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第5話。
しおりを挟むとぼとぼ、と僕はクリーム色の味気ない小学校舎を出た。
夕日でグランドが照らされている。ポツポツと人影がありサッカーボールを蹴っていた。
部活に属していない僕は用もないので背をむけて立ち去る。
疲れたな、義務教育であるから小学校に通わないといけない。
不登校を許してくれる親でもないし、学校に行きなさいと怒られるのも嫌だし、なんでうちの子は学校に行かないんだろうと親を悩ませたくないし、家にずっといるのも苦しいだろうし、しかたない。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「今日はハンバーグよ」
「わたし、ハンバーグ、大好き!」
ママの前では僕はわたしと言っている。
家に帰るとママがエプロン姿で出迎えてくれる。
僕の帰りを待ってくれている。
普通でいるなら、ママも普通に接してくれるんだ。
だから、普通でいよう。普通になろう。
僕は怖がりだから想像してそれが実際あったことのように感じてしまう。
「子供は遊んでいるだけでいいな」
社会に出た長女が疲れた顔でぼつり、と僕の顔を見て呟いた。
似合わないスーツ姿。
シワだらけになったシャツを脱いでTシャツと短パン姿になった。
大人になると子供だった頃を忘れてしまう。
喉元過ぎれば熱さを忘れる、というやつ。
子供の悩んでいるのとを小さなことだと鼻先で笑い飛ばす。
挨拶がうまくできないって涙を枕で濡らして夜も眠れないのに、それを笑い、馬鹿にする。
普通の姉妹ならここで喧嘩になるかもしれない。でも、僕はどうでもいいと思ってしまう。
誰にも心を開けない。
感情が悲しくて、むなしくて、動かない。
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