ふしだらな薬。

遊虎りん

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美幸side

5.

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寂しい。

誰にも愛されていない、必要とされていないのが悲しい。
俺は生まれたときから途方にくれている。手を繋ぎたくて上を見るがそこには誰もいない。

死にたいと思ってしまうのは愛されたい。必要とされたいから。

身を丸めて猫の抱き枕を足の間に挟めて寝る体制になるが、一向に眠気が訪れそうな気配が来ない。

知らないうちに涙が目元に溜まってた。泣いても心が晴れることはない。惨めになるだけだ。俺は手の甲で拭うとため息を吐いた。

(……不幸じゃないけど、幸せだと思えない。俺は欲張りなんだ)

人肌が恋しい。温もりが欲しい。俺は部屋を出ると玄関へと向かった。外に出てこの寂しさを一秒でも忘れられるなら何でもする。俺は愚かなほど単純な生き物だ。そこらのミミズより単細胞。

夜遊びするのは、うっかり死ねるチャンスを狙っているからってのもある。

親不孝だと怒る人がいるだろうか。俺の親は子不幸者だから、蛙の子は蛙ってことだ。

「美幸さん、どこに行くんですか?」

充城が俺の手首を掴んで小さい子供を咎める大人のような声で行き先を尋ねる。泣いたことがバレる。それは嫌だ。だから俺は夢の国に住んでいるネズミのような高い声で答えた。

「……無性にプリン食いたくなったからコンビニに行って買ってくるダケダヨー」

「ミユッキーさん、こっち向きなさい」

「やだ、俺の事なんてほっといてくれ」

首を嫌々と横に振る。充城は駄々っ子の扱いが慣れた肝っ玉母さんのように俺をひょいと抱き上げて尻をぽんぽんと叩いてあやしながら部屋に向かって歩き出した。

「……ミツキー俺を離せ」

「イヤデスヨー」

夢の国のネズミの声真似は充城の方がクオリティーが高い。さすがミッキーマウスの大ファンな両親から生まれてきた子供だけある。
充城はベットに座ると俺を膝の上に乗せて向かい合わせにして座らせる。185㎝あり、男らしく丈夫で安心する。

「……私をプリンだと思って我慢しなさい」

「どう思ったらお前をプリンだと思えるんだよ」

むう、と口を尖らせたら充城が俺の唇を指で挟んで固定するとちゅ、と軽く口付けた。無表情なロボットが甘い誘惑をする悪魔のような微笑みを浮かべる。ずくり、と俺の身体が甘く疼く。充城とエッチがしたい。

キスがもっと欲しい。俺は疼く唇を開いて舌を覗かせた。充城と唇が重なり舌が挿し込められる。絡まり吸われる。それだけで俺は濡れた。


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