異世界に転生して、気分はロリBBA

第一章

2

「まあ、確かに物心つくまえは、ちょっと普通ではなかったな。お前が初めて俺に発した言葉はよろしくね、かわいい、おにいちゃん、だったし」

ジルはふと、思い出した。

ベットで母親と生まれたばかりの妹が眠っていた。
何もかもが小さい妹。すやすやと親指をしゃぶりながら寝ているリズを飽きもせず、ジルはずっと寝顔を眺めていた。
いつの間にか寄り添う形で眠っていた。
目を覚ますと、妹と目があった。
不思議な瞳の色。なにも知らないはずなのに、何もかもを知っているなような目差しを幼いジルに向けていた。

よろしくね、かわいい、おにいちゃん

両親や親戚や周囲の大人に、ジルはお兄ちゃんになったんだぞ！と頭を剥げるんじゃないか、と心配になるほど撫で回された。

お兄ちゃん、かあ。と中々、実感がわかなかった。

だが、喋れないはずのリズに、おにいちゃん、と言われてぼくはおにいちゃんになったんだな。とハッキリとその時自覚した。
怖いとか思わなくて、ジルはリズの言葉を受け入れた。

よろしく、リズ。ぼくの、かわいい、いもうと

そう微笑むときゅっと小さなもみじのような妹の手を軽く握った。
なにがあってもぼくが、いもうとを、まもる、と幼い心に使命感のようなモノが沸き起こった。

「お前さ、店のレジが壊れて、母さんが勘定を電卓でしてたら、横からお会計は180ナルになります、と暗算したんだ。今はお前、数字に弱いけどな」

年端もいかない、我が子が勘定の計算をした。電卓とリズがいった数字はぴったりと一致していた。母親は驚いた。父親にその事を告げると父親も驚いた。

すごいな、リズ！電卓いらずだな！

はっはっは！と父親が豪快に笑っていた。
前世の記憶を持ち、幼い頃、それを口に出す、という話を聞いたことがある、と心配する母親に父親は告げて笑い大丈夫！と言い切った。幼いリズは物知りで面白くて色々と話を聞いていたものだ。

「あー、すっかり、忘れてたわ」

物心がつく頃には自然とリズは普通の子供と変わらなくなった。
それが当たり前で、家族は受け入れた。
ジルは色々と思い出すと感慨深そうにしみじみと呟いた。

「まあ、リズが102才のばあちゃんだったとしても、俺の妹には変わりないんだし。大丈夫だろ」

リズの頭をくしゃくしゃと撫でてジルは笑った。その明るい笑顔は父親譲りで前世の記憶が鮮明に蘇り不安なリズの気持ちを軽くさせた。

「ありがとう、お兄ちゃん！」

リズは照れ臭そうに微笑んだ。