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第二章
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大金持ちの家に飼われている猫になりたい。
空腹を感じずあたたかな布団で大好きなご主人と一緒にぬくぬくと眠りたい。
幼い道生は栄養不足の青白い身体を横たわらせ、ぼんやりと寝ぼけたことばかりを考えていた。
こんこんこん、と咳き込む。
苦しさに涙が瞳に滲みぼやける視界。瞬きをすると涙がこぼれた。
「なぜ、お前は泣いている」
人影と聞いたことがない、低い穏やかな女の声。
「幸せになりたくて泣いているんだ」
涙を流した後は心がしっとりと湿っている。いつもなら愛想笑いをして誰にも心配などさせない。
道生は微笑んでいると可愛いとみんなが褒めてくれるのが生き甲斐。愛されるのが好きで甘やかされたい。男らしくない、と父親からよく叱られていた。
「幸せになったらお前の涙は止まるのか」
逞しい体躯をしている。男だけど華奢で頼りない道生が羨ましくなるくらい。明るい太陽のような女が道生の濡れた目元を脱ぐって静かな声で問い掛けた。
「うん、幸せになったら涙が止まって笑顔になる」
こくん、と道生は頷いた。
空腹を感じずあたたかな布団で大好きなご主人と一緒にぬくぬくと眠りたい。
幼い道生は栄養不足の青白い身体を横たわらせ、ぼんやりと寝ぼけたことばかりを考えていた。
こんこんこん、と咳き込む。
苦しさに涙が瞳に滲みぼやける視界。瞬きをすると涙がこぼれた。
「なぜ、お前は泣いている」
人影と聞いたことがない、低い穏やかな女の声。
「幸せになりたくて泣いているんだ」
涙を流した後は心がしっとりと湿っている。いつもなら愛想笑いをして誰にも心配などさせない。
道生は微笑んでいると可愛いとみんなが褒めてくれるのが生き甲斐。愛されるのが好きで甘やかされたい。男らしくない、と父親からよく叱られていた。
「幸せになったらお前の涙は止まるのか」
逞しい体躯をしている。男だけど華奢で頼りない道生が羨ましくなるくらい。明るい太陽のような女が道生の濡れた目元を脱ぐって静かな声で問い掛けた。
「うん、幸せになったら涙が止まって笑顔になる」
こくん、と道生は頷いた。
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