えると、エメラルドはレディを子供の猫ちゃんって呼ぶのは失礼ね。キティちゃんって呼ぶわ、と返されてティアは困った。
仔猫ちゃんもキティちゃんも同じようだと感じた。

「はぁい、キティちゃん!ご機嫌いかがかしら?」

エメラルドは朝食を持ってきてくれた。お盆にはゆで卵、パン、ミルク、リンゴのコンポート、ヨーグルトが可愛らしい皿に盛り付けられている。それをサイドテーブルに置いた。

「げんきー!エメラルド、げんき?」

「元気もりもりよ!ありがとう」

二人でうふふ、と笑い合う。

「ねえ、キティちゃん。部屋にこもってばかりでは退屈でしょう?お外に行かない?私、とっても美味しいミルクアイスを出すお店、見つけちゃったの。一緒に行きましょう」

女の子が友人にお茶を誘う、エメラルドの声は楽しげに弾んでいる。

エメラルドは、何事にも柔軟に対応できて受け入れる懐が深い男性、いや女性なのだ。

ティアを可愛い大切な女の子のお友達、とエメラルドは認識している。

化け物、とは一瞬でも思わない。


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