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第八章
☆1
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ざーざーざー、雨混じりの冷たい風が吹いている。
月明かりもなくて真っ暗闇のなかに名もなき獣は踞っていた。
ここは塔がある森。
レミィとエメラルドと一緒に過ごして、一人ぼっちの寂しさにもう耐えきれる自信がない。
しんと静まり返った何かの気配を感じられない塔には戻る気にはなれない。
少なくとも外には虫や他の動物の気配を感じられて少しだけ、寂しさが紛れる。
街の明かりが見える。
名もなき獣は瞳を細めた。
「お嬢様、お嬢様何処ですか!…ったくあのお転婆ルミテルは何処に行ったんだ」
少し遠くの所で人間の男の声が聞こえた。
誰かを探してこの森に入ってきたらしい。
(…うごかない。じっと、している。だいじょうぶ)
身を小さくして息を潜めて気配を消す。誰にもこの姿を見せたら駄目だ。
その時、名もなき獣は尻尾を車椅子のタイヤに引かれてしまった。痛い。
思わずにゃ!っと鳴いてしまった。
「あら…ごめんなさい!わざとではないのよ」
兎の耳が生えた緩いウェーブの金髪で色白の肌をした少女が鳴き声に気付いて車椅子をとめる。
男が探しているお嬢様はこの少女に違いない。
少女は名もなき獣を見て謝った。
この姿を見て驚いた表情を見せずにいる。
ルミテル、という名前は知っている。一方的にだが友達という空想をしていたのだ。
聞き覚えがある淑やかな声。
間違いなくあのルミテルだ。
「こ、わ、くない?」
思わずルミテルにきいてしまった。
「怖くないですわ。あなたの瞳は赤ちゃんみたいですもの。半分だけではなく全部が獣である方に初めてお会いしましたが、わたくしたちのご先祖様は猫の獣人でしたのよ。おかしいとは思いませんわ」
「みんな、と、ちがう」
「同じだと安心する。けれど、同じようは姿をしていても、言葉が通じない宇宙人のような方がおりますわ。わたくしはその方は違う星の住人だと思い接しておりますの」
頭ひとつ、目が二つ。鼻一つ。人の顔。獣耳が否か。
たったそれだけの違いだ。
見かけよりも言葉の受け取り方や反応、考え方が自分と大きくかけ離れている人の方が怖いとルミテルははっきりと答えた。
「お嬢様!やっと見つけた」
ルミテルの声に気付いてこちらに来た男はお嬢様を見付けて安堵する。
そして、名もなき獣の姿に気付いた。目を見開くが悲鳴をあげたりはしなかった。
「猫語が分かる方を本当に見つけたんですね」
「にゃ?」
「ああ!そうですわ、あなた猫語話せますの?」
ルミテルはぽんっと両手を合わせた。
名もなき獣はこくん、と頷いた。
月明かりもなくて真っ暗闇のなかに名もなき獣は踞っていた。
ここは塔がある森。
レミィとエメラルドと一緒に過ごして、一人ぼっちの寂しさにもう耐えきれる自信がない。
しんと静まり返った何かの気配を感じられない塔には戻る気にはなれない。
少なくとも外には虫や他の動物の気配を感じられて少しだけ、寂しさが紛れる。
街の明かりが見える。
名もなき獣は瞳を細めた。
「お嬢様、お嬢様何処ですか!…ったくあのお転婆ルミテルは何処に行ったんだ」
少し遠くの所で人間の男の声が聞こえた。
誰かを探してこの森に入ってきたらしい。
(…うごかない。じっと、している。だいじょうぶ)
身を小さくして息を潜めて気配を消す。誰にもこの姿を見せたら駄目だ。
その時、名もなき獣は尻尾を車椅子のタイヤに引かれてしまった。痛い。
思わずにゃ!っと鳴いてしまった。
「あら…ごめんなさい!わざとではないのよ」
兎の耳が生えた緩いウェーブの金髪で色白の肌をした少女が鳴き声に気付いて車椅子をとめる。
男が探しているお嬢様はこの少女に違いない。
少女は名もなき獣を見て謝った。
この姿を見て驚いた表情を見せずにいる。
ルミテル、という名前は知っている。一方的にだが友達という空想をしていたのだ。
聞き覚えがある淑やかな声。
間違いなくあのルミテルだ。
「こ、わ、くない?」
思わずルミテルにきいてしまった。
「怖くないですわ。あなたの瞳は赤ちゃんみたいですもの。半分だけではなく全部が獣である方に初めてお会いしましたが、わたくしたちのご先祖様は猫の獣人でしたのよ。おかしいとは思いませんわ」
「みんな、と、ちがう」
「同じだと安心する。けれど、同じようは姿をしていても、言葉が通じない宇宙人のような方がおりますわ。わたくしはその方は違う星の住人だと思い接しておりますの」
頭ひとつ、目が二つ。鼻一つ。人の顔。獣耳が否か。
たったそれだけの違いだ。
見かけよりも言葉の受け取り方や反応、考え方が自分と大きくかけ離れている人の方が怖いとルミテルははっきりと答えた。
「お嬢様!やっと見つけた」
ルミテルの声に気付いてこちらに来た男はお嬢様を見付けて安堵する。
そして、名もなき獣の姿に気付いた。目を見開くが悲鳴をあげたりはしなかった。
「猫語が分かる方を本当に見つけたんですね」
「にゃ?」
「ああ!そうですわ、あなた猫語話せますの?」
ルミテルはぽんっと両手を合わせた。
名もなき獣はこくん、と頷いた。
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